『家族』
言うべきことは言った。話すべきことは話した。あとはリリムさん達の対応を待つのみ。流石にどういう反応をされるのかが、怖い。まあ、対応や反応といっても、取ることは忌子として扱うだけだろうけど。
そんなことを思っていたから、私はこの後に起こることに耐えきれなかった。
「えっ?」
リリムさんは、頭を下げた状態の私の両頬に手を添え、ゆっくりと頭を上げさせると、そのまま抱きしめた。
「リリムさんなんて他人行儀な呼び方はやめて。貴女は間違いなく、私達の家族。私の子供よ。たとえシノハラリョウコだろうと、その事には変わりは無いわ。誰がなんと言おうと。だから、いつものように母様と呼んで?私は貴女の母親なんだから」
「私を、騙していた私を、『家族』と呼んで、いただけるのですか?」
私を抱きしめたリリムさんは、静かに、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
私の口から呆然とした言葉が零れた。一年も騙しておいて、こんな対応を、こんな反応を、抱きしめられるとは思ってなかった。思えなかった。
「当たり前だろう。お前は僕の子供だ。それは揺るぎない事実。お前の前世が異世界の人間の記憶だろうと、その記憶を受け継いでいても、お前はフリージアだ。みんなを笑顔に、温めてくれる、人の心の傷をわかってやれる優しい子だ」
「そうですね。本当にそうです。お嬢様がなんと言おうと、私達の『家族』です。お嬢様を見限った最っ底の家族ではなくて、本来あるべき『家族』なのですから」
ヴァルディエさんとファルミルさんはリリムさんに続き、優しい暖かい言葉を紡ぐ。
知らず知らずの内に、私の目から一粒の雫が零れ落ちた。なに、これ。こんなの、反則だって。
「ありがとう、ございますっ」
私は『父様』と『ファルミルさん』に見守られながら、『母様』の腕の中で静かに泣き続けた。
こうして私は、本当の意味で、『家族』という言葉の意味を知った。
それは、とても優しく、暖かいものだった。




