魔法ランキング戦一日目
この王立魔術学院には魔法ランキング戦というシステムがあり、魔法ランキング戦は一週間に渡って行われる。一方がもう一方に対戦を申し込み、魔術結界が張られたフィールドで対戦する。申し込まれた方は対戦を受けても受けなくてもいい。勝った方が勝ち点1となる。一日に五回戦えることが出来、一週間で三十五回戦うことが出来る。一週間後に勝ち点が多い順にランキングとして張り出される、というものだ。
魔法研究の授業から二ヶ月が立った。戦争とも言われる魔法ランキング戦の日が訪れた。魔法ランキング戦は今日の午後一時から開始となる。中庭で昼を済ませた私とハティはSランクのクラスへ向かっていた。
「待ってください」
Sクラスがある三階へ続く階段の一段を踏んだ時、リリオンに呼び止められた。
「どこに行くつもりですか?」
訝しげに首を傾げながらリリオンは私に問う。どこ?それは決まってるじゃない。
「Sクラスよ」
「なにしに、ですか?」
「殴り込み」
「本気で言っているのですか!?フリージアさん達はAクラスなんですよ!?敵うわけがないですよ!」
敵うわけがないと言い切るリリオンに、ハティが呆れた視線を向ける。
「別にいいでしょ、私達がどこに行こうたって。べつに点数稼ぎをしたいってわけじゃない。私達より弱い生徒を虐めたってつまらないだけ」
「心配ご無用」
リリオンに一言いい、私とハティは階段を登り始める。リリオンが私達の背中に何か呼び掛けたけど、私達は振り向くことはなかった。
さぁ、退屈しのぎの始まりね。
階段を登り終えた私達はAランクの教室を通り抜け、Sランクの教室へ向かう。Sランクといっても、ほとんどはハティと同じくらいのランクだ。これから実力が互角の相手と戦う当のハティは、私の手を握って鼻歌を歌っている。余裕ね。ま、私もだけれど。
「たのもー」
可愛らしい掛け声と共にハティがSランクの教室の扉を開ける。教室の中の視線が一気にこちらへ集まった。
「私達と戦う勇気のある人、おいで」
余裕たっぷりの笑みを浮かべ、挑発する。この年頃の男の子ならば…………
「なんだと!?おちょくってるのか!」
ほら、引っかかった。
「まちな。僕も参加するよ」
あれは…………いつぞやのブリジットじゃない。ふふっ、借りを返さないとね。
「待って。ブリジットは私がやる」
「いいの?ハティ。大丈夫?」
「大丈夫。私にはフリージアが教えてくれた科学がある」
科学というほど立派なものじゃないけどね。せいぜい火は風に煽られて大きくなる、という程度。
こうなったハティは梃子でも動かないし、まあ、任せましょう。
「じゃ、私はあの単細胞をやるね」
「た、たんさいぼう?なにいってるんだよお前は!」
ほら、単細胞。
「ぐちぐち言ってないで、早くフィールドへ移動しましょ?」
踵を返し、ハティと一緒に教室を出て行く。他の二人も慌ててついてきた。
ふふっ、ついてきたが最後。目に物を見せてあげる。
フィールドについた時にはギャラリー席は一般になっていた。そこには学園長の姿も見える。そこまで立派なもの?
「馬鹿だね。フリージアさんとハーティアさん、だっけ?」
「気安く名前を呼ばないでくれる?」
鳥肌がたった。よりにもよってファーストネームを呼ばれた。気持ち悪っ。
拒絶するもブリジットはやめるつもりはないらしい。
「降参するなら今のうちだよ」
前髪をかきあげながらそうブリジットは言う。この子、馬鹿?
「降参する気があるなら最初から殴り込みに来たりしないけど。少しは頭使ったら?」
嘲笑を浮かべた瞬間、ブリジットの顔が真っ赤に染まった。単純ね。
「黙っていればぐちぐちと!その口、閉じさせてやる!風精よ集いし剣となり、我が敵を切り裂かん。〈風斬刃〉!」
「〈風斬刃〉」
「なっ!?」
私に向かって放たれた〈風斬刃〉を同じ〈風斬刃〉で打ち消す。このくらいの芸当、できなきゃどうするの?
「何を驚いているの?貴方の相手はハティ。間違えないように」
「ーーーー〈フレイムバーン〉」
詠唱を終えたハティが〈フレイムバーン〉を放ち、ブリジット達を炎が包み込む。
さあ、ここからが本番。




