まずは、魔法の適正から
石畳がどこまでも続く、美しい街だった。
太陽に照らされた白い石造りの建物。
赤や茶色の屋根が並び、その窓辺には色鮮やかな花々が飾られている。
道の両脇には木製の看板を掲げた店が軒を連ね、そこかしこから威勢のいい呼び込みが響いていた。
「焼きたてのパンだよー!」
「甘い林檎はいかがですか!」
「今朝獲れた魚だよ!!昨日入荷した肉も旨いよ!!」
香ばしいパンの香り。
肉を焼く食欲をそそる匂い。
果物の甘い香りが風に混ざり、思わずお腹が鳴ってしまいそうになる。
その奥には、木樽を積み上げた大きな酒場があった。
「かんぱぁぁああああああいい!!」
昼間だというのに、酒場からは陽気な笑い声が響き渡っている。
ローブ姿の老人、
剣を背負った青年、
耳の長い女性、
背丈ほどある杖を持つ少女。
変わった服装の人々は酒を酌み交わし、店全体が生き物のように活気づいていた。
それはまるで、ゲームやアニメの中へ迷い込んでしまったような光景だ。
「いやっほぉおおおおおおおおいい!!!!」
そんな世界を目の前にして、オタクのセリナが黙っていられるはずもなかった。
「やばたにえん!!やばたにえん!!やばたにえん!!おほほほほほほほほ!!」
両手を広げ、謎の奇声を上げながら大はしゃぎしている。
そのあまりの騒音に、
(((((うるさい……)))))
ユキミ、ミキ、リコ、そして紫月とロメオまでが耳を塞いだ。
「……ウチ、あいつを黙らせてくるね。」
リコがタックルの構えをとった、その時だった。
「誰か助けて!!お金が!!私のお金がぁあ!!」
「「「「「「!?」」」」」」
街中に、張り裂けそうなほど悲痛な叫びが響き渡った。
「返して!返えしてよ!!」
声の方を見れば、七十五歳前後のお婆さんが目に涙を浮かべて、空に手を伸ばしている。
その先には……
「ズラかるぞぉお!!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
ホウキにチョンっとまたがった、可憐な魔法少女。
「ヒャッハー!!!」
とは程遠い、モヒカンのオッサン集団が空に浮かんでいた。
((((えぇ!?イメージとちがぁぁぁああああう!!))))
ホウキに乗って空を飛ぶのは、あんな世紀末に生きていそうなオッサンではないはずだ。
あまりに可愛さの欠けらも無い光景に、内心ガッカリしたユキミ、ミキ、リコ、セリナ。
((((いやいや、そんな場合じゃなくて……!!))))
先頭を飛ぶリーダーらしき男の手には、布袋が握られている。
どうやら、奴がお婆さんの金を奪ったらしい。
「孫へのプレゼントを買うの!!返してよぉぉお!」
「死にてぇのか、ババァ。」
「……っ!」
お婆さんの目から大粒の涙がこぼれそうになった、その瞬間だった。
ヒュッ
「「ガッ」」
「お、おい!!」
突然、後方を飛んでいた男の隣にいた二人が、同時に意識を失った。
力を失った身体が、四十メートルほど下の地面へ向かって落下していく。
しかし、
ポスッ。
「悪党は見逃せないな。」
落下してきた男二人を、ロメオがそれぞれ片腕で受け止めた。
彼の手には小石が握られている。
どうやら、この小石を弾いて気絶させたらしい。
「ねぇ、紫月。」
「はい。許せる行いではありませんね。」
タッ!!
紫月が地面を蹴った。
彼女の身体は、まるで羽が生えているように高く跳ね上がる。
そしてーー
シュッ
飛んでいるうちの一人のホウキに飛び乗り、男を手刀で気絶させた。
「な、なんだこの女は!!」
仲間の男共は散り散りに逃げようとする。
だが、
シュッ!!!
紫月が拳を空に放ち、凄まじい風圧が奴らを襲った。
「「「なッッ!?」」」
男共はあっけなくバランスを崩し、地面へと吸い込まれていく。
「ほら、仲間を助けておいで。」
その声と同時に、ロメオは抱えている二人の男を、
ボスゥゥッ!
頭から落ちていく男どもに向かって、投げた。
「「「ッぐぇぇ!!」」」
直撃。
ガシヤァァァアン……!!
男たちは誰も使用していないであろう、古びたテントへ突っ込む。
「「「……ッア」」」
ロメオの一撃で勢いが緩和されたおかげか、四十メートルもの高さから落下しても奴らは生きていた。
……かなり痛そうだが。
スタッ
「これは返していただきます。」
軽やかに地面へ着地した紫月は、男の手から布袋を取り上げると、そのままお婆さんのもとへ駆け寄った。
「く……そ……」
リーダー格の男は、悔しそうに右手を前へ突き出す。
そして息を整え、紫月に狙いを定めて口を動かした。
「ファイヤー……ボール……!」
すると手のひらに一気に熱が集中し、バスケットボールよりも大きな火の玉が生成されていく。
「あの、これを」
「お嬢さん逃げて!!」
「大丈夫ですよ。」
紫月が柔らかく微笑むと、
ガッ ジュッ
「ッ……」
ロメオが手刀で男を気絶させ、男の手の中の炎も素手で握りつぶした。
「……あら?」
「もう……火の塊が君を狙っていたんだよ?逃げようともせずに、どうしようとしていたんだい……」
「吹き消そうかと思っていました。」
「そりゃぁ、君ならできるだろうけれど……」
「?」
困ったように笑うロメオと、首を傾げる紫月。
「あ、そうです。お金を……」
「ありがとう……つ、強いんだねぇ。」
お婆さんはあんぐりと口を開けていた。
「いえ、大した相手ではありませんでしたので。」
「いやいや、大した相手よ!あのリーダーの男、S級賞金首の男よ!?」
「S級……ですか?」
紫月が目を瞬かせた直後、
パチパチパチパチパチッ!!
「「すげぇぇ!!」」
街中から、一斉に拍手が巻き起こった。
「ありがとう!!これで街が平和になったよ!!」
「ありがとう!!心からの感謝を!!」
「ありがとう!すごいのね!!」
「これ、受け取って!!」
そこらじゅうから、賞賛と感謝の言葉が贈られてくる。
中には花やコインを投げる人もいるほどだ。
「こ、これは……」
「あんた、この辺りの子じゃないから知らないんだね。あの男は有名な犯罪者なんだよ。ここの人間は何度も金や物を盗られたし、家族を殺された人だっている。だけど……あいつは強いから誰にも捕まえられず、止めることすらできなかった。そんな奴をやってくれたんだよ、あんた達は!」
「は、はぁ……」
お婆さんや周りの人間は瞳を輝かせているが、紫月にはイマイチ実感が湧かなかった。
そんな彼女の肩を、ロメオはチョンチョンとつつく。
「紫月、もう戻ろう。少し目立ちすぎているみたいだから……」
「……」
周りを見れば、倒れている女性が何人もいた。
熱っぽくする彼女らの瞳にはハートが宿り、輝く金髪の美青年の姿が映り込んでいる。
「ロメオさんって、罪な方ですね。」
「……それを言うなら、君を見つめたまま動かない彼らも心配だ。ほら、行こう。」
ロメオが紫月の手を取り、四人の元へ駆ける。
「みんな、もう戻ろうか。」
「「「「あーい……」」」」
四人は何故かテンション低く返事をすると、走るロメオの後へ続いた。
「お二人さん、ありがとうねぇー!」
背後から老婆の声が響く。
「「ふふっ……」」
ロメオと紫月は微笑みあった。
そして振り返らず、そのまま街の人混みの中へ消えていく。
タッタッタッ……
しばらく走り、人の気配が少なくなったところで。
リコが立ち止まった。
「ここのドアから帰ろう。ラン」
その瞬間。
ヒュッ
「へブッ!」
バサッ
リコの顔に、風に飛ばされた一枚の紙が衝突するのだった。
ーーーーーー
「ねぇ、佐々木さん。この話の主人公って、私らですよね?あらすじ読んでます?」
「大丈夫。これからは君たちのターンだから。」
「ほんとにぃ?」
セリナは訝しげに目を細めた。
「もう私たち、紫月さんやロメオが主役にしか見えないんですよ!!ねぇ!?」
「「「うんうん!!」」」
少し前に四人のテンションが下がっていた理由は、これだった。
実にくだらないことだ。
「あたしらの影が薄いぞ!!」
「ミキだって活躍したい!!」
「ウチの時代はいつ来るんだ!!」
おぉ、怖い怖い。
四人の猛抗議に、佐々木さんは困ったように笑う。
「でも君たち……正直、お金を盗った男たちに立ち向かう勇気はなかったでしょう。」
「「「「うっ」」」」
図星だった。
「仕方がないよ、君たちは平和な時代に生きる日本人なんだから。それに私としては、若い女の子がいかつい男に躊躇なく立ち向かう方がビックリかな。」
「「「「……」」」」
視線が、一斉に紫月へと集まった。
「え……?」
「言われてみればそうだね。飛んでくる火の玉を吹き消そうとする女の子を、僕は初めて見たよ。」
「だ、だって……あまり危ないものとは思わなかったですから……」
ロメオまで頷く様子に、紫月は心底不思議そうな表情だ。
そんな彼女を、佐々木さんは微笑ましそうに見つめる。
「紫月がそう大胆な戦法がとれるのは、やっぱり実力と経験が誰よりも飛び抜けているからだろうね。第一の世界で最強の君に、他の世界では適うものなんていないだろうよ。それは、ロメオ君にも言えることだけれど。」
「「……」」
「君たちの桁違いの強さには、今後の活躍を期待させてもらうね。さてさて……」
パンパンッ
佐々木さんは手を二回叩いた。
「お待ちかね!!魔法適性を見る時間だよ!!」
「「「「おぉ〜!」」」」
パチパチパチパチパチ
四人から拍手が巻き起こる。
「こちらの水晶に手をかざしていただければ、何と!!その人間の持つ魔法の因子が分かってしまうのです!!」
「わあぉ、信じられなぁい!でもどうしましょう!水晶の姿が見当たらないわぁ!」
セリナが乗ってきた。
どうやら、ネットショッピングをイメージしているらしい。
「チッチッチ。まずは、この何でも収納出来る鞄から水晶を取り出すよ!!」
「わあぉ、その鞄の方が気になるかも!!」
「ジャジャン!」
佐々木さんが取り出したのは、いたって普通の丸い水晶だった。
「では助手のセリナちゃん、ここに手をのせて!」
「まー!なにが起こってしまうというの〜!」
セリナが水晶に触れた、その瞬間。
ブワァアアン!
眩い光が、水晶から放たれる。
赤、青、黄、そして白。
四つの色に、光は変化を繰り返す。
「目がー!」
セリナは目にダメージを負った。
「ごめんごめん、忘れてた。みんなこれをつけて。」
佐々木さんが鞄から、サングラスを取り出す。
本当に何でも取り出せそうな鞄だ。
スチャッ
全員が装着を終えると、佐々木さんは続きを始めた。
「ふーむ。セリナちゃんは、火、水、土、光に適性があるね。」
「えっ!それって、結構多い方じゃないですか!?」
「平均の因子の数は三個だから、ちょびっと多い方だね。」
「えー……」
「でも青い光が強かったから、水魔法の適性は凄く高いよ。それに、光の属性を持っているのはかなりレアだ。しかも魔力量は多いし……やっぱり、変わっている子は魔法の適性が強い傾向にあるね。」
「なんで最後にディスったんですか?」
「じゃあ次、ユキミちゃん。」
「ん?」
セリナとユキミが交代。
「なんか緊張する……」
ブワァアアン!
ユキミは赤、緑、黄色の光が放たれた。
「お、ユキミちゃんは土魔法の適性が強いね。火と風も適性はあるけれど……ユキミちゃんの性格的にも、土魔法が一番向いていると思うよ。」
「そ、そうなんですか……?」
「うーん……やっぱり、魔力量が多い……」
「やっぱり?」
「はい次、ミキちゃん。」
「あたしはツッコミです!!」
「?」
ミキへと選手交代。
「ミキは魔力量少ないかもなぁ〜!マトモだし!」
(((ナイナイ。)))
ブワァアアン!
ミキは赤、青、緑、黄色だった。
「凄い。ミキちゃんは四大元素の全てに適性があるから、オールラウンダーに戦えるよ。」
「オールラウンダー?」
「うん、魔力量も多いね。予想通りだ!」
「オールラウンダーってどういう意味?」
「はい次、リコちゃん。」
「誰か教えてよ!!」
暴れるミキは紫月が抑え、リコへチェンジ。
「ウチ、そもそも魔力あるかな?」
(((なかったら空を飛んであげるよ……)))
ブワァアアン!
リコは赤、青、黄、緑、黒の五色だった。
「おー凄い!四大元素の全てに適性があって、さらに闇魔法まで使えるよ!魔力量は省略でいいね!」
「闇魔法ってのがめっちゃ気になるんですけど。危ないヤツじゃないの?」
「ダイナマイトや麻酔と同じで、使い方次第だよ。まぁ使うにはちゃんと勉強と練習がいるし、あんまりいい顔はされないけど……」
「えぇー!ウチの時代が作れないじゃん!」
「では次、ロメオ君。」
「ビビデバビデブー!」
リコと入れ替わったロメオ。
彼は、あまり乗り気ではない様子だった。
「なぜか嫌な予感がする……」
ブワァアアアアン!!
「「「「目がー!!」」」」
ロメオが手をかざした瞬間、サングラスでは防ぎきれないほどの光が一同の目を襲った。
「す、凄い……!!これほどの魔力があれば、魔法では敵無しだよ!純粋な魔力量だけでいえば、私とそう変わらないかもしれない……」
「は、はぁ……」
「しかも属性は火、水、風、土、光、闇の全てに適性がある。チート系漫画で主役を張れるポテンシャルだよ!」
「そんなことを言ったら……!」
その時。
「ほーら、やっぱりロメオが主役なんだって。」
「ようやくミキたちの出番だと思ったのに……」
「ウチらの存在ってなんなのかな……?」
「私らはサブキャラなのよ……」
(やっぱり……)
ユキミ、ミキ、リコ、セリナが、なにやらブツブツと呟き始めた。
ロメオは溜息をつきながら、佐々木さんに視線を向ける。
「どうして余計なことを言うんですか。」
「ご、ごめん……つい興奮して……」
「……早く、紫月の適性を見てあげてください。待ちきれないみたいですから。」
「そうだね……」
佐々木さんが紫月を手招きした。
「いよいよ君の番だよ。」
「は、はい。」
紫月は少し緊張した様子で、水晶に手を置く。
だが……
「………………あれ?」
水晶は、何も反応しない。
「もしかして、壊れてしまったのですか?」
「機械じゃないから、壊れるなんてことはないはずだけど……ちょっと失礼。」
「きゃっ」
突然、佐々木さんが紫月の手を握った。
「あ、あの」
「静かに。」
佐々木さんは目を瞑り、なにやら集中している様子だ。
「……なるほど、内側で流れているのか。」
「どういうことでしょう?」
「どうやら君の魔力は、自動的に君の肉体を強化しているようなんだ。」
「?」
パッと手が離れる。
「詳しい話はもう少し先でするとして、結論だけを伝えるね。」
「はい……」
「紫月には、魔力はあるけど魔法因子がなかった。つまり、魔法を使うことができない身体だった。」
「えっ……」
ガビーンッ
紫月の瞳から、急速に光が失われていく。
(魔法、使えないの……?)
彼女の心の中では、魔女っ子たちへの憧れが静かに涙を流していた。
「待って待って、話は最後まで聞くものだよ。」
「……?」
「確かに普通の方法では魔法が使えない身体だけど、何か補助する物があれば使えるようになるんだ。それは魔石だとかスクロールだとかあるけど、今日は時間がないから……次に異世界に行く時か、学校に入学してから説明するね。」
「「「「「「学校に入学?」」」」」」
佐々木さんは当然のように話すが、そんな話は初耳だ。
「うん。まずはリコちゃんが持って帰ってきた、この紙を見てくれる?」
ペラっ
異世界からの帰り際、リコの顔に張り付いた紙。
そこには、大きな文字でこう書いてあった。
“王立アルカディア学園 入学試験要項 ”
「みんなにはこの試験を受けて、アルカディア学園に入学してもらう。この学園には、第二の世界での重要人物がいるからね。試験と言っても、簡単な魔法と運動テストだから心配はいらないよ。魔法は私が直々に教えてしんぜよう。」
「「「「「「……」」」」」」
「名門校で夢のスクールライフ……やっぱり、異世界はこうでなくっちゃね!みんな楽しんでおいで!!」
((((楽しんでおいで!じゃねーよ!!))))
「何か意見と質問があれば受付けまーす。」
「「「「「「うーん……」」」」」」
一同はどこからツッコむべきか、何を聞くべきか考えた末……
スッ
ロメオが手を挙げた。
「この学園は、何を学ぶ場所なのですか?」
「科によるね。アルカディアは剣士科、魔法科、魔法剣士科の三つに別れていて、それぞれ名前通りのことを学ぶよ。確か……科は適正アリと判断された中なら、自由に選べたかな。」
「第二の世界の住民は、モンスター退治のためにアルカディア学園に入学を?」
「それもあるけれど……いい結果を残して、就職に有利になるためっていうのが一番だよ。戦闘能力が認められれば冒険者に、魔法への知識を認められれば研究職に、みたいにね。」
「僕たちは、学園に入学して何をすればいいのですか?」
「それは入学できてからのお楽しみ。」
「……」
スッ
次に、ミキが手を挙げた。
「楽しそうだけど……さすがにお店もあるし、学校に通う時間があるか分かんないです。」
「そこは空いた時間だけでダイジョーブ。何も卒業までしろって言うわけではないから、とりあえず入学さえできればいいよ。単位とか出席日数は気にしない気にしない。」
「そんな感じでいいんだぁ。」
随分軽いなぁ、とミキは思った。
スッ
リコが手を挙げる。
「これ……応募できるのは二十歳までって書いてありますけど、ウチらダメじゃないですか?」
「「えっ」」
「ん?」
何故か、紫月とロメオが驚いた顔をしていた。
「あれ、そんなこと書いてたっけな?」
「ほらここ。」
「あ、ほんとだ。」
リコが指さした場所には、小さな文字で“対象年齢 十五〜二十歳 ”と記載されている。
佐々木さんはちょっぴり、顔を顰めた。
「んー…………………………多分大丈夫。君らは若く見えるから、十七歳ってことにしておこう。」
「「「「あらまっ」」」」
十七歳。
四人はまだ二十代前半ではあるが、その響きにときめいた。
「いやー、十七歳かぁ!」
「ミキたちは可愛いから余裕よ!」
「ウチら若いねぇ!」
「セリナちゃん、十七歳!」
ーー若者のはずなのに、反応が妙にオバサン臭いのはどうしてだろう。
((ま、まさか大人だったなんて……))
その事実が、紫月とロメオには信じられなかった。
驚く二人を見て、佐々木さんが微笑む。
「この四人と学校に通えたなら、楽しいと思わない?」
「「!」」
「もう知っての通り、彼女らは大人だ。その大人があんなに楽しそうにしているんだから、子どもの君らだって、はしゃいでいいと思うよ。」
「「……」」
「責任ある立場の君たちが忙しいことはわかってる。だから、本当に時間が空いた時だけでいいんだ。彼女らと、学校に入学してみて欲しい。」
「「……」」
まだ佐々木さんへの警戒が抜けない紫月とロメオ。
その警戒心は、思い切り表情に出ていた。
「んー……」
だが、佐々木さんは優しく目を細めるだけ。
「君たちは戦争に出て、学校へ行けない辛い期間が長かったことを、私は知っている。だから……これからその時間を取り戻してくれたら、嬉しいかな。」
「…………わかりました。」
紫月は頷いた。
「紫月……」
「ロメオさん。」
そして、ロメオの目をまっすぐ見つめる。
「あまり警戒しすぎなくても、いいのかもしれません。この方からは、敵意を感じませんから。」
「それは……」
「それに私は、学校に行きたいです。お友達やロメオさんと一緒に、楽しい時間を過ごしたいです。」
「!」
ロメオは一瞬、大きく目を見開いた。
そして、
「……そうだね。」
朝露のように儚げに、美しく微笑む。
「頑張ったもんね、僕たち。」
「えぇ。」
こうして。
異世界救出の旅に、新たに加わった紫月とロメオ。
彼らの活躍は、これからも主人公(笑)たちよりも期待できることは間違いないであろう。
(次なる舞台は、アルカディア学園。果たして六人は無事に入学試験を突破できるのか。謎のイケメン、佐々木さんが話した「重要人物」とは一体何者なのか。四人の異世界学園生活が、今始まろうとしていた!…………ナレーションをするならこんな感じ?いよいよアタイらのターンよ!! )
((((((なに、あの笑顔……))))))
そっとセリナがほくそ笑んでいたのは、みんなにバレバレなのであった。




