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第一章・登場人物紹介

第一章は完結しましたが、少し登場人物が多い話ですので、混乱回避のために登場人物紹介回を設けることにしました。

前田弘貴(まえだこうき)


二十三歳の元サラリーマン。本作の主人公であり、異世界から召喚された「素王」である。


非正規労働者の両親を持つ貧しい家庭で育ち、自分にあまり自信を持てないまま会社員として働いていた。魔王討伐の名目で異世界へ召喚されるが、実際には女性皇太子・彩比売殿下の夫候補、すなわち将来の男性皇后候補として政争へ巻き込まれることになる。


突然の召喚、麒麟や鳳凰との出会い、荼枳尼との遭遇など、常識では考えられない事態に次々と放り込まれながらも、意外なほど冷静にツッコミを入れられる性格である。一方で、自分を召喚した者たちの思惑や、佐藤綾子への劣等感に振り回される面がある。


第一章では、華麟と美凰から正式な聖別を受け、二人の主君となった。純仙としての肉体と霊力を得たばかりであり、現在は山中の庵で政治・異種族・霊力の扱いを学び始めている。


華麟(かりん)


総漢国に属する女性の麒麟。前田弘貴を召喚した張本人の一人。


明るく人懐っこく、前田を心配してすぐ世話を焼く性格。美凰と比べると感情表現が豊かで、前田への好意もかなり隠しきれていない。前田を単なる政治の駒としてではなく、一人の人間として大切にしようとしている。


華麟の最大の目的は、前田を彩比売殿下の夫にし、彩比売殿下が女系の法皇として即位できる道を支えること。魔王討伐そのものも否定してはいないが、彼女にとっては帝国の血統と皇位継承をめぐる政争の方が優先順位の高い問題である。


第一章では前田を背に乗せて追手や荼枳尼から逃がし、正式な聖別を行い、霊力訓練では感覚的で優しい指導を担当した。前田から思念で「可愛い」と伝えられた時には、完全に動揺していた。


美凰(みおう)


総漢国に属する女性の鳳凰。華麟とともに前田弘貴を召喚した人物。


冷静で実務的、口調も厳しいため一見すると冷淡に見える。しかし、前田を危険から遠ざける判断は早く、訓練でも妥協を許さず、彼を生き残らせることを真剣に考えている。華麟とは古い付き合いであり、よく言い争っているが、互いに信頼している関係。


総漢国大王・尚英を支持する大王派の鳳凰であるが、尚英が重税によって民を苦しめる暗君であることも理解している。それでも、大王を武力や政略で取り替える泰鳳の動きは、帝国の秩序を崩し、魔王につけ入る隙を与える危険なものだと考えている。


第一章では、荼枳尼との遭遇時に即座に撤退を決断し、前田へ異世界の制度と政治状況を教えた。聖別後は前田の霊力訓練と体術訓練を厳しく指導している。前田から思念で挨拶を送られただけで赤面するなど、意外と照れやすい一面もある。


佐藤綾子(さとうあやこ)


二十八歳。前田弘貴と元の世界で面識があった女性で、もう一人の素王。


育ちの良い令嬢であり、自信が強く、我がままでもある。しかし、その我がままを通すために努力を惜しまない人物でもある。前田を男として見ることはできず、過去には彼の好意を断っていりが、完全に嫌っているわけではなく、弟分のようには扱っていた。


泰鳳と杏麟によって召喚され、総漢国の大王交代に利用されようとしている。しかし本人は、ただ利用されるつもりではなく、異世界に来てすぐに政治、税制、仙術、生態系、庶民生活まで学び始め、租庸調の負担を軽くする代わりに市場取引へ課税するという税制改革案まで作った。


第一章では、尚英を倒すための傀儡にはならないと宣言し、尚英本人を見てから判断すると決めた。また、前田が別陣営の素王として召喚されていると知り、彼を侮らないよう杏麟へ命じている。


杏麟(あんりん)


佐藤綾子を召喚した女性の麒麟。


総漢国の大王家を交代させるため、綾子を素王として召喚した。泰鳳と同じ陣営に属しているが、泰鳳よりも綾子への肩入れが強く、綾子の意思や安心を優先しようとしている。


柔らかく上品な口調で話すが、綾子と尚英の対立、前田陣営との情報戦などを面白がっているようにも見える。綾子を単なる傀儡にはしたくないと言いながらも、彼女が大王位を狙うよう導いている人物。


第一章では、綾子の学習能力と政治への意欲を喜び、泰鳳が綾子の寝室へ近づこうとした際には、綾子の側に立って追い返した。また、前田・華麟・美凰・彩比売について情報を集める役目を引き受けた。


泰鳳(たいほう)


総漢国の鳳凰界を若くして率いる男性鳳凰。


尚英大王の重税と魔王討伐への失政を問題視し、総漢国を変えるために佐藤綾子を召喚した。表向きには魔王討伐のための素王召喚を主張しているが、実際には綾子を大王にすることが本音。


有能で冷静な政治家だが、自分の理屈を当然のものと考えがちな面がある。綾子の寝室で護衛しようとして強く拒絶されるなど、異世界人の男女観には十分に対応できていない。


美凰とは、若い頃から鳳凰として張り合ってきた関係である。泰鳳は美凰を体制側へ取り込まれた者と見ており、美凰は泰鳳を秩序を壊しかねない危険な改革者と見ている。


尚英(なおひで)


四十三歳。総漢国の大王。


魔王討伐を自らの使命と信じ、遠征や軍備へ力を入れてきた。しかし成果は上がらず、その費用を補うため重税を続けた結果、民を疲弊させ、鳳凰たちからも見放されつつある。


単純な悪人ではなく、魔王討伐への理想自体は本物。ただし、失敗を認められず、権力と名誉を守ろうとするあまり、国を苦しめている人物。


第一章では泰鳳を呼び出し、佐藤綾子を召喚した本当の目的を問いただした。泰鳳が綾子を自分に代わる大王として擁立しようとしているのではないかと、強く警戒している。


豊野直道(とよのなおみち)


豊野弾正大忠清海忌寸直道。総漢国の弾正臺(だんじょうだい)におけるナンバー3であり、実質的な現場責任者。


美凰と華麟による前田の無断召喚を捜査する立場にある。法を守るべき官吏として違法召喚を見逃すわけにはいかないが、美凰が大王派の有力な鳳凰であることも理解しており、実際には強硬な取り締まりが大きな政治問題になると分かっている。


真面目で現実的な人物だが、部下の軽口にはきちんと付き合う程度の柔らかさもある。第一章では、前田たちの隠れ家を捜索し、前田が腰布留山の荼枳尼の縄張りへ向かったらしいと知って、彼の無事を案じていた。


高松陽介(たかまつようすけ)


高槻連高松陽介。総漢国弾正臺に勤める官吏。


豊野直道の部下であり、違法に召喚された前田弘貴を追う立場にある。しかし、弾正臺だけで麒麟や鳳凰を本気で拘束できるはずがないこと、総漢国そのものが前田を本気で捕らえようとしていないことを見抜いている。


軽口を叩くことが多く、政治の裏側を茶化すように語るが、状況の本質を理解する観察眼がある。前田と綾子、どちらが生き残り、どちらが国益にかなう存在になるかを見極めて、後から付き合えばよいという現実主義者でもある。


第一章では枝野利久と語り合い、弾正臺には前田を逃がすための深慮遠謀などなく、単に成り行き任せであることを明かした。


枝野利久(えだのとしひさ)


枝野民部小丞日下部朝臣利久。民部省に勤める官吏。


金、税、戸籍を扱う民部省の立場から、佐藤綾子の生活や政策案に振り回されている。明るく話しやすい性格で、高松陽介とは軽口を交わす間柄。


綾子が提案した間接税を含む税制改革案について、最初は突拍子もないものとして受け止めた。しかし、上司である小室民部卿がその案に関心を示したことで、綾子の改革案が単なる思いつきでは済まなくなることを察する。


第一章の終盤では、市場で出会った朱雀の紅蓮鳩女を自宅へ連れて帰ることになった。


小室通衡(こむろみちひら)


小室民部卿滋野朝臣通衡。総漢国民部省の長官。


穏やかに見えるが、徴税を担当する官僚らしい冷徹な現実感覚を持っている。佐藤綾子の間接税案について、農民への過重な租税を減らせる面よりも、不作の年でも都市部から安定して税を取れる点に強い関心を示した。


松野好古(まつのよしふる)


弾正臺に属する官吏です。


豊野直道の命令で前田たちの逃走経路を追ったが、麒麟と鳳凰を相手に追跡を成功させることはできなかった。


口数は多くないが、腰布留山が荼枳尼たちの遊び場であることを思い出し、異世界から来たばかりの前田が危険を理解しているのかと心配している。


彩葉(あやは)


腰布留山周辺で狩りをする女性の荼枳尼。


巨大な白狐を従え、野山を自由に駆け回る狩人。美しく野性的な姿を持ち、柔らかな口調で話すが、仙人の肉を食べたことがあると平然と言うなど、人間とは異なる価値観を持っている。


第一章では、白狐たちとともに前田・華麟・美凰を追い詰めた。帝国の法律があるため人間を食べないとは言うものの、前田の「異世界人の匂い」に強い興味を抱き、また会える気がすると不穏な言葉を残す。


その後は狩猟仲間の禹菜とともに小屋へ戻り、前田が違法に召喚されたもう一人の素王らしいと察している。


禹菜(うな)


彩葉の姉貴分にあたる女性の荼枳尼。


狩りを好み、とくに強い生き物を捕まえることを趣味にしている。ただし本人によれば、捕らえた相手は基本的に逃がす「キャッチアンドリリース」派。


第一章では、青龍の広海を檻に入れていた。広海をからかいながらも最終的には彩葉に命じて解放し、彩葉から前田の存在を聞いて興味を示した。


権力や政争にはあまり関心がなく、腹が満たされ、楽しく狩りができればよいという荼枳尼らしい価値観を持っている。


広海(ひろみ)


青龍族の若者。


青龍族の長である蒼龍真君のはとこの三男という、本人いわく由緒ある血筋の持ち主。しかし、暇だったため山をうろついていたところを禹菜に捕まった。


強気な口調で自分が四神の一員であることを主張するが、荼枳尼二人にからかわれるとかなり怯える。第一章では、龍の肉の鍋にされるのではないかと本気で怖がっていた。


彩葉に檻から解放された後、荼枳尼たちが魔王側ではないことを政府や素王へ伝えるよう頼まれている。


紅蓮鳩女(ぐれんはとめ)


朱雀の若い女性。


まだ人間の姿には変化できず、普段は鳩の姿を取っている。しかし他心通のような形で会話ができ、火を吐くこともできる。


都で働いて出世したいという強い向上心を持っている。姉の紅蓮鷹女が人皇に聖別されて側近となったため、自分にも同じような可能性があると信じている。


第一章では市場で枝野利久と出会い、家事をすると言って押しかけるように頼み込み、最終的に枝野の家へ住み込むことになった。勢いと愛嬌で周囲を巻き込む人物。


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