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死にかけて異世界に飛ばされたのにチート貰ってないのですが~アブソリュートスレイヤー~  作者: もさん


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第2章6話

本作はカクヨムと同時掲載となっております。

また、本作は現在制作途中の作品となっております。

そのため、今後の展開に応じてストーリーや設定、名称などに調整や変更が入る可能性があります。

できる限り違和感のない形で更新していく予定ですが、あらかじめご了承いただけますと幸いです。

翌朝。


「……っづ……」


 頭を殴られたような痛みで、目が覚めた。

 ズキズキと脈打つような頭痛。口の中は乾き、気分も最悪だ。


「飲みすぎた……」


 ぼそりと呟きながら、重たい体をなんとか起こす。

 記憶は曖昧だが――間違いなく、飲みすぎた。


 ふらつく足取りのまま、リュカの部屋へ向かう。

 ドアを軽く叩く。


「おい、リュカ……起きてるか……」


 返事はない。


 もう一度叩く。


 ――反応なし。


(……こりゃ起きんだろうな)


「仕方ない……一人で行くか」


 授業をサボろうか考えたが、この世界の知識が全く無いのにそれは流石にまずいと思い、そのまま学院へ向かった。


 教室に入室しフラフラと適当に空いている席へと腰を下ろす。

 頭がグルグルとぼんやりして、思考が定まらない。


(うぅ……気持ちワリ……)


 そんなことを考えていると――


「なんだ?テメェも裏切りモンの仲間か?」


 唐突に声をかけられた。


「はい?」


 若干のタイムラグの後振り向く。

 そこにいたのは、昨日例の少女に絡んでいた男たちだった。


「へ?裏切り者?俺?」


 自分に指差しながら間抜けな返事で答える。

 誰かと勘違いしてるのだろうか。

 タダでさえ関わりたくないような連中だが本日は特に話しかけないで頂きたい


「その目は節穴か?そいつと一緒にいるのが何よりの証拠だろ」


 男が顎で隣を指す。

 つられて視線を向けると――


 そこには、あの少女が座っていた。


 どうやら、寝ぼけて適当に座ったこの席はあの少女の隣だったらしい。


「あー悪いな、だがどこに座ろうが俺の勝手だろ。今ちょっと気分悪いんだ、勘弁してくれ」


 手で追い払うようにジェスチャーする。

 だが男は引かない。


「残念ながらそうはいかねぇな。俺は仙師候補生だ、国の敵は俺の敵でもある」


 言動に相応しくないセリフに苛立ちを覚える。


「裏切り者がどうとか知るか。隅っこで勝手にやってろ、巻き込むんじゃねぇ」


 その言葉に、男の顔が歪む。

 次の瞬間、ガッと胸ぐらを掴まれた。


「テメェ、調子乗ってんじゃねぇぞ」


「うえ.....吐きそ……」


 ウンザリしたような顔で言う。


「お前の面を見てると吐きそうだ、離れてくれないか?」


「.....舐めんなッ!」


 男が拳を振り上げる。

 その拳を軽く受け止め、そのまま足を下へ伸ばす。


 男の股間の真下。

 いつでも蹴り上げられる位置に。


「お、おい……分かった待て」


 男の顔が一気に青ざめる。


「いいや、お前は分かっていない、俺の怒りをな」


 次の瞬間。


 シュッ。


 少し加減を入れた蹴りが、的確に急所を捉えた。


「アッ……おああぁっ……!」


 男が股間を抑えながらプルプルと悶絶し、その場に崩れ落ちる。


「おッ、お前らぜってぇ許さねぇ!」


 お似合いの捨て台詞を吐きながら、仲間と共に退散していった。


 教室がざわつく。

 そして――


 隣の少女と目が合った。


 正面から見ると、整った顔立ちをしている。


「お前もさァ……仙師目指してここにいるんだろ?」


 二日酔いと先刻の件のせいか、少し言葉が荒くなる。


「あんな奴らに縮こまってんじゃねえよ。巻き込まれんのは御免だぞ」


 すると少女は、わずかに眉をひそめた。


「貴方のような酔っ払いに言われたくありません」


 淡々とした声。


「いや、これは二日酔いで.....」


 急いで弁明しようとする。


「お酒臭いので、話しかけないでください」


 (臭いって……コノヤロ....)


 論争する間もなく、そのまま授業が始まり、そして終わった。


(ふぅ……大分マシになってきたな)


 頭の重さも、少しずつ引いてきている。


(この後暇だな.....)


――――――


 昼の風が、学院の外れの木々を静かに揺らしていた。

 人の気配はまばらで、葉擦れの音だけが、空気の中に溶けている。

 陽の光は枝の隙間から差し込み、まだ温もりの残る地面を斑に照らしていた。



 ――ムカつく。


 街を歩きながら、何度もそう思う。


 あの男。

 酔っ払いのくせに、言っていることは少しだけ正しかった。

 それが、余計に腹立たしい。


(……私が弱いのなんて……)


 分かっている。


(私が一番分かってる!)


 足を止めたのは、学院の外れ。

 自然に囲まれ広く、仙素の訓練に適した場所ながらも人があまり来ないお気に入りスポット。


 だが――


(ん……誰だろ?)


 木陰に、人影。

 よく見ると――


(なんで、あいつが……)


 今朝のあの男だった。


 思わず身を隠し、様子を伺う。


 男が目をスっと閉じ、手をかざす。


 ――次の瞬間。


 綺麗な火球が現れる。

 揺らぎのない、安定した炎。


(……凄い)


 思わず息を呑む。


(あんな綺麗な火球……お父さん以外で初めて見た……)


 見入ってしまう。


 ――その瞬間。


 視線が合った。


「お前は……今朝の」


 声をかけられる。


「なんだ...今朝の復讐でもしに来たか?」


「ち、違います!」


 慌てて出ていく。


「私は普段からここで訓練してるだけです!貴方こそ何してるんですか!」


「いや……暇だったから、良い場所を見つけたもんで」


 あっさりした返答。


「邪魔ならどくけど」


(……え?)


 予想外の反応に戸惑う。


「今朝は俺も悪かったしな」


(……なんなのこの人)


 少しだけ間が空く。


 そして。


「……じゃあ」


 思い切って口に出す。


「私に教えてください」


 ゲンジが眉をひそめる。


「仙術を」


「え?……やだよ、面倒くせぇし」


(は?)


「さっき今朝のこと謝ってましたよね!?」


「その後もっと酷いこと言われた気がするしな」


「も、もういいです!」


 背を向ける。


「私の邪魔にならないよう端っこでやっててください!」


 乱れた心を落ち着かせ集中する。


 空に手をかざす。


 炎が生まれる。


 ――だが。


 制御できない。

 膨張し、暴れる炎。

 空へと噴き上がる。


(また……!)


 歯を食いしばる。


 その時。


「気が変わった」


 声が飛ぶ。


「もう一回やってみろ」


――――――


 炎の残滓が、空中でゆらりと揺れ、ゆっくりと消えていく。

 焦げた空気の匂いが、わずかに残る。

 その中心で、俺は目の前の光景を見ていた。



(……化け物か、こいつ)


 思わずそう思った。


 あの空へと立ち上る業火。

 制御は滅茶苦茶だが――量が異常だ。


(俺...いや、イレーネより数倍仙素が多い)


「もう一回だ」


 少女は訝しげにしながらも、再び手をかざす。


 炎が生まれる。


 ――だが、また暴発。


「何度とやってみろ」


「は、はい!」


 何度も繰り返す。

 だが結果は変わらない。


「ハァ……ハァ……」


 呼吸が荒くなる。


「……よし、1度ひと呼吸置いてからもう一度やってみろ」


 言われた通り、少女は深呼吸する。


 集中。


 再び手をかざす。


 ――炎が生まれる。


 今度は暴れない。

 小さいが、まとまった火。


「……で...できた……!」


 少女の顔に、笑みが浮かぶ。

 年相応の、無邪気な笑顔だった。


「お前は仙素が多すぎるんだ。だから空っぽにした、少ない量の仙素なら十分に扱えている。」


「……ありがとうございます」


 少し照れたように俯く。


「名乗るのが遅れたな、俺はゲンジ」


「シエルです」


 そうして――

 銀髪の少女、シエルと俺は出会った。


 少しだけ、気まずい沈黙が流れる。


 風が木々を揺らし、さっきまでの炎の残滓がゆらゆらと揺れていた。


「……なあ」


 なんとなく口を開く。


「学院で言われてた"裏切り者"っての、なんなんだ?」


 シエルの肩が、わずかに揺れた。


「……聞いて、楽しい話じゃありませんよ」


「別に言いたくないなら構わない」


 肩をすくめる。


「ただ、気になっただけだ」


 少しの間。


 シエルは視線を落としたまま、黙っていたが――


「……私の父は」


 ぽつりと、言葉を落とした。


「仙師であり研究者だったんです」


「研究者?」


 研究者...あまりこの世界には似合わない単語だ。


「ええ。人間と歪人についての」


 歪人。

 この世界に来てから、何度も聞く単語だ。


 ――人類の敵。


 それ以上は分からない。


「……それがどう関わってくるんだ?」


「普通は、そんな研究しないからです」


 シエルは淡々と続ける。


「歪人は敵。昔からそう決まっている。それ以上でもそれ以下でもない」


「……」


 確かに、そんな空気はあったかもしれない。


 "そういうもの"として扱われている感じ。


「でも父は違いました」


 少しだけ、声に感情が混じる。


「どうして敵なのか、本当に敵なのか、共存は不可能なのか?それを調べようとしていました」


「それで……裏切り者、か」


「……それだけなら、まだ良かったんですけどね」


 自嘲気味に、わずかに笑う。


「父は、歪人の子供を保護しました」


「捕虜として囚われていた子を、逃がしてしまったんです」


 話が見えてくる。


「人間の敵に手を貸した裏切り者。そういう扱いです」


「そういう裏があったのか...」


「ええ...」


 短く返す。


 だが、その目は笑っていない。


「それで終わりじゃなかったんです」


「……え?」


 シエルは、少しだけ空を見上げた。


「父は言っていました」


 静かに。


「"これは偶然じゃない"って」


「偶然じゃない?」


「人間と歪人が争っていること。

 その関係そのものが――」


 そこで、言葉が止まる。


 ほんの一瞬の沈黙。


「……仕組まれているんじゃないか、って」


「……そりゃまた一体誰に?」


 自然と口から出た。


 だが――


「……さあ」


 シエルは、あっさりと首を振る。


「そこまでは私も知りません」


 そう言いながらも、


 ほんのわずかに、視線が揺れていた。


「その後、父は粛清されました」


 淡々とした口調に戻る。


「だから私は――裏切り者の娘だそうです」


 風が吹く。


 銀髪が、静かに揺れた。


 少しの沈黙。


「……なるほどな」


 軽く息を吐く。


「でも」


 シエルが、わずかにこちらを見る。


「私は父が間違っていたとは思っていません」


 その目は、さっきまでとは違っていた。


 迷いがない。


「……そうか」


 少しだけ口角が上がる。


「いいじゃねぇか」


「……え?」


「そういうの、嫌いじゃない」


 そう言うと、シエルは一瞬きょとんとした顔をしたあと――


 ほんのわずかに、視線を逸らした。


「……変な人ですね」


「俺はそう思わんが.....」


 肩をすくめる。


シエルがクスっと笑顔を見せる。


 木々の間を風が抜ける。


 さっきよりも、少しだけ空気が軽くなっていた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

本作はカクヨムと同時掲載となっております。

また、本作は制作途中のため、今後の展開や構成の都合により、ストーリーや設定、名称などに調整・変更が入る場合があります。

より良い作品になるよう試行錯誤しながら執筆しておりますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。

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