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第365話 しのぶ対ブラキオ

第365話 しのぶ対ブラキオ


 ブラキオの幼体は気絶しているだけらしいからあれで捕獲確定でしょうね。

 そしてこの巨体のブラキオがあの子の母親なら、幼体と一緒に捕獲することは悪くない仕事かも知れない。

 ナミさんの見立ては的確なように思えるし、私さえビビらずに落ち着いて攻めれば、このデカブツを私が倒せるかも知れない。

 そんな気になってしまった。

 ナミさんにうまく暗示を掛けられたような気がしないでもないけど。ま、やってみましょうか。


 私がスティックを構えると、自分が狙われたと感じたらしくブラキオの目つきが鋭くなった。

 後ろの尾が左右に振られている。あれを当てられたらパームシールドでもどうなるか分からない。

 そんな不安は少なからずあるけれど、私が頑張ればあの幼体と一緒に環境の良い動物園で一生危険なく暮らせる筈。

 そう思ったら腹が据わった。

 尾を振るためにこいつが回転したら、私が狙う頭が遠くなってしまう。

 かと言って近くに最大出力の雷を落とせば、私自身にも危険が及ぶ。

 丁度良い距離感が大事だと思った。


 ブラキオは尻を少し右(私から見て。以下同じ)に振ってから反対の左側に勢いよく振った。

 体の左側から長い尾が回ってくる。尾振り攻撃だ。目はぎりぎりまで標的の私を見据えるつもりらしい。

 尾は左から私を襲って来る。ブラキオの頭が右に向く。

 私は右に離れて行く首を追って、走りながら頭を狙ってスティックを振り下ろす。

 目の前に眩い白い光がスティックからブラキオの頭に向かって走る。


「ドッカーン! バリバリバリバリバリ」


 巨体が脚力を失って遠心力の掛かる外側に倒れて来る。

 私の方向だが本体との距離は十分ある。

 問題は後方から伸びて来る遠心力と慣性の法則で動く長い尾だ。

 私は風魔法を地面に向かって放った。その反動で私は右方向へと距離を取ることに成功したかに思ったが少し足りない。

 巨大な尾の鞭が超高速で目前に。

 風魔法もう一回間に合うか? 

 危ないと思った瞬間、私の体がさらに高く浮いた。そしてそのまま10Mほど飛ばされ地面に降ろされた。

 最初に高く浮いたのは、不可視状態のタイソンがブラキオの尾から守る為に遠間からジャンプして私をキャッチしてくれたから。

 そして10M飛ばされたのはナミさんが風魔法で私をタイソンごと吹き飛ばしてくれたかららしい。


 日本ではタイソンNに一回、異世界ではタイソンに二回、私は彼にいつも助けられている。

 無意識にタイソンがいるから私は大丈夫と信じていたらしい。

 そしてナミさんも助けてくれた。

 とは言え、私はたった一人で25Mもある巨大恐竜の意識を刈り取ったのだ。

 私の目の前にブラキオサウルスが倒れている。呼吸はあるようだが今も目を閉じたままだ。


 私はまずナミさんを見つけ駆け寄った。

「ナミさん、風魔法ありがとう。助かりました」


「うむ、余計なお節介だったようだが、無事で何よりじゃ」


 クモミンから私に通信が。

『しのぶ、がんばったね。ブラキオは回収させてもらうよ』


「さっきの幼体は」


『あれも回収した』


「コウタさんや姉さんたちは」


『200Mほど先でスピノと今も戦闘中だよ。もうすぐ倒せそうだ』


「本当。良かった」


 私の側にタイソンが不可視を解いて現れた。

「タイソン。今回も助けてくれてありがとう」


『問題ない。しのぶは私がアシストしなくても、もう一度風魔法を使って自分で窮地を凌いだ筈だ』


「あれは間に合わなかったと思う。とにかく助けてくれてありがとう」


『ナミ様の風魔法もコントロールが最高だったな』

 私にそう言ってから、タイソンはナミさんと目を合わせて胸に手を当てる。


「ナミ様、私はタイソンと申します。どうぞよろしく」

 通信ではなくタイソンの肉声だ。音質は同じだけど。


「うむ。タイソンとな。

 私はナミ。こちらこそよろしゅうに。

 お主と会うのはこれが初めてかの」


「前回のグリフォンの時にもおりましたが、不可視を使ってました」


「ほお、前回は全く気づかなかったの。

 今回はしのぶを見ていたから、お主の姿も輪郭だけは見えたぞ。

 だが意識してないとそれすら見えないものだな。中々やりおるの」


 不可視モードでも輪郭は見えるとか、フェンリルの力はすごいですね。

 ナミさんはタイソンが気に入ったらしいし、強者同士は通じ合うものがあるのでしょうかね。



‘’’’’’’’’’’’’’’ 視点チェンジ


 観戦するつもりが、俺と沙織とキャシーで、この怪物を捕獲することになってしまった。

 沙織もキャシーもやる気だ。俺も腹を決めるしかない。

 まずは幼体ブラキオの回収作業の邪魔にならぬように、少し戦場を遠くへ移すか。


「シン、危なくなったら助けてくれよな」


「あい分かった。三人で連携すればその必要もなかろうがな」


 確かに一度勝ったことはあるが、フェンリルに進化したのに、まだ俺たちの評価はそんなに高いのか。


「進化する前のワレでもアレには負けんぞ。

 従ってお主らがそのスピノとやらに負ける訳がなかろう」


「そうなのか、な」


「コウタよ、もっと自信を持て。沙織は自信満々のようだぞ」


「シン、そう見えるの。これでも私一杯、一杯なんですけど」


「シン様の言うように、三人で連携すれば何とかなるにゃ」

 キャシーはそう言って、グロックを連射。

「ダダダダダダ!」


 四足歩行でシンから逃げようと方向転換中のスピノの背鰭に六つほど小さな穴が空いた。

 何故急所とも思えないそんな所を狙うんだ、キャシー。


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