第二階級魔法
市販に売られている硫酸を、金属にかけたらどうなるか。それはもちろん徐々徐々に溶けていき、最後には溶けてなくなってしまう。
ならば、濃硫酸と言われる濃度90%以上の硫酸を、同じように金属にかけたらどうなるか。10%未満に薄めた硫酸でも金属が溶けてしまったということは、ほぼ100%の硫酸ではあっという間に溶けてしまうわけで。
なぜ私がこんな話をしているかというと、それしか例えようがない状況にいるから、としか言いようがない。
いつものごとくフェルミルさんに起こされた後、着替え、朝食、歯磨きを済ませ、母様に呼ばれて庭に出ていた。
呼ばれた理由は、魔法を極めるため。
ここで少しリリム・フェルマールについてお話すると。
リリム・フェルマールは、世界最強の魔術師であり、破天荒な性格をしている女性。
その性格故、いつも厄介ごとを引き起こし、そしてなぜか、その厄介ごとに必ず他人が巻き込まれる。そんな人間。
まあ、関係あるのは世界最強の魔術師という部分だけで、他は余計だけれど。
そんな世界最強の魔術師である母様が、魔法を極めろと言ったということは、それはもちろんそういうことで。
「魔法を極めるために必要なこと。それはとにかく強者が発する魔力になれること」
いつものほわほわした雰囲気は何処へやら。一瞬にして極寒の冷気さえ生温い冷たさを纏った母様は、自身の魔力の半分を開放した。
世界最強の魔術師が魔力を開放するとどうなるか。答えは当然近くの人間を蝕む毒と化す。冒頭で話したとおり、抑えた魔力は、少しずつ人の体を蝕む毒となり、今回のように半分も開放すると、人の命なんてものは容易く奪う劇薬となる。
人間の反射神経というのは凄いものだということを、改めて実感することとなった。母様が開放する瞬間と同時に、私の体から強制的に魔力が溢れ、劇薬や業火といえる母様の魔力と激突し、わずかな拮抗の後、共に霧散した。
「やっぱり、私なんか足元に及ばない魔力と素質が、フリージアにはある。まだ幼い体にもかかわらず、そして、反射的に漏れ出た魔力のみで私の魔力を相殺するなんて」
「かあさま。しぬかとおもいました」
本当にそう思った。涙目の私を抱き締め、心配そうに宥める母様の腕の中で涙を流した。
「〈火よ集えーーフレイム〉」
火系統魔法の第二階級魔法である《フレイム》を目標の木に放つ。拳程度の火の玉は、目標の気に当たり、木を炎上させた。母様の魔力を相殺したことにより、自由自在に魔力を引き出すことができるようになって、第二階級魔法を使えるようになった。だけど、まだ加減が難しく、今みたいに木を炎上させたりする。
まあ、本格的に魔法を習い始めたんだし、これからゆっくりとやって行けばいいよね。




