2-8 状況変化
夜戦も3度目となれば、サバイバー側も対応に慣れてくる。何よりサバイバーたちは自分たちの籠る拠点の要塞化を進めているので、いよいよ侵入も難しく、20分の夜時間をかけてもひとつの建物しか制圧できなかった。
「この調子だと4日目5日目はさらにキツくなりそう」
建物の向こうから朝日が昇るのを見ながらつぶやく。ただでさえ弱者は淘汰され強いサバイバーが生き残っている。そこに加えて夜には守りを固めるとあっては、昼間の方が狩りやすいという逆転現象が発生していた。
けれど、そんな私の焦燥と、安堵しているであろうサバイバーたちの余裕を、世界は一瞬で塗り替える。
チカチカと数回、光が瞬き、建物という建物から灯りが一斉に消えたのだ。停電。文明の崩壊が、新たなステージに突入する。
もともと“Day 1 Catastrophe”は研究所の事故でミュータントが溢れ、ホストシティ全域が崩壊したイベントだ。なのでどこかのタイミングでライフラインが止まるというのも、想定できない状況というわけではない。
とはいえ実際に行われるかは怪しく、備えていたものは少数だろう。
「荒れてるねぇ。無理もないけど」
軽く掲示板を見てみると、電気が消えたことに戸惑う声が多数。昼日中ならライフラインが消えたことによる影響は少ないが、このまま夜を迎えれば暗闇の中でミュータントに襲われることになる。対抗するためには、最低でも懐中電灯なりの照明を確保しないと話にならない。
すでに準備しているサバイバーはほとんどいない。武器弾薬、医薬品に水や食料と、必要なものは多岐に渡り、大容量バックパックがないので輸送能力は平時より低い。仮に容量の余裕がある状況でも、いるかもわからないアイテムを回収するよりはスコアを盛れる高価値アイテムを優先するってサバイバーも多いはず。。
あと30分。対策がなければ暗闇の中でミュータントに狩られる。それを避けるために、サバイバーたちは慌てて動き出している。
私にとってはチャンスだ。新たに集めるべきアイテムが増えたおかげで、サバイバーの動きがグッと読みやすくなった。そういうわけで、さっきは空振りに終わった電気店に再び突入する。
電気店にはすでに人がいた。油断しているのか見張りもなく、全員が別々に物資を漁っている。一番美味しい盤面だ。普通なら音で接近を察せられるのかもしれないけど、【静かなる殺意】を持つ私には通らない。
この状況からなら負けるほうが難しい。かなりいい装備を揃えていたようだけど全部無駄。気づかれぬよう静かに手早く、サバイバーたちを消して電気店を制圧していく。
「じゃ、このまましばらく粘りますか」
立地の近い軍基地のサバイバーたちとかが来るだろうからね。というか今倒したのがたぶんそうだし、戻ってこなければ他の人たちが様子を見に来るはず。
そうして電気店に籠城して、やってきたサバイバーを2組撃退したところで、いよいよ世界が暗がりに飲まれ始める。少し遠くが見えづらい、くらいの暗さはすぐにものの輪郭しかわからないほどになり、シルエットすらも闇に塗りつぶされていく。1日が1時間しかないから、変化はあっという間だ。
夜になる前に電気店を出た私は、少しの距離を移動して、巨大な壁で囲われた施設の前までやってきた。
軍基地。武器弾薬が大量に保管されており、イベント開始直後に占拠したグループが、そのまま要塞化し拠点利用している場所だ。少し前に発見し、けれどそのときは昼日中だったこともあってとても攻められる状況じゃなかった。
けれど状況は変わった。電気の供給が止まった軍基地は暗闇に包まれていて、警戒網も維持できなくなっている。
もとより規模の大きな勢力は食料の備蓄がカツカツで常に確保し続けなければならない自転車操業だった。だから照明を確保するにしても、食料を確保しつつ並行して同時に行わなければならない。けど、軍基地から一番近くて照明が確実にあったであろう電気店は、私が居座ったことで供給源とならなかった。回収部隊も全滅させたしね。当てにしていた物資が手に入らなかった今、軍基地の勢力は深刻な灯りの不足に陥っている可能性が高い。
攻めるなら今、というわけだ。
次回投稿予定は明日12時です。
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