106 姉妹の会話
人皇宮の回廊で紅蓮鷹女はいつも通り人の形になりながら絵を描いていた。
白い石畳の続く回廊からは、人皇宮の庭園が広く見渡せる。池では蓮の葉が風に揺れ、その上を赤蜻蛉が飛び交っていた。
回廊を行き来する官人たちは、色材を広げた鷹女の横を慣れた様子で通り過ぎていく。初めて人皇宮を訪れた使者だけが、赤や金に染まった白衣と、朱雀の血を混ぜた色材を見て驚いた顔をしていた。
鷹女の前に置かれた画布には、夕焼けに染まる山々と、その上を飛ぶ何羽もの鳥が描かれている。鷹女の筆は一度も迷うことなく動き続けていた。
鷹女は周囲を見ているのか、見ていないのか、容易に判断が出来ないところである。
そこへ一羽の鳩が飛んできて鷹女の肩に乗った。
「また鳩女ね。」
鷹女は鳩女の首に懸けてある書状を取る。
「ま、読まなくても内容はわかるけれども。」
すると鳩女は肩から飛び降りて朱雀の姿となった。
「お姉ちゃん、透視の神通力も出来るの!?」
「いや、単に全く同じ趣旨の書状が既に四通も来ているからわかるだけ。」
鷹女はあくまでも冷静に言う。
「そうなんだ。それでね、お姉ちゃん、私もお姉ちゃんみたいになりたくて総漢国の首都に暮らすことにしたの!」
「人の形になれないのに首都はきついんじゃないの?」
「大丈夫!もう仕事も住むところも見つけたから!」
「人の形になれないのに、何の仕事が見つかったの?」
「民部少丞の枝野さんの家で家事をするの!住み込みなんだよ!」
「それって、単なる居候じゃないの?」
「違うよ!住み込みの朱雀だよ!」
「まぁ、頑張ってね。で、久しぶりに鳩女に会ったからそういう話もいろいろしたいけれども、まずはこの書状の件ね。既に人皇陛下に聖別した私から聖別を受けたいって、この二人はどんだけ傲慢なのかしら。」
そう言いながらも、鷹女は何処か楽しんでいるかのようであった。
「前田さんも綾子さんも、少し無茶はするけれど悪い人じゃないよ!二人で力を合わせて瘴気を祓って、村の人たちを助けたんだから!」
「なるほど、鳩女がそういうならば悪い人ではなさそうね。」
「じゃあ、お姉ちゃん――」
「ええ、この話、受けてみるわ。」
「ヤッター!」
「呑気だね。人皇陛下に聖別した私が二人に聖別するって、どういう意味か分かってるの?」
「わからない!」
「・・・そうだと思った。」
そう言いつつ、鷹女は脳内で来るべき聖別の日とその後のことを考えていた。
「そうそう鳩女、今日は人皇宮でゆっくりしていきなさい。」
「人皇宮の鳩舎を使って良いの!?」
鳩女が朱雀の姿のまま目を輝かせる。
「そう言う意味のわけないでしょ!?」
もちろん、四神用の部屋も人皇宮にはある。鳩小屋に泊まらなくても朱雀の姿のまま鳩女は宿泊可能であった。
もちろん、四神用の部屋も人皇宮にはある。鳩小屋に泊まらなくても朱雀の姿のまま鳩女は宿泊可能であった。
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