101 乱の結末と現在
今度は三皇まで処刑されたと聞き、前田は声を上げずに息を呑んだ。
法皇だけでなく、天皇、地皇、人皇の正統性までもが戦況によって覆されている。どちらかが帝都を占拠するたび、昨日まで国を治めていた者が今日には謀反人となるような内戦だったのだろう。
対抗法皇側も強かったように言っているが、前田はもう察している。対抗法皇という一般名詞で呼ばれ諡号がない時点で、歴代法皇から除外されているのは確実だ。
勝者が一度は帝都を失い、敗者が一度は帝都を取り戻したとしても、最終的に誰が歴代の君主として名を残したかは別の問題である。対抗法皇に固有の名が与えられないという現在の呼び方そのものが、後世の朝廷による判定を示していた。
「最終的には法王と伯王と斎王が連名で淳宏法皇に反逆者を赦すように説得し、それがきっかけで和睦が成立したのです。対抗法皇は隠棲し、鳳凰や麒麟も一部が解官や官当の処分を受けただけで済みました。」
綺凰はそこで一度言葉を切り、冷めかけた茶を口へ運んだ。
長く続いた戦争を終わらせたのは、どちらか一方の完全な勝利ではなかった。法王、伯王、斎王という、法皇や三皇とは異なる権威を持つ三者が間へ入り、淳宏法皇に赦免を受け入れさせたのである。
鳳凰側のナラティブにやや偏っていることは前田には分った。処罰が寛大であったとはいっても、実質的には彼らは敗北したのだろう。官当、つまり位階剥奪になった時点で和睦と言うにはほど遠い。
対抗法皇が退位ではなく隠棲を求められ、後世には法皇として数えられていないことも、その見方を裏づけている。鳳凰や麒麟が全く処罰されなかったわけでもなく、官人としての地位を失った者もいた。
ただ、正式に謀反や謀叛といった八虐に該当する罪で裁かれると官当のような閏刑では済まない。その意味では鳳凰や麒麟に寛大な処分が下ったのも嘘では無かったのだろう。
もし彼ら全てが反逆者として裁かれていれば、死刑や一族に及ぶ処分を避けることは難しかったはずである。官当で済ませたということは、朝廷もまた、鳳凰と麒麟を力だけで服従させることはできないと認めたことになる。
「そして法王と伯王、斎王の働きかけで鳳凰や麒麟の自治権の大幅な拡充が認められ、鳳凰王と麒麟王とが親王や大王、素王と明確に対等な帝国の制度として確立したのもこの時なのです。」
綺凰はこのように述べたが、現実にはこれまで仙人を含む人類が不干渉としていた鳳凰や麒麟の社会が帝国の秩序に明確に取り込まれた時でもある。確かに法的な保証はこの時が初めてであるが、その実態は法で枠を定める必要があると認識されたからに他ならない。
前田が最初に口にした疑問への答えも、そこにあった。




