第2章2話
本作はカクヨムと同時掲載となっております。
また、本作は現在制作途中の作品となっております。
そのため、今後の展開に応じてストーリーや設定、名称などに調整や変更が入る可能性があります。
できる限り違和感のない形で更新していく予定ですが、あらかじめご了承いただけますと幸いです。
王都の通りは、歩いているだけで情報が洪水みたいに押し寄せてくる。
通りの左右にひしめく店。
武器屋、防具屋、薬屋。
見たこともない香辛料を山のように積んだ市。
鼻をくすぐる匂いも、ひとつじゃない。
甘い匂い、香ばしい匂い、そして――
路地裏の方から漂ってくる、肉が焼かれてる野性的な匂い。
「……っ、これだろ」
体が自然と吸い寄せられていた。
暖簾みたいな布をくぐって中に入ると、熱気が一気に押し寄せてくる。
煙。
油の弾ける音。
肉が焼ける、じゅうじゅうという音。
店の中は思ったより広く、テーブルがいくつも並んでいる。
どの席にも人がいて、笑い声と食器のぶつかる音が絶えない。
(見覚えのない謎の肉ばかりなこと以外は……完全に焼肉屋だな……)
森の中で散々動物の丸焼きは食ったが――
焼肉なんていつ食ってもどうせ美味いに決まってる。
「空いてる席どうぞ〜!」
陽気な店員の声を背に、適当に端っこに座る。
周りで焼かれる肉の香ばしい匂いが、容赦なく食欲を刺激してくる。
「とりあえず……おすすめ適当にください」
暇そうな店員を捕まえ、雑な注文をするが、店員は慣れた様子で頷いた。
しばらくして、次々と皿が運ばれてくる。
「こちらが、グラディオス牛の肩ロースで、これがレイザークロウのもも肉で……えー……こちらが……の肉で……それと……の……部位で……あと……こちらが……えー……はい……――こちらが、……の睾丸です〜」
深い紅色に光る肉。
とろりと脂が滲む厚切りの肉。
淡く青みがかった、見たことのない色の肉。
(……睾丸? だれのキンタマだよ……)
ま、まあいい。肉なんて大概焼いてタレに付けときゃ全部うまい。
箸……じゃないな、この世界だとフォークみたいなやつか。
それで肉をつまみ、鉄板に乗せる。
じゅっ、と音が鳴る。
少し待って、ひっくり返す。
――いい茶色だ。
タレにつけ、そのまま口に放り込む。
「……っ、うんま〜!」
思わず声が漏れた。
噛んだ瞬間、肉汁が広がる。
香辛料の効いた少し辛口な味の濃いタレが、さらに食欲を加速させる。
(やっべぇ……無限に食えそうだ)
一枚、また一枚と手が止まらない。
気づけば、皿の肉はどんどん減っていく。
「いい食いっぷりだな」
不意に、横から声がした。
顔を上げると、いつの間にか隣の席に一人の若い男が座っていた。
無造作な明るい金髪に、軽薄そうな笑みを浮かべているが、その目の奥だけは妙に鋭い。
ラフに着崩した服の隙間からは、無駄なく締まった体つきが見える。仙師だろうか。
同じように肉を焼きながら、こちらを見ている。
「旅人か?」
「まあ、そんなとこだ」
短く答えると、男は軽く笑った。
「王都に来たばっかりって顔だ。……やっと飯にありつけたってな」
「中々感の良い奴だな、分かるもんか?」
「分かるさ。最初はみんなそんな感じだ」
男は肉をひっくり返しながら言う。
「この店、王都でも一部のマニアに人気だからな。初見でここ来るのは、なかなかいいセンスしてるぜ」
「匂いに釣られてな」
「ハハッ! それが一番だな」
そう言って、男は焼けた肉を口に放り込む。
「俺はリュカ、お前は?」
「ゲンジだ」
短く名乗る。
リュカは少し目を細めた。
「へぇ……変わった名前だな」
「ん? ああ、よく言われる」
そんな軽い会話を交わしながらも、手は止まらない。
肉を焼いて、食って、また焼く。
気づけば、腹はしっかり満たされていた。
「……うっぷ、流石にもう食えねぇな」
「その食いっぷり、お前仙師か?」
「ん? いやまだ仙師候補生ってとこかな」
「そいつはいいや。そいじゃ、王都を楽しめよ」
何か意味深な事を言いながら、リュカは席を後にする。
パンパンの腹をさすりながら、軽く息を吐く。
「……異世界、悪くないじゃん……」
思わず、そんな言葉が漏れた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
本作はカクヨムと同時掲載となっております。
また、本作は制作途中のため、今後の展開や構成の都合により、ストーリーや設定、名称などに調整・変更が入る場合があります。
より良い作品になるよう試行錯誤しながら執筆しておりますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。




