82 大王派の決起集会
総漢国公会堂――
総漢国の都の中央部、官庁街と商業区との境に建つ巨大な公会堂である。
白い石を積んだ基壇の上には太い朱塗りの柱が並び、その上を黒瓦の大屋根が覆っていた。正面の広場から見上げれば、二階、三階の回廊にまで人影が連なり、開け放たれた窓からは熱気を含んだ声が絶え間なく漏れている。
普段は官府の説明会や商人組合の会合、宗教団体の講演などに使われる場所だった。しかし今日ばかりは、そのいずれとも異なる空気に包まれていた。
数千人の人間が集まっていた。仙人はもちろん、天狗や河童、荼枳尼、乾闥婆等の亜人や鳳凰、麒麟、四神が人形に化けたものもいる。
会堂の中央には板敷きの大きな演壇が設けられ、その周囲を幾重もの座席が取り囲んでいた。座席へ収まりきらなかった者たちは壁際や通路に立ち、二階の回廊から身を乗り出す者までいる。
官人の朝服を着た者、農村から出てきたらしい粗末な衣の者、商家の紋を染め抜いた羽織を着た者。身なりも種族も立場も違う者たちが、この時ばかりは同じ演壇へ顔を向けていた。
乾闥婆たちの翼が動くたびに淀んだ空気がわずかに流れ、荼枳尼たちは獲物を探す時のような鋭い目で弁士たちを見つめている。人形に化けた鳳凰や麒麟、四神たちは、正体を隠している者もいれば、種族を示す意匠をあえて衣へ取り入れている者もいた。
「奸臣追放」
「尊王討賊」
会場の外には過激なスローガンの幟が多数あった。
黒々とした文字が記された幟は、公会堂の正門から広場を抜け、近隣の大路にまで連なっている。風が吹くたび、長い布が音を立ててはためいた。
「公民連合」と記された腕章を巻いた者たちが広場の各所に立ち、参加者を誘導している。そのさらに外側には、この集会を監視しているらしい官吏や警察官の姿もあった。
しかし、彼らは公会堂へ近づこうとはしなかった。
下手に取り締まれば、何が起きるかを知っているからである。
弁士たちが口々に演説する。
最初の弁士が拳を振り上げると、壇上の背後に並んだ幟が一斉に揺れた。
「今の政府は畏れ多くも大王殿下へ公然と反逆する輩がいる!重税で民を苦しめる政府を替えねば我々の未来はない!」
重税への不満を訴える言葉に、粗末な衣をまとった民衆から特に大きな歓声が上がる。
この場にいる者の多くは、実際に重税によって暮らしを圧迫されていた。田畑を手放した者もいれば、税を納めるために家財を売った者もいる。
その怒りが誰へ向けられるべきかについては、人によって認識が異なっていた。
しかし今は、壇上の弁士が指し示した「政府」という曖昧な敵へ、全ての不満が流れ込んでいる。
別の弁士が前へ出る。袖を大きく払い、会場全体を睨みつけるようにして叫んだ。




