第2章4話
本作はカクヨムと同時掲載となっております。
また、本作は現在制作途中の作品となっております。
そのため、今後の展開に応じてストーリーや設定、名称などに調整や変更が入る可能性があります。
できる限り違和感のない形で更新していく予定ですが、あらかじめご了承いただけますと幸いです。
目を覚ますと、天井があった。
(……ああ、そうだ)
一瞬だけ、どこにいるのか分からなくなる。
だがすぐに思い出す。
ここは王都。
仙師学院の寮だ。
体を起こす。
まだ少し眠気が残っているが、昨日よりは頭がはっきりしていた。
「……よく寝たな」
軽く首を回しながら、部屋を見渡す。
簡素だが、十分すぎるほど整った部屋だった。
木製のベッドに、机と椅子。
壁際には収納棚と、最低限の生活道具。
窓から差し込む光が、室内をやわらかく照らしている。
(思ってたより、ちゃんとしてるな。まあそう思うのも当然か……)
野宿生活していた今までとは比べものにならない。
むしろ、快適すぎるくらいだ。
その時――
コンコン、と扉が叩かれる。
「おーい、起きてるかゲンジ」
聞き覚えのある軽い声。
扉を開けると、案の定、リュカが立っていた。
「うぃ〜す、おはようさん」
軽い調子で手を上げてくる。
「朝から元気だなお前……。俺は起きたばっかでまだ眠ぃわ……」
「寮生活だぞ?ワクワクするだろ」
そう言いながら、勝手に部屋へ入ってくる。
「……入室は許可してないぞ」
「いいじゃねぇか、減るもんでもねぇし」
部屋を一通り見回して、ふむ、と頷く。
「へぇ、悪くねぇな。俺の部屋も似たようなもんだったぜ」
「そりゃ寮なんだから同じだろ」
「夢がねぇなぁ。あの受付のお姉さんが俺を気に入って、特別に良い部屋に振り分けてるかもしれないだろ?」
「んなアホな……」
くだらないやり取りをしながら、軽く支度を整える。
「で、最初の授業ってどこ行きゃいいんだ?」
「昨日掲示板見てきた。最初は一番デカい教室らしいぞ」
そんな会話をしながら、二人で寮を出る。
学院の敷地は広く、初日ということもあり、朝だというのにすでに多くの生徒が動いていた。
同じように教室へ向かう連中。
談笑している奴。
一人で黙々と歩く奴。
教室に入る。
中はすでに半分ほど埋まっていた。
だがそんな中、不自然に空いている席を見つける。
「お、あそこいいじゃん」
リュカと並んで座る。
授業が始まるまで二度寝でもしようと思ったが、ここだけ少し空気がおかしい事に気づく。
そんな中、二席ほど離れた前の席から、妙な声が聞こえてきた。
「……なぁ、なんでお前みたいなやつがここにいんだよ」
「ほんとだ、国賊の娘がなんで仙師学院にいるんだ?」
いやらしく笑う声。
視線を向ける。
そこには、一人の少女と、それを囲む三人の男。
少女は、俯いたまま何も言わない。
肩口で揃えられた白――いや、僅かに銀がかった髪。
その中に、一房だけ色の違う黒が混じっている。
小柄で華奢な体。
短く整えられたローブの下には、動きやすそうな戦闘用の服が覗いている。
腰には、短剣のようなものが刺さっている。
ふと、少女がわずかに顔を上げる。
蒼と紫が混ざったような綺麗な瞳。
感情は読めないが、ただ黙って、言葉を受け流しているようだった。
「おい、聞いてんのかよ?」
一人のリーダーポジションであろう青年に肩を小突かれる。
それでも、少女は微動だにしない。
(……何だありゃ。この世界でもそういうのはあるんだな……)
一瞬、間に入るという考えが頭をよぎる。
だが――
(別に、俺が関わる理由もねぇか……ここで助けるような真似したら、仙師になる為に来てるだろう彼女にも失礼だろうしな……)
視線を外す。
騒ぎは、まだ続いている。
「ほら、なんか言えよ」
(にしても……胸糞悪ィもんだな……)
若干のイラつきを感じ始めていた時――
「静粛に」
低い声が、教室に響いた。
いつの間にか教壇に立っていた男。
年配の男で、無駄のない立ち姿。
一瞬で、空気が変わる。
「席につけ。授業を始める」
ざわつきが収まり、生徒たちは一斉に席へ戻っていく。
少女を囲んでいた男達もまた、何事もなかったかのように席へ座った。
小さく安堵の息を吐く。
「では、最初の講義を始める」
男は教室を見渡す。
「知ってる者が殆どだろうが基礎から始める、まずは“仙師”についてだ」
その一言で、空気が引き締まる。
「仙師とは、仙素を扱い、戦い、そして戦えぬ者を守る者だ」
淡々とした口調。
だが、言葉の一つ一つに重みがある。
教師「仙師には階級が分けられており、大きく分けて四つ――仙兵級、仙士級、仙衛級、そして特仙級だ」
教師「まず仙兵級。これは一般的な仙師であり兵士だ。基礎的な仙術を扱え、対人戦や低級魔物の討伐が可能な最低限の戦力。基本的に数人で任務をこなす。」
教師「次に仙士級。仙兵級の上位互換と考えていい。仙兵級クラスを複数相手にしても引けを取ることはなく、実戦経験も積んでいる者達だ。」
教師「仙衛級――ここから大幅に所属人数が減っていく」
教師「戦場に一人いるだけで流れが変わり、単独で高難度の任務を任される、国の大黒柱とも言える存在だ」
教師「そして最後に特仙級」
教師「……これはもはや例外だが、言わば彼らは国そのものだ」
教師「一人で小国を制圧、崩壊させる戦闘力を持ち、人数も極わずかの少数精鋭だ」
(階級……対戦ゲームとかでよく見るヤツだ……とりあえず特仙級ってのは化け物なんだろな.....)
「この世界では、歪人、そして魔物という脅威が存在する」
教室の空気が、わずかに張り詰める。
「歪人は人と似て非なる存在。知性を持ち、人間と全く似た容姿をしているが、人と違うのは仙素が歪んでいる点だ。我々人間は歪人と代々敵対し、争い続けているということだ」
(歪人……人間と殆ど同じように聞こえるが、どうしてか敵対しているらしい)
「魔物はこの世界に住まう人間、歪人、獣人関係なく襲う、より純粋な脅威だ。理性を持たぬ分、厄介だな」
男は黒板に簡単な図を描きながら説明を続ける。
(……なるほどな)
聞きながら、頭の中で整理する。
今までなんとなく知っていたものが、体系として繋がっていく感覚。
「そして――」
男は一拍置いた。
「半年後、試験に合格した者は、それらと命を掛けて戦うことになる」
静まり返る教室。
「覚悟しておけ」
その言葉は、重く、確かに胸に落ちた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
本作はカクヨムと同時掲載となっております。
また、本作は制作途中のため、今後の展開や構成の都合により、ストーリーや設定、名称などに調整・変更が入る場合があります。
より良い作品になるよう試行錯誤しながら執筆しておりますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。




