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第366話 スピノ対コウタ沙織キャシー

第366話 スピノ対コウタ沙織キャシー


 続けてキャシーはどこでもジャンプを二回使ってスピノの背中の上方に出た。

 突如スピノが後脚二本で立ち上がり、大きくて長い頭を回してキャシーを襲う。

 図体がでかい割に結構体が柔らかく、キャシーを捕らえたかに見えた。

 キャシーはさらにどこでもジャンプを使い、でかい口を避け上に飛んでから鉄の爪で背鰭の表面を切り裂きながら、フットスパイクをスピノの背中に突き刺した。


「だめにゃ。背鰭も表面しか切れないし背中も硬い。スパイクは半分しか刺さらなかったにゃ」


 そう叫んだキャシーは向こう側へ着地。

 それをスピノが追い始める。


 当初の目的通り、幼体から離すことに成功。と言うよりあいつはシンを恐れていたから、自らシンから遠ざかっただけかも知れない。

 それにキャシーは小さいとは言えグロックで背鰭に穴をあけ、鉄の爪で背鰭の表面を切り裂き、背中にスパイクを10センチ近く刺したことになる。

 多少は俺たちの攻撃が通じるってことだ。


 それにしてもでかい。全長18Mもあるんだもんなあ。4本足で立ってる時でも背中まで3M、背鰭を入れたら5Mはある。

 キャシーを追い駆ける時は後足2本だけで立った。その時の頭までの高さと言ったらどの位あるんだろう。すげえ迫力というかまじ怖い。  それに尾鰭の長さは8Mか9Mある。あれで叩かれたらただじゃ済まないだろう。

 あのデカナガ口で噛み付かれたら間違いなく死ぬし、下手すると噛み砕かれて一口で飲み込まれそうだ。

 9トンの体重を考えれば踏み潰された時も死に向けて直行か。

 あと、あの前足の爪もやばいな。特製スーツでも耐えられるかどうか。


 あ、見た目のど迫力に押されて、またネガティブ思考に陥った。

 ダメ元で俺は投網型粘糸弾を続け様に後方から放った。

 その目的は後脚二本をもつれさせることだったが、背鰭が邪魔して向こう側の腰までも届かなかったし、こちら側の脚だけ狙った粘糸弾は効果が無かった。最後の一発は尾鰭で払われてしまった。


 俺の一番の武器が後方からでは効かないことが分かった。

 もし粘糸弾を生かすなら頭しか無いが、立ち上がったアイツの正面から狙うのは心理的にも厳しい。

 横からなら何とかなるだろうか。ううん、、、


 沙織はライトソードを手にしている。

 ヤツは巨体にも関わらず動きも俊敏だ。ヤツの脚や首を切るのは難しそうだが。

 前方ではキャシーが右に左にと、どこでもジャンプを駆使しながら揺さぶっている。

 ヤツはキャシーの残像を追うように頭を何度も鶏のように突き出している。


 今の所沙織の接近には全く気付いてないようだ。

 沙織はヤツの左後方から走り込み、左後脚をライトソードで斬り裂く。

 後脚上部から血潮が噴き出した。結構深く斬れたようだ。膝? より上の巨大な筋肉を水平に50センチほどは確実に斬っただろう。

 スピノの動きが止まる。


「グア!」

 スピノが吠えた。一瞬で傷口が塞がったらしく血も止まった。


 沙織はスピノの尾鰭の付け根の下を通って反対側に出た。

 そこからあまり距離を取らずにいる。これって滅茶苦茶危なそうだが。

 いやあの後脚は蹴るのには向いてない。水掻きまで付いているし、水中では泳ぐ為、陸上では体重を支える為、そして走る為に使えるだけだろう。

 それにあの長い尾鰭もあの位置にいれば、沙織を攻撃できないかも知れない。

 後は向きを変えて頭と前足の爪の攻撃だろうが、それに合わせて沙織が動けば、踏み潰されない限り比較的安全な位置と言えなくもない。


 今の攻撃に怒ったスピノは、前側のキャシーから攻撃対象を沙織に変更したらしく、立ち上がったまま体の向きを変えている。

 それに合わせて、同じ位置をキープするように沙織が巧みに動いている。剣道の足運びだろうか。何にしても大した胆力だ。

 次はどんな攻撃に出るつもりなんだ、沙織よ。


 ここで俺が沙織をアシストするには何をしたら良いだろう。

 俺はスピノを中心に、沙織の位置と線対称の位置へと走った。

 スピノは沙織に意識を集中しているので、その位置まで行くことは意外と容易かった。

 激しく動き回ってるから、それに合わせて動かないといけないが。


 俺は沙織に通信で呼び掛ける。

「俺はスピノの背中に登る。

 手足のヤモリ式接着機能で背中にくっついて、オリハルコンの剣をブッ刺してやる」


「良いわね。コウタの剣には火炎魔法と風魔法の属性が付与されてるのよね。だったら深く突き刺さるかも」


 こうして通信で話している間も、スピノは沙織を探して大きく身体を捻りながら回っている。

 俺も沙織もそれに合わせて、位置を調整すべく足を運ぶ。


「沙織のライトソードは後脚を深く斬り込んでいた。

 次は脚の外側からではなく、皮膚が薄そうな内側から斬れないか。

 さっきより少し下の方が筋肉が小さくて斬りやすいんじゃないか」


「難しい注文ね。

 さっきの手応えでは硬い皮膚を破る感触、続いて骨で止められるまでの筋肉はスッと斬れた。

 内側から斬れれば、もしかしたら骨まで斬れるかも知れないわね」


「じゃあ、その位置をうまくキープしろよ」


 俺はスピノの左後脚に飛び付いた。

 おお、ちゃんとくっつくぜ。これなら背中まで登れそうだが、その前にこれでも喰らえや。

 俺はオリハルコンの剣に火炎魔法を纏わせて、スピノの左膝関節の横にブッ刺した。

 高温になったオリハルコンの剣は、イメージ通りに硬い筋肉に深く食い込んだ。


「グア!」

 突然、左脚膝関節に激痛が発したらしくスピノが吠えた。動きが少し止まる。

 スピノの脚がもつれた。それでもたたらを踏んで何とか持ち堪えたぜ。

 さすが最強クラスの肉食恐竜だ。簡単には倒れないな。


 俺はするすると腰の上まで上がり、今度は尾鰭の付け根に剣を突き刺す。


「グアァ!」

 これもかなりの激痛を味わわせたらしい。またスピノの動きが止まる。


「ググアア!」


 何だ? 俺はまだ三回目はどこにも刺してないんだが。


 スピノの態勢が大きく崩れた。接着している俺の体がフワッと浮く感じだ。

 一旦倒れ掛けたスピノは態勢を戻したが、最早後ろの二本足では立てないらしく四足歩行に戻った。


「内側から右脚を骨の中まで斬ったわ。骨を全部斬れなかったのが残念」

 沙織からの通信だ。


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