第六話 -1
数週間が経った――
「はっ!ふっ!」
「もっとだ!どんどん来い!」
朝から道場内に声が響き渡る。
「うあっ!……はぁ、はぁ……」
巧が突き飛ばされ、倒れ込む。
「よし、休憩だ」
そういう白宗は、汗ひとつかいていない。
「巧さん」
陽芽がタオルと水を差し出す。
「あ、ありがとう」
「次っ!嬢ちゃん、来い!」
「えっ、あっ、はいっ!」
「こんにちは~」
そこに現れたのは、ポニーテールの女の子。
「あ、朱伽さんっ!」
「お久しぶり、空島くん」
「巧、知り合いか?」
「はい、朱雀の観和 朱伽さんです。あ、こちらは元藤 陽芽さんと、仮子 白宗さん」
「ども、お邪魔しま~す」
「いらっしゃいませ。今お茶を持ってきますね」
「……みちるに似てるな………いや、何でもない。独り言だ。俺は仮子白宗だ。よろしく」
「……朱伽さん、咲さんの方は大丈夫なんですか?」
「うん、意識戻ったよ。まだ本調子じゃないけど、あの二人に任せてきた」
あの二人とは、もちろん三森と阿坂のことだ。
「なずなちゃんに言われてここに来たんだけど……」
そのとき、さらに来客が。
「頼も~う!……うおっ、スカーレットプリンセス!」
そう言って入ってきたのは、最宮静春だ。
「本名教えたはずだけどなぁ~、しずちゃん?」
「しずちゃんやめろ!」
ラインファイトで顔を合わせることも多いのか、朱伽と静春は以前よりも仲良くなっているようだ。
「久しぶり、最宮君」
巧も声をかける。
「ああ、うん。……ちょっと目付き変わったな。多少は戦えるようになったか?」
「あはは、まだまだだよ」
「お待たせしまし――あれっ!増えてるっ!」
お茶を持ってきた陽芽。
「あ、紹介するよ。最宮静春君」
静春にも、陽芽と白宗を紹介する。
「よろしくお願い致します。お茶追加してきますね」
「……いい目をしてるな。仮子だ。よろしく」
「最宮君もなずなに呼ばれて?」
「ああ、そうだ」
「お、全員そろったようじゃのぅ!」
遅れてやって来たのは、特徴のあるしゃべり方をする女子高生。
「なずなっ!」
「久しぶりじゃの、巧。おぬしがいない数週間、ゲームの対戦相手がいなくてのぅ……」
なずなの後ろには、かなめもいる。
「かなめも久しぶり」
「巧……たくましくなった」
巧が笑顔でありがとうと返すと、かなめは恥ずかしそうにうつむいた。
「朱伽、静春、わざわざ来てもらってすまんの。一緒に戦う者同士、顔合わせも兼ねて今後のことを話そうかと思ってな。まずは陽芽が戻ってからにしようか」
「お待たせし――また増えてるーーっ!」
道場内で、みんなが円になって座る。
「さて、始めようかのぅ」
なずなが話し始めたとき、
「あたしもまぜてもらえる?」
さらに来客が。
長い金髪をサイドで結んだ女の子。
「ティネっ!」
真っ先に叫んだのは静春だった。
かなめと朱伽が構え、巧となずなは落ち着いてはいるが、警戒は解いていない。
「え?敵?」
白宗と陽芽はきょとんとしていたが。
「ティネ、戻ってき――」
「近づかないでっ!……勘違いしないで、最宮。あたしはオロチ側の人間。あんたとは敵同士よ」
冷たく言い放つパルティネに、静春は何も返せずに足を止める。
「で、何の用じゃ?まさか、おぬし一人でわれらを葬りにきたか?」
「まさか。宣戦布告にきたの」
パルティネが、一枚の紙をなずなに渡す。
「場所と時間はそれに書いてあるから」
「拒否した場合は?」
「街がいくつか消し飛ぶかもね」
世界中の核弾頭の制御を掌握していると言われているオロチにとって、そんなことは容易いことだろう。いや、そんなものを使わなくても、オロチなら五行の力だけで実行できてしまう。
「……わかった」
なずなが頷くと、パルティネは満足そうに微笑み、黒い霧の中へと消えた。
「まさか、むこうから来るとはのぅ」
「坊主も嬢ちゃんもそれなりに戦えるようになった。が、中途半端で倒せる相手じゃねぇ。まだ時間が欲しかったが……いや、時間はどんなにあっても足りないか……」
白宗が、珍しく真面目な顔で考え込んでいる。
「じゃが、行くしかあるまい。スサノオとしての力と、玄十郎殿の言葉を信じよう」
「巧、いける?」
かなめが巧に声をかける。
「……緊張する……」
「巧、陽芽、自分を守ることに専念して。攻撃はボク達がやる」
かなめが頼もしく見えた。
「……静春も覚悟を決めなさい。さっきの子と戦えないなら、来ない方がいい」
「朱伽……」
静春が深呼吸。急に立ち上がった。
「行く。オロチに負けっぱなしってのも嫌だしな!」
静春に、さっきまでの暗さはない。それを見て、朱伽もにっと笑う。
「さて、デートに遅れぬよう出かけようかのぅ」
なずなの言葉を合図に、全員が立ち上がった。




