第六話 -4
「はぁ……はぁ……間に合った……」
「巧……今の動きは……?」
なずなが驚いた顔で巧を見上げる。
いや、なずなだけでなく、全員が巧を見ていた。
「え?」
「……そうか!おぬし――」
なずなが何かを言いかけたとき、巧の身体は横に吹き飛び、十数メートル転がった。オロチに攻撃されたのだ。
「ぐ……あ………!」
全身に痛みが走り、息がつまって叫ぶこともできない。
「フハハッ、そういうことかスサノオ!まずはおまえを殺そう!」
「巧っ!起きよっ!」
なずなが叫ぶが、先程のダメージに加え軽い脳震盪で、立ち上がることができない。
とっさに、かなめ、朱伽、静春、白宗の四人が動いた。
一斉にオロチへ攻撃をしかける。
「弱え……弱え弱え弱えっ!!ひっこんでろザコ共がぁっ!!」
が、オロチの足止めにすらならない。四人ともはじき飛ばされた。
「きゃあっ!」
「ぐぅ……っ!」
「くそが……っ!なんだよこの力の差はっ!」
巧のすぐそばで、かなめが倒れる。
「かなめ!大丈夫っ!?」
「………」
何も答えず、大剣を地面に突き刺して何とか立ち上がるかなめ。
オロチは巧へ向かって歩いてくる。
そのとき、陽芽がオロチの前に立ちはだかった。
「……っ!」
恐怖に震えながら、五行の盾を展開する。
「……邪魔だ」
「……どきません……」
怖くて目が合わせられない。陽芽は顔を伏せたまま答える。
「………」
オロチが盾に手を触れる。
次の瞬間、盾はガラスが割れたような音をたてて砕け散った。
「そんなっ!おじい様の盾があっさりと……」
呆然と立ち尽くす陽芽。
その頭上を飛び越え、
「はああああっ!!」
かなめが斬りかかる。
「遅いっ!」
オロチはかなめの顔を片手で掴み、地面に叩きつけた。
「ぐ……っ!!」
オロチはかなめを放すと陽芽を無視し、巧の顔を掴む。いや、顔を……というより、口を抑える感じだ。
「弱えとばかり思っていたが、まさか言霊使いとはな」
オロチが巧に話しかける。
「む……?むぐむぐむぐ……」
「しゃべるな。余計なことをされると面倒だからな。言霊使いってのは、発した言葉を現実にする能力を持った者だ。まぁオレも詳しくは知らねぇが、厄介なことに変わりはねぇ」
オロチが手刀を振り上げる。
「死ね――!!」
「やらせんっ!!」
なずなの声とともに、黒い光球がオロチに襲いかかる。
「ちっ!」
オロチは巧から離れて光球を避け――
「ふき飛べっ!!」
「ぐっ!!」
巧の言霊で数十メートル飛ばされ、バランスを崩しながらも着地した。
「無事か、巧」
「はぁ……はぁ………うん……」
「おぬしのスサノオとしての力は『言霊』じゃったか。それならあのテマリア戦やゴーレム戦のことも説明がつく」
巧は、こちらの世界に来たばかりの頃を思い出していた。
テマリア戦――
かなめがテマリアにやられそうになったとき、巧が「避けてっ!」と叫んだ直後、かなめの身体はまるで最初からそこにいなかったかのように、テマリアの攻撃を避けた。
ゴーレム戦――
あのとき、巧はかなめの大剣を借り、巨体のゴーレムを軽々と空遠くへ飛ばした。
「場合によっては現実を歪めることも可能な、強力な力じゃ。そのかわり、現実離れすればするほど精神力を消費する」
「あぁ、だから何か……身体がだるいのか……」
「オロチ相手に言霊を使うなら、あと一回が限度じゃろう」
「わかった……」
オロチは巧の様子に気付いていた。
「……勝手に自滅しそうだな………それじゃつまらねぇ……オレがとどめを――っ!?」
ドクンッ――と。
オロチの中で何かが脈打った。




