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笑いと不条理の瀬戸際にある革命『笑いと狂気の革命』  作者: 毒 りんご
第六章:『芸術部のバンカー』
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『インサイダー・アウトサイダー』

「ちょっと待って、どうして私があなたを手伝わなきゃいけないの、桐原?」とメネミが憤慨し、腕を組んで、まるで中学部の生徒会長ではなく自分の個人的な敵そのものを見るかのような目で彼を睨みつけた。「あなたは中学部でしょ。あなたにはあなたの用事があるし、私には私の用事があるの。それにそもそも、私は誰にも何も義理なんてないからね!」


「どうやら脱線しすぎたわね」とアヤネが指で机をトントン叩いて注意を引いた。その音は鋭く、ほとんど銃声のようだった。「投票しなきゃ。ピーク時の市場で値切ってる場合じゃないわ。ここはバンカーがかかってるのよ、就職フェアじゃないんだから」


「姫宮、あなたは所持品を見せなかったわね」とヒカリが目を細めて言った。その声には鋼鉄のような響きが混じっていた。「私、言ったわよね。開かなかったらあなたに投票するって。言葉は守る。約束は覚えてるの」


「公正だな」と桐原がうなずいた。彼の声には疑念の欠片もなかった。まるで判決を下すかのように話し、その判決は最終的なものだった。


「おい…」とメネミは私たちを見回し、支持を求めたが、どうやら誰も彼女の味方はいないようだった。彼女の視線は顔から顔へと逃げ場を求めてさまよったが、どこに行っても冷たい壁にぶつかるばかりだった。


「姫宮、今回は引き分けを避けられないわ」とアヤネが手を広げて言った。「あなたは少数派よ。諦めなさい。それが現実なの」


「わかったわ」とメネミは突然背筋を伸ばし、何か重大な決断を下したかのように、桐原を指さした。「桐原、あなたが一番役立たずよ!あなたの発電所はいいけど、壊れたら誰が修理するの?あなた?あなたは主婦でしょ、エンジニアじゃないわ」


「生徒会にいる者を全員沈めようってわけか?」とケイが声を上げた。その口調には軽い嘲笑が混じっていた。「面白い展開だな。まるでどんでん返しのサスペンスドラマだ」


「それがどうしたの?」メネミは視線をアヤネに移した。その目には共謀者の炎が灯っていた。「文音、桐原に投票しましょうよ。一緒なら強いわ。彼らは私たちを嫌ってる——私たちも彼らを嫌ってるの」


「パス」と私は言った。


全員が私を見つめた。


「え?」とヒカリは危うく椅子から飛び上がりそうになった。彼女の銀色の髪は興奮した鳥のように舞い上がった。「なんで姫宮に投票しないの?彼女は…彼女は明らかにブラフしてるじゃない!」


「黙っていれば、それはすべてを語っている」と私は言った。声は平坦にしようと努めたが、内側はすべてフォークに刺されたゼリーのように震えていた。「余計者であるという技、私のように。時折、さっと傍へ退く術。部外者でいる術」


私はこれらの言葉がどこから頭に浮かんだのかわからなかった。それらは湖の深みから上がってくる泡のように浮かび上がり、私が考える間もなく口から飛び出した。かつて読んだ詩の記憶かもしれない。他人の形を借りた自分自身の考えかもしれない。あるいは、この瞬間に意味を持ったたまたまの言葉の羅列かもしれない。


ケイが静かに拍手した。一回。二回。彼の顔は仏像のように無表情だったが、その目には承認にも似た何かがちらついた。あるいは理解。あるいはその両方。


「…」とアヤネは口を開け、そして閉じた。「完全に理路整然としているわ。反論できない」


「アリサ…」とヒカリが言いかけたが、私は言い終わらせなかった。


「何の詩だ?」と桐原が眉をひそめて尋ねた。「わからなかった。俳句か?短歌か?君たちの文学の何かか?」


何が大地を継承することだろう。それは忍耐を尽くすことだ。


私は黙っていた。これが何の詩か説明しなかった。ただの私の考えだ。自分でも完全には理解できていない考えを、どうして説明できるだろう?


「哲学はもういいわ」とメネミが私たちを現実に引き戻すように言い放った。「ケイ、誰に投票するの?」


「桐原」とケイは素早く、考える間もなく答えた。


「おい、なんで即答で俺なんだよ?」と桐原が手を挙げて抗議した。「俺が何をしたって言うんだ?俺は役に立つんだぞ!発電所を持ってるんだからな!」


「姫宮が脱落すると、彼女は落ち込んでポスターの出来が悪くなる」とケイは石のような顔で説明した。まるで窓の外の天気について話しているかのように。「ポスターは急いでいるんだ」


「あはは!」とアヤネは膝を叩いて笑った。「魂胆まる見えだな!これがわかるよ——明確な動機だ!政治は一切なし、ビジネスのみ!」


「魂胆まる見えね」とヒカリもうなずいた。「絵の具とキャンバスのために身を売ったのね」


「票の状況は?」とアヤネは本題に戻った。


「二対三」とメネミが指で数えながら言った。「脱落するのは桐原」


「須咲探しの真雪を手伝ってきなよ」とアヤネはドアの方へ手を振って嘲笑した。「でも…彼がクラブにも入ってないのに、学校で何をしてるんだ?茂みの下に座って捕まるのを待ってるのか?」


「無駄なことに時間は使わないよ」と桐原は立ち上がり、ジャケットを整えて言い放った。「中学部はそれだけで手いっぱいなんだ。君たちの容疑者なしでもね」


「いい考えだな」とアヤネは彼の背中を見つめながら言った。「でもどうして、四年も年上の連中がそれに気づかないんだ?その秘密は何だ?」


「誰がさらに脱落するか、最後まで見届けないのか?」とメネミが尋ねた。しかし彼女の声には疑問ではなく、むしろ驚きと混ざった確信が含まれていた。


「なぜ?」と桐原は戸口で立ち止まり振り返った。「明白だろう。結果は決まっている」


「ところで、私、考え直して、排除すべきは文音だと思うの!」とヒカリが突然宣言し、手のひらで机を叩いた。カードが跳ね上がるほどの音だった。


「はあ?」とアヤネと桐原が同時に叫んだ。


「一年生だけが残って、ちゃんと自分たちの中から一人を追い出すべきよ」とヒカリが説明した。その目には革命家がクーデターの直前に見せるあの熱い闘志が灯っていた。「先輩抜きで。純粋な実験。実践される社会の分離」


「それは非合理的だ」と桐原が首を振り、大学生に自明の理を説く教授のような様子で反論した。「文音はここで最も役に立つ人間の一人だ。ピストル、男性の生物学、警察官。彼女は生存のための理想的な候補者だ」


「それって差別じゃない?」とアヤネが手を挙げて抗議した。「年齢による?生まれた年による?学年による?それはある種の人種隔離よ!」


「それは『インサイダー・アウトサイダー』って呼ばれる原則よ」とヒカリは少しも動じずに言い返した。「私たち一年生は結束しなきゃ。一緒に生き延びるの。あるいは一緒に死ぬの」


「いいね」とメネミが不意に微笑んだ。その笑みには何か捕食者的なものがあった。「そろそろ秩序を正すべき時ね。あなたたちの指揮にはもううんざりよ」


「あなたたちは本当に…」と桐原が言いかけたが、遮られた。


「投票よ!」とヒカリが手を挙げて叫んだ。


ケイが手を上げた。私が手を上げた。メネミが手を上げた。ヒカリはもう手を上げていた。四対二。


「文音、脱落」とヒカリが総括した。


「次の、最後の投票でケイを追い出すと言われても驚かないわ」とアヤネは立ち上がり、自分のカードを束ねながら言った。「こんな社会に私たちは生きてるのよ。インサイダー・アウトサイダー、インサイダー・アウトサイダー…最初に先輩、次に他の人と違う者」


「それ、いいアイデアかもね」とヒカリが考え込むようにケイを見つめながら言った。その視線には、私を不快にさせる何かが含まれていた。


「むしろあなたを追い出す方が論理的じゃない、ヒカリ?」とメネミが飛びかかろうとする猫のように目を細めて尋ねた。「あなたはアルコール依存症で、卵のセット付き孵卵器を持ってる。バンカーで何をするつもり?ヒヨコを育てるの?それとも米から密造酒を醸造するの?」


「論理的だと?」と桐原は嘲笑した。その嘲笑には楽しさよりも苦さが多く含まれていた。「お前たち、自分の言ってることがわかってるのか?ふざけてるのか?これはもうゲームじゃない、まるで茶番だ!」


「さっさと行けよ」とアヤネは桐原に手を振り、振り返りもせずにドアへ向かった。「行くぞ、会長。ここで仲間割れの邪魔をするな。彼ら自身に決めさせろ、誰が救われるに値するかなんて」


彼らは去った。ドアは静かだが決定的な音を立てて閉まった。


部屋には四人が残った。私、ヒカリ、メネミ、ケイ。


「最終ラウンドよ」とヒカリが宣言し、カードを新しい山にまとめた。「開示する。最初は…ケイ」


ケイは健康カードを、見もせずに裏返した。まるでそこに何が書かれているか知っていたかのように、ボール紙を通して見えていたかのように。


「統合失調症」と彼は言った。


「ぷっ」とメネミが鼻で笑った。しかし彼女の目には恐怖がちらついた——見せかけの無関心の裏に隠せないあの恐怖が。「これ、ゲームの中だけの話よね?」


「もちろん」とケイは穏やかに答えた。彼の顔はいつもと同じように無表情だった。感情の欠片もなく、冗談なのか真実なのかを示唆するものもなく。


「次は私ね」と私は自分のカードを手に取り、指が少し震えるのを感じながら言った。「私も健康を開くわ。盲目」


カードを裏返し、テーブルに置いた。


「特別カードを使うわ」と私はカードを抜き出しながら付け加えた。「『公開された全プレイヤーの健康カードをシャッフルする』。さあ、全部こっちに」


「そうくるか」とヒカリは引き延ばすように言い、ジャックポットを当てたばかりのディーラーのような様子でカードを集めた。


「盲目、アルコール依存症、ゲーム依存症、統合失調症」とヒカリはそれらを扇状に広げながら列挙した。「良い選択肢とは言えないわね。診断名ばかり。バンカーじゃなくて精神病院よ」


「なんか、私のゲーム依存症が一番マシな気がしてきたわ」とメネミは挑戦的な目で自分のカードを見つめながら言った。


「ざまあみろ」とヒカリは彼女の方に目も向けずに言い返した。


「いいわ、結果に関わらず、あなたを排除するからね」とメネミはヒカリに視線を移した。その声には脅しが混じっていた——静かだが、それゆえに一層恐ろしい。


「残念だけど、あなたの思い通りにはならないわ」とヒカリは肩をすくめた。それから突然眉をひそめ、頭から抜け落ちてどうしても戻ってこない何かを思い出そうとするかのようだった。「そういえば、文音が行っちゃったわね。彼女はあの『須咲』が現れないか監視するはずだったのに。もし現れたら、容疑者を生徒会に連行するって」


静寂。


響き渡る、濃密で、気まずい静寂。そんな静寂は、誰かが皆が考えていたけど口に出すのを恐れていたことを口にした時にのみ、部屋に訪れる。私たちは顔を見合わせたが、誰も一言も発しなかった。


「ねえ?」とヒカリが私たちを見回した。「どうしたの?」


「うーん…考え事」とメネミは歯切れ悪く呟き、目をそらした。


「なんで急に黙っちゃったの?」とヒカリが目を細めた。彼女の銀色の髪は、危険を感じた猫の毛のように、逆立っているかのようだった。


「ティックトックのネタを思い出したの」とメネミはあまりに早く答えた。


「ネタ?」とヒカリは身を乗り出し、彼女をその注意で押しつぶすかのように。「どんな『ネタ』?」


「ええっと…」とメネミは言葉に詰まり、その目は部屋中を走り回り、救いを探した。しかし見つけるのは壁とカードと私たちの顔だけだった。


「なに、すぐに忘れちゃったの?」とヒカリは追及をやめなかった。その声には嘲笑と疑惑が混ざっていた。


「違う、ただ…」とメネミは考え込んだ。そして彼女の視線が私に落ち、その目に狡猾なウサギが柵の抜け道を見つけた時のような輝きが灯った。「アリサ!ロシアにはどんなネタがあるの?」


ネタ?


ああ、やめて。これだけはやめて。


よし、落ち着け、アリサ。あなたならできる。ネタを思い出さなければ。普通のネタを。自分の国を代表するけれど、地元の人を怯えさせてしゃっくりを止まらなくしたり、国際的なスキャンダルを引き起こしたりしないネタを。


問題は、私たちにネタがないとか、冗談が言えないとかいうことではない。ただ、私たちのユーモアは…ちょっと違う。もっとブラックだ。もっとシニカルだ。もっと…ロシア的だ。それは外国人には理解されないかもしれない。特に、ストレートな不条理の直撃ではなく、繊細なほのめかしや含みを習慣とする日本人には。


楽観主義者と悲観主義者の話はどうか?「楽観主義者は英語を学び、悲観主義者は中国語を学ぶ。そして現実主義者はカラシニコフを学ぶ」。いや、それはダメだ。政治、武器——ユーモアの最初の紹介としては危険すぎる。私たち全員が銃を持って歩いていると思われかねない。


「なぜロシアの猫は四角いのか?ネズミを隅で折り曲げるからだ」というのはどうか?うーん…そんなネタで日本人を笑わせるのは無理だろう。ましてや彼らには四角いスイカがあるらしい。ちょっと待て、彼らは本当に四角いスイカを持っているのか?それともあのイルカが輪っかを跳ぶ写真のように、ただインターネット上の話なのか——実際には単に挟まってしまっただけなのに?日本人は変だ。それとも私たちが変なのか。わからない。


ロシアではこう言う:「テスト勉強はサウナに行くようなものだ。汗もかかず、赤くもならなければ、何もしてないってことだ」——「もし青くなったら?」——「隣の奴から写したんだが、そいつの答えには他人の名前が書いてあった」


あまりにも…馬鹿げている?あまりにも長い?それに日本の文化における「サウナ」とは何なのか?彼らは違う風呂の文化がある、温泉とか…わからないだろうな。


「アリサ?」とヒカリが呼んだ。私はもうあまりにも長く黙り込んでいることに気づいた。「そこで寝ちゃったの?」


「なぜロシア人はそんなにタフなのか知ってる?」と私は最初に頭に浮かんだことを口にした。一応普通のネタだ、中立的で、政治でも死でも武器でもない。たぶん。


「どうして?」とメネミが尋ねた。その目には純粋な好奇心が灯っていた。彼女は見せかけの偉そうな態度も忘れて、身を乗り出した。


「私たちはとても怠惰だからよ」と私は自信を持って話そうと努めながら言った。内側はすべて縮こまっていたけれど。「ドイツ人は芝生を手で刈らなくていいように芝刈り機を発明した。私たちはただ芝生を植えないって方法を発明したの」


メネミは一瞬固まった。


それから彼女の顔が歪んだ——私は彼女が泣き出すか、怒るか、もっと悪いことに、ロシア人は怠惰じゃなくて倹約家なだけだと証明し始めるのではないかと一瞬怖くなった——しかし突然、彼女の喉から次のような音が飛び出した:


「ぷふふふっ!」


彼女は笑った。礼儀正しくもなく、育ちの良い日本の女の子たちがするように手で口を覆うこともなく、本当に、大声で、心から、廊下のゴトーが笑ったのと同じくらいに。涙が出るほどに。


「何が…」と彼女は言いかけたが、笑いが彼女の言葉を遮った。彼女は何かを言おうとしたが、そのたびにまた笑い出した。


「いいね」とヒカリが言った。その声には承認にも似た何かが聞こえた。「いいね…全部はわかんなかったけど、面白いとは思う」


「あなたたちは芝生を植えないの?」とケイが聞き返した。いつもの無表情な声に…興味のようなニュアンスが混じっていた。「つまり、ただ地面をそのままにしておくのか?」


「基本的にはそうね」と私はうなずいた。緊張が少しずつ解けていくのを感じながら。「やらなくていいことに、時間と労力を費やす必要があるの?」


「哲学だ」とケイはうなずいた。まるで私が彼に世界の構造についての目を開かせたかのように。「それには一理ある」


ふう。どうやら乗り切ったようだ。


曹長と電球の話を始めなくて良かった。「電球を交換するのに何人必要なのか?五人だ。一人が椅子を押さえ、四人が椅子を回す」。このネタは多分誰も理解しないだろう。ロシアでも全員が理解するわけではない、軍隊経験があるか、軍隊のジョークを知っている人だけだ。


ところで、ケイも笑った。静かに、手のひらに隠して、しかし私は彼の肩が少し震えたのを見逃さなかった。仏像のような顔を持つ人間を笑わせるのは、ほとんど達成感があった。


「また脱線したわね」と私は話を元に戻した。


「ああ、そうだった」とヒカリは頭を振り、残っていた笑いの余韻を振り払い、再び真剣な表情に戻った。「子猫ちゃん。姫宮の所持品は子猫ちゃんだったのね」


「それが何か?」とメネミはまだ平静を保とうとしていたが、彼女の頬は燃えるように赤く、笑みを隠すために何度も顔をそらしていた。


「誰かが彼女には武器があるって言ってなかったっけ?」と私は天井を見上げ、できる限り無邪気な顔をして言った。「指さしはしないけど…」


「さて」とヒカリが机を叩いて注意を引いた。「投票ね」


「待って」とメネミが手を上げた。「子猫ちゃんだって資源よ。食べられるし、育てられるし、ただ撫でて士気を高めることもできる。結局、黙示録で大切なのは生き残ることだけじゃない、人間性を保つことも大切よ!」


「あなた、子猫ちゃんを食べるって言うの?」とヒカリは目を見開き、その視線には恐怖と怒りが混ざっていた。


「違うわ!でも万が一の時には…」


「二重の米があるバンカーで?」と私は言い返した。「万が一の時は来ないわ。まず米を食べて、それから子猫ちゃんのことを考えるの」


「投票よ」とヒカリが遮った。「姫宮を脱落させることに賛成の人は?」


私は手を上げた。ヒカリが手を上げた。


「ケイは?」とヒカリが彼を見た。


ケイは動かずに座り、前方の空間を見つめていた。彼の顔は何も表現していなかった——賛成も反対も、何も。


「ケイ!」とヒカリは声を張り上げて繰り返した。


「パス」と彼は言った。


「何ですって?」とメネミが驚いた。「投票しないの?ポスターの手伝いが必要なんじゃなかったの?」


「もう一度お前を助けた」とケイは彼女の方に顔を向けた。その目には疲れに似た何かがちらついた。「十分だ」


「二対一」とヒカリが総括した。「姫宮、あなたの脱落ね」


「でも…」とメネミは立ち上がり、彼女の椅子がガタンと後ろに倒れた。「子猫ちゃんはどうなるの?ポスターの手伝いは?それに…」


「もういい」とヒカリが手を上げて彼女を止めた。「ゲームは終わった。あなたは脱落よ」


メネミは私たちを見た。ヒカリを、私を、ケイを。彼女の唇は震えていた——悔しさからか、まだ完全に収まらない笑いの余韻からか。


「つまり、子猫ちゃんは役に立たなかったのね」と彼女は静かに言った。


「役に立たなかったわ」と私はうなずいた。


メネミはゆっくりと自分のカードを集め、束ねた。でも、立ち上がらなかった。彼女はただそこに座っていた——負けたプレイヤーが去るべきなのに、去らないでいる。まるでその椅子に根が生えたかのように。


「…出て行かないの?」とヒカリが尋ねた。その声には困惑と、ほんの少しの苛立ちが混ざっていた。


メネミは顔を上げた。その目は負けた人の目だった。悔しさと諦めと、それでもなお何かを燃やし続ける小さな火が混ざった目。


「どこへ?」と彼女は言った。「私が行く場所なんて、どこにもないのに」


沈黙。


私にはわかった。彼女が本当に言いたかったことが。クラブに入ったのは、ただ静かに電話をいじっていたかっただけ。誰にも邪魔されず、誰にも干渉されず、ただ自分の世界に浸っていたかっただけ。絵を描くことも、ポスターを手伝うことも、誰かのために何かをすることも——彼女はそれを望んでいなかった。ただ座っていたかっただけ。隅っこで。画面を見つめて。


でもゲームに負けた。ブラフは暴かれた。そして今——彼女は罰を受けなければならない。このバンカーゲームのルールは非情だ。バンカーに残りたければ、役に立たなければならない。


「絵を描くのを手伝え」とケイが突然言った。


メネミは彼を見た。


「ポスターだ」と彼は付け加えた。まるで説明が必要かのように。「お前は負けた。負けた者は支払う。俺のポスターを手伝え」


「私は絵なんて…」とメネミが言いかけたが、ケイは遮った。


「上手い下手は関係ない。手があればいい。赤い絵の具を塗るだけだ。ロボットでもできる。お前にだってできる」


メネミは口を開け、そして閉じた。言い返す言葉が見つからなかった。あるいは、言い返す気力がもう残っていなかった。


「私も手伝うよ」とヒカリが突然言った。椅子から立ち上がり、銀色の髪を揺らしながら。「どうせやることないし。それに、ただ見てるだけって退屈だしね」


「私も」と私は言った。


ケイは私たち三人を見渡した。その無表情な顔に、初めて——ほんの少しだけ——驚きの色が浮かんだ。


「全員で?」と彼は尋ねた。


「全員で」とヒカリがうなずいた。


ケイはしばらく黙っていた。それから、ゆっくりと、イーゼルの方へ歩いていった。赤いキャンバスの前に立ち、背を向けたまま言った:


「筆はそこの箱の中だ。赤い絵の具はバケツにある。床にこぼすな。乾く前にやり直しが必要になる」


私たちは立ち上がった。椅子が軋み、カードがテーブルの上に散らばったまま——ゲームの残骸、もう誰も見ていない廃墟。


メネミが最後に立ち上がった。重そうに、引きずられるように、まるで体が鉛でできているかのように。


「私、絵なんて描いたことないのに」と彼女は呟いた。


「今、覚えればいい」とケイは振り返らずに言った。


私たちは箱から筆を取り出した。ヒカリは一番大きな筆を選び、まるで武器でも手にしたかのように振り回した。私は真ん中の、扱いやすそうなやつを選んだ。メネミは一番細い筆を手に取り、それを指の間でくるくる回した——電話を弄る癖が無意識に出たのだろう。


「どこから塗るの?」とヒカリが尋ねた。


「好きなところから」とケイは言った。「どこでも同じだ。まだ何も描いてない。ただの赤だ」


そう、ただの赤。血の色。夕焼けの色。あるいは、何かの始まりの色。


私はキャンバスに筆を入れた。赤い線が伸びる——どこへ向かうのか、自分でもわからない線。ヒカリはその隣に、太くて大胆な線を引いた。ケイは黙々と、自分のペースで、キャンバスの別の場所を塗り続けていた。


メネミは立ったまま、筆を持って、キャンバスを見つめていた。


「早くしろ」とケイが言った。


メネミは深呼吸をした。それから、おずおずと、まるで初めて歩き出す幼子のように、筆をキャンバスに触れさせた。赤い点が一つ、白いキャンバスの上に浮かんだ。血の一滴のように。花の蕾のように。あるいは、ただの赤い点のように。


「それでいい」とケイが言った。


メネミはもう一筆、また一筆と、ゆっくりと塗り始めた。最初はぎこちなかったが、次第にリズムを掴んでいった。


私たちは無言で塗り続けた。誰も話さなかった。カードの話も、バンカーの話も、勝ち負けの話も——全部、赤い絵の具の下に埋もれていった。


窓の外では、東京の夕暮れがゆっくりと夜に変わろうとしていた。ネオンが一つ、また一つと灯り始める。遠くで電車の音が聞こえる。誰かの生活。誰かの物語。私たちの知らない何かが、そこでは動き続けている。


でもここでは——この小さな部屋では——ただ赤いキャンバスと、四つの筆と、四人の人間がいた。勝者も敗者もない。ただ、一緒に何かを作っている人たち。


「ねえ」とヒカリが突然言った。「これ、結構楽しいかも」


「まだ塗り始めたばかりだ」とケイが言った。「楽しいかどうかは、塗り終わってから判断しろ」


「ケイはさ」とヒカリが続けた。「なんでこんな大きなポスター描くの?誰のために?」


「誰かのためだ」とケイは短く答えた。


「その『誰か』って、須咲?」と私が尋ねた。


ケイは答えなかった。ただ、筆を動かし続けた。


メネミが小さく笑った。初めて、この夜——心からの笑いだった。嘲笑でも、皮肉でも、勝ち誇った笑いでもない。ただの、静かな、小さな笑い。


「みんな、変な人ばっかり」と彼女は言った。


「お前が言うな」とケイが言った。


私たちは笑った。大声ではなく、静かに。でも確かに、そこに笑いがあった。


バンカーゲームは終わった。勝者は誰なのか、よくわからないまま。でも私たちはまだここにいた。一緒に。赤いキャンバスの前で。


そしてそれが——たぶん——一番大事なことだったのかもしれない。

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