不本意な言われ様
「おなじいっさいのおんなのこ、ですか?」
「そうよ」
死ぬかと思った習い事の翌日。昼ご飯を食べ終え、満腹の余韻に浸っている私に、母様がそう声をかけた。どうやら、母様の知り合いに、同じ一歳の女の子がいるらしい。そして、同じ一歳の女の子にも関わらず、大人よりおとなしい母様の娘がいると聞いて、母様の知り合いの人が私に会いたいと、そういうことらしい。私としては立派に一歳の女の子を演じているつもりだったんだけど、ダメだったらしい。いやまあ、わかってたけどね?十六の女子高生が一歳の女の子を演じようってこと自体がおかしいってことは。
「あいたい、です」
自分と同じ性別の、しかも同じ年齢の子供が近くにいるなら、会って見たいと思うのは当然のこと。
「そう?それじゃ、行きましょうか」
「え?いまからですか?」
「そうよ?思い立ったが吉日って言うじゃない」
なにを思ったか、私の脇に両手を差し入れ持ち上げる。そして、そのまま母様の部屋へ連行された。なんで?
「あはっ♪お嬢様、可愛いですよ♪」
「うんうん、やっぱり、私の目に狂いはなかった!」
母様に連行されてから数十分後、私は見事に着飾られて居た。真っ白なワンピースに麦藁帽子。雫型に製錬されたサファイアのネックレス。まさに夏という格好だった。確かに今の季節は夏だけど、これは流石に……
「は、はずかしい、です」
麦藁帽子のつばを引っ張って目深めにかぶり直す。か、顔が熱い。
「はぅっ♪」
「はっ!フェルミルちゃん!?フェルミルちゃ〜〜ん!」
何故かフェルミルさんが鼻血を出して倒れてしまった。なんで?
「だ、大丈夫?フェルミルちゃん」
「は、はい。大丈夫です。ちょ、ちょっとお嬢様が可愛過ぎて……」
フェルミルさんが倒れてからまた数十分後。母様の献身的な介抱のおかげか、なんとかフェルミルさんは意識を取り戻した。
「可愛いは正義とは言いますが、お嬢様の可愛さは、もはや殺戮兵器並みですね」
なんと不本意な!
「無事にフェルミルちゃんが意識を取り戻したし、気を取り直して行きましょうか」
母様が私の手を引いて引っ張ろうとする。こんな格好で行くのは流石に嫌だから、せめてものなけなしの抵抗をするが、大人の力の前ではやはり無駄だったようで。最終的に一歳の女の子らしく抱きかかえられてうちを出てて行った。は、恥ずかしい。




