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僕の奥さん、のようなひと  作者: 花鶏
§ 震える背中 §
12/13

突然の手紙


 後見人になれたらすぐに不動産の売却申請をできるように、事前に退去勧告をしておいた方がいいということになった。

 三人で相談した結果、多少コストがかかってもプロに任せることにした。


 弁護士に退去勧告を依頼してから一週間が経った頃。

 理子さんが仕事に行っているあいだ、僕は紬の勉強を見ていた。

 インターホンが鳴ったのは昼過ぎだった。


 モニターに映っているのは知らない顔。

 紬と目を合わせる。

 紬は小さく首を振った。

 僕も頷いて、ふたりで黙って画面を見ていた。

 しばらくして男は去った。


 時間を置いてから郵便受けを見にいく。

 入っていた封筒の差出人に、僕は息を呑む。


『鈴木浩平』


 M県の県議――実家を占拠している女の旦那の名前だ。


(なんでここが分かったんだ)


 こういうことがないために弁護士を挟むのだと、理子さんは言っていたのに。


 中には便箋が一枚。


 一度話し合いの場を設けたい、と書いてあった。


 文面は丁寧だったが、この家にこの男の手が届いたという事実が、じわじわと気持ち悪かった。


 ずっと着信拒否にしていた番号に電話をかける。

 三コールで相手は電話に出た。


「久しぶりだね、奏汰君。

 突然弁護士から退去の勧告をさせるなんて、随分と他人行儀じゃないか」


 何度か話したことのある、穏やかだと思っていた口調が、今は殊更薄ら寒い。


「手紙を見ました。話は弁護士を通してください」

「知らなかったよ、結婚したんだね。おめでとう。

 式には呼んでもらえないのかな」


 だから、なんでこいつがそんなことを知っているんだ。


「お話することはないです。

 退去していただいたら、もうあの家は売ります」

「落ち着きなさい。奏汰君、君は何か誤解している。

 一度ゆっくり顔を合わせて話そう。

 今度、そちらへお邪魔したい」


 背中にぞっと寒気が走る。

 何を言うか、何をされるか分からない。

 こんなやつを理子さんの家に上げるわけにはいかない。


「とにかく、もう、変な人を理子さんの家に来させるのはやめてください」


 電話を切る。


 心臓がばくばくいっている。


 理子さんにオートロックのマンションを勧めてくれた小野寺さんに、心から感謝した。


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― 新着の感想 ―
県議のくせに、身内に対して露骨に不利な金銭トラブルを起こすというのは脇が甘すぎではないかな・・・? 餓鬼道のいきものみたいな妻と禽獣みたいなペド息子を叩き直す方が先じゃないかなぁ・・・
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