なずな -10
「ここにおったか!」
やっと見つけたオグナは、血だらけで気を失っていた。
「スサノオ!スサノオ!……まずいのぅ。こやつを担いで行くのは無理じゃし……」
だからといってのんびりはしてられない。
「……っ!」
遠くから木々の倒れる音が聴こえてくる。オロチが移動を始めたのだ。
それが意味しているのはーー
「姉上……」
ツクヨミはまた袖で目元をこすると、五行でオグナの傷の治療を始めた。
音が大きくなってくる。
気配なのか、においなのか、それとも見えているのか、オロチは確実にこちらに向かっている。
「……こんなもんじゃろう」
オグナの治療を終えると、オグナの懐にアマテラスの神器を差し入れ、
「わしの神器『八尺瓊』じゃ。これも頼む」
自分の神器もオグナに渡した。
「あ~、怖いのぅ怖いのぅ。じゃが、逃げるわけにはいかぬ……。
……のぅ、スサノオ……いや、オグナよ。冥土の土産をもらってよいか?」
そう言うと、ツクヨミがオグナに顔をよせ、
「ガキは好みじゃないじゃろうが……子供のいたずらと思って……許せ……」
口づけをした。
「……ふむ、ちょっと元気が出た気がするわい」
ツクヨミが立ち上がる。
オロチはかなり近くまできているようだ。
「すまぬ、オグナ。あとは頼んだぞ」
ツクヨミが森を駆ける。
オロチの姿が見えた。
「首が一本増えたじゃと!?」
再度確認する。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、む……なな……やはり増えとる…………まさか、アマテラスの力を……!?……よくも姉上を…………こっちじゃ!ついてこい!!」
オロチの攻撃を避けながら、ひたすら走る。オグナから離れるように。
しかし、いつまでも続けられるものではない。
体力を使い果たし、オロチの攻撃を受け、ツクヨミは仰向けに倒れていた。
オロチが口を開け、ゆっくりと近付いてくるのが見える。
「ここまでか……じゃが、これでよい。オグナは守れた……のぅ、オロチよ……覚悟しておけ…………後々、スサノオが貴様の首をもらい受けるぞ……」
獣の臭いに視界を奪われ、ツクヨミの意識は途絶えたーー




