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エボルヴインパクト 非対称型PvPvEの悪魔的暗殺術  作者: すばる
2章

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19/20

2-9 混乱

 以前読んだ資料によると、軍基地はホストシティを統治する上で治安の悪いアグヌ地区を監視する目的で作られていて、ミュータントの暴走が起こるとアグヌ地区の住人を無視して中心部の救援に向かったらしい。NPCの登場しない“Day 1 Catastrophe”の演出と整合性を持たせるための設定でもあるのだろうけど、ともかくもぬけの殻になった軍基地には予備の装備が残されていて、それを基地ごと獲得したサバイバーたちはほかと比べて高い戦力を保有することになった。それを利用し周囲の物資をかき集めていたのが掲示板から読み取れる。このチャンネルに生き残っている中でも、最大規模の勢力だろう。

 軍基地の内部構造はなかなかに厄介だ。大型車両が通るためなのか建物同士の間隔が広くて射線が通りやすく、籠城戦を意識した作りで屋内から狙える強い射撃ポジションも多い。加えてサバイバーたちがバリケードを築き、使わない窓や出入り口を封鎖した。それらが万全に機能していれば、夜でもまともに攻めることはできなかっただろう。

 けど灯りの消失という大転換を経て、十分な照明を確保できなかった今は大きな隙が生まれている。射線が通りやすくても強いポジションがあっても、見えなきゃ撃てないし当たらない。暗闇の中にポツポツと浮かぶ灯りはあまりに頼りなく、わずかな光の範囲の外側に何がいるのかを教えてはくれないのだ。それでいて自分たちがここにいるのだと示す誘蛾灯としての役割はしっかりと果たしている。ザルになった警備を抜けて敷地内に侵入した私は、音と光を頼りにサバイバーたちの動きを読み、孤立している人物に狙いをつける。するりと建物内に入り込み、自身の記憶と照会しながら進むと、程なくして闇を切り裂くような細い光が見えてきた。けど、あっちは私の存在に気づいてもいない。

 懐中電灯の頼りないライトを避けるように、天井から触腕を伸ばして背中を襲う。

「はい、これは没収」

 サバイバーが倒れたところで、ライトを触腕で掴んで外にポイ。貴重な灯りのひとつがこれで消えた。

「やっぱ夜は私たちの味方だね」

 この暗闇じゃ数メートル先の目標に当てるのだって難しいからね。そもそもそんなに見えないし。もちろん私の視界も最悪レベルだけど、軍基地は有名な稼ぎスポットなので通常プレイでも何度も来ているし、構造は体が覚えている。

 音と光を頼りに敷地内を動き回り、闇の中からサバイバーを仕留めて回る。新たな獲物を発見。ランタンを囲って部屋の中に閉じこもっているみたいだね。窓から灯りが漏れているからいるのはバレバレだし、暗闇の中から様子がよく見える。一応警戒しているようだけど、来るかもわからない襲撃に備え続けるのは精神的にも疲れるし、緊張は長持ちしない。糸が緩んだのを所作から読み取ってするりと侵入し、まずは天井からひとりを落とす。でもって毒で力を失ったサバイバーを触腕で押して倒れる角度を調整。体に巻き込まれてランタンも倒れ、灯りが失われる。いまさら慌ててももう遅い。だって届く距離だもの。

 これで14人。堅固な軍基地も灯りが不足した今は美味しい稼ぎスポットだ。ただ結構暴れ回ったせいか、流石に侵入には気づかれたらしい。規則的だった音が激しく変化し、あちらこちらでサバイバーが動き始めるのがわかる。

 でもまあ、排除の動きなら問題なし。

 朝まで耐えようとガッチリ固められたら、崩すのに苦労したし倒しきれなかった。音から探った感じ、軍基地にいるサバイバーは最初の時点でざっと50人近くにのぼっていた。いい感じで倒せてはいるけど夜は20分しかなく、もうすぐ折り返しだ。ペースを上げるのに、向こうから攻めてくれるのはむしろ好都合。

 頭の中に軍基地の構造を描き、音を聞いてサバイバーたちの動きを把握する。まだ私の現在地が把握されたわけじゃないみたいだな。たぶん、人と灯りが減ったことで襲撃には気がついたとかその程度。数の多さにかまけてまだこっちを舐めているみたいだし、纏まりがないうちに各個撃破で削っていくか。

 方針を決めたらスピード勝負だ。とりあえず近くに来ていたサバイバーの側面から無音で襲い掛かり、ほとんど通り過ぎる手早さで全滅させてから騒ぎに気づいた別の班の裏に回る。

「やっぱ相手が動き回ってる方が狩りやすいな」

 音が出るし、注意も散るからね。もちろん【セカンドサイト】は面倒だけど、軍基地内のサバイバーは全員協力していてパーティーに括られているはずだし、クールタイムは共有だ。しかも軍基地自体広いから引っかからない可能性が高い上、検知されても大きく動けばすぐに見失う。

 そこで相手も動きを変えてきた。倒された味方から私の位置を割り出したか。いくつもの音が近づいてきたし、そこで【セカンドサイト】に捕まったことを【逆探知】が伝えてくる。

 でも、明るかったら意味のある包囲網も暗さのせいでザルに等しい。ライトに照らされないよう足元をするりと抜けて、包囲を逆に外側から切り崩していく。

「やっぱ増えればいいってもんじゃないよねぇっ!」

 こうなると、集まってくれたのはむしろ好都合。周りに味方がいっぱいいるから、下手に撃つと当たるし、気配がしても基本味方だ。敵が私ひとりしかいないからこそ、何十人もいるサバイバーが翻弄される。逆に私は近くにいるのが全員敵ってわかっているから、攻撃するのに迷いも躊躇いもいらない。光の揺らぎや音の発生からサバイバーたちの認識を予測しつつ、ひたすら死角を縫うように仕留め続ける。

 銃声の数が減っていく。入れ食い状態だった乱戦も、時間と共に収束し、数多くのサバイバーは何十という死体の山に変わった。暗闇を味方につけた状態なら、数が多くても私の方が強い。

 そうして数多くの敵を葬って最後まで立っていた私を祝福するかのように、天窓から白い光が差し込んできた。

 夜が明けたのだ。軍基地は高い壁に囲まれているので朝日を直接拝むことはできないけれど、人工物を遥かに超える陽光は世界を平等に照らし、惨劇の後を無惨に見せつけながらも生き残ったものを祝福するように優しく暖かな光で包み込む。

 映画のラストシーンになりそうなほど感動的な場面だね。生き残ったのはバケモノの方だけど。


次回投稿予定は明日12時です。

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