魔法ランキング戦三日目6
「くぅっ、いたた。やるね、フリージア。あれを纏ってここまでやられたのはこれで二回目だよ」
私がミオンロート先生のお腹をぶん殴ってから五分後。ミオンロート先生は私の膝の上で目を覚ました。起き抜けにミオンロート先生はそんなことを言う。二回目?それじゃミオンロート先生は私以外の誰かにやられたことがあるってこと?
私が切り札を切らなきゃ倒せなかったのに?
「その人は相当強いのでしょうね」
ふと、後ろからそんな声が聞こえた。静かに後ろを振り向くと、ラザフォード・ジルコニア学院長が立っていた。長い艶やかな濡れ羽色の黒髪に、スラリと長い体躯。垂れ目の目には優しさがこもっている。
「よく言うよ。その一人だっていうのにね」
なっ!?学院長が!?見た感じ華奢なイメージしかないあの学院長が!?
「不思議かしら?フリージアさん?」
「知っているんですか?私のこと」
私は一介の女子生徒でしかない。それを学院長が知っているなんて驚きだ。
「知っているわよ。エルバニア・フォールランド以外のSSランクを叩き出して起きながら、Aランクに編入した前代未聞の生徒。知らなきゃおかしいわよ」
なんでだろう。貶されてる様な気がするのは。
「そんなに不満そうな顔をしないの。そうね。こうしましょう。フリージアさん、私と勝負して頂戴」
「はい?」
「ミオンロートの〈闇衣〉破ったのでしょう?その力を私は知りたいのよ」
どういう意図があってのこと?ちらりとハティを盗み見る。ハティは何時ものことながら目をキラキラとさせていた。ああ、もうこれはダメだ。絶対にやる流れだ。
「わかりました。やりましょう」
「ありがとう」
それだけ会話をかわし、私とラザフォード学院長は距離を取る。そして、どちらからともなく加速系統魔法陣を使ってぶつかり合った。当然、硬化系統魔法陣は使っている。
「はっ!」
「ふふふ」
裂帛の気合と共に鋭い角度から蹴りを繰り出す。風切り音を出しながらラザフォード学院長に蹴りが迫るが、簡単に躱された。
だけれど、それは想像通り。
「〈イグニス・ハート〉」
「へぇっ」
その場で蹴りの勢いを利用してバク宙する。そして、ゼロ距離から無詠唱の〈イグニス・ハート〉を叩き込んだ。ラザフォード学院長は驚きに目を見張る。
「〈一太刀影〉」
〈イグニス・ハート〉がラザフォード学院長に激突し、爆炎と爆風を撒き散らす。爆風に乗って私はラザフォード学院長から離れた。ズパンッともうもうと視界を覆っていた煙が黒い影に断ち切られる。切られた煙は溶けて消えるように掻き消えた。
煙を断ち切った影はラザフォード学院長の影に吸い込まれて行く。恐らくアレで〈イグニス・ハート〉を切ったのだろう。
「やるわね。まさかここまでやるとは思っていなかったわ」
「私もです」
さて、そうは言ったもののどうしますかね。恐らく魔法は多分アレで断ち切られるし、格闘戦に持ち込んでもアレでアウト。正直八方塞がり。だけれど、諦めるわけにはいかない。
あの〈一太刀影〉は多分闇系統魔法。ならば、防ぐためには同じ闇系統魔法。私にはそんな魔法ないけれど、ミオンロート先生ならある。そう、あの〈闇衣〉が。
「行きます!」
からだから闇系統魔法を展開する。一度〈闇衣〉は見てる。だから、できる。闇を鎧のように固く、衣のように軽く羽織る。そうイメージした途端、ミオンロート先生とほぼ同一の靄が私の体を覆った。
「〈雷電〉」
「併用だとっ!?」
〈闇衣〉と〈雷電〉を併用した私を見て、ミオンロート先生は驚愕に目を見開く。それだけじゃない。さらに加速系統魔法陣を使ったままラザフォード学院長に肉迫した。
「はぁっ!」
轟ッ!と唸りを上げて拳がラザフォード学院長に迫る。
「〈二太刀影〉」
ラザフォード学院長は私の拳に対抗しようと〈一太刀影〉を二つはなった。しかし、私の拳を止めるどころか減速すらさせられずに砕け散った。
いける!
「〈ハル・アルギア〉」
ラザフォード学院長の頬に拳が当たる瞬間、ガチィン!となにかに阻まれた。頬に触ることなく拳が止まり、なにかと火花を上げる。
「あぁっ!」
だけれど、私の拳は止まることがない。そのままなにかを突き破ってラザフォード学院長の頬に当たる。かと思いきや、空を切った。
「!?」
「ふふふふ」
素早く体勢を立て直して前を見ると、数m離れたところにラザフォード学院長が立っていた。




