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お昼の時間です  作者: ゴマサバ
第二の世界
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次に繋がる鍵



「「おぉー」」


水色やトランプ、ウサギで埋め尽くされた部屋。


机を囲み、三人は一枚の葉書を覗き込んでいた。



「できた!!」


「い、意外と上手いな……」



リコが得意げに掲げた葉書を見て、紫水は思わず声を漏らす。


紫水から頼まれた蓬(よもぎ)の葉を、彼女は見事に模写していた。


「紫水君、絵と歌ならリコにお任せだよ。私らの中じゃ、芸術系はリコが一番上手い。」


「ふーん……」


「リコ、紫水君風のウサギ描いてやりなよ。」


「おっけい!」


セリナのリクエストに、リコはスラスラとペンを走らせていく。


「できた!!」


「「おぉ!!」」


そこに描かれていたのは、ぱっちりとした瞳に、小さな鼻と口。


どこか気品まで漂う、紫水によく似たデフォルメうさぎだった。


「これなら緑田も喜びそうだ!」


紫水は嬉しそうに、葉書を見つめる。


しかし、リコは首を傾げた。


「緑田?」


「ほら、桐生さんに山まで護衛しろって頼んでくれた人だよ。」


「あーはいはい。珍しいね、セリナが名前を覚えてるの。」


「顔はカッコよかったのに、下の名前が“ よもぎ”って可愛かったから。」


「なるへそ。だからウチは葉っぱの絵を描かされたんね。」


「でも何で、緑田さんが葉書で喜ぶの?」


セリナの問いに、紫水は顔を綻ばせた。


「お前たちが山に行った後、緑田がオレの護衛をしていただろう。西の兵士が部屋に攻め入ってくるまで、オレは緑田と画集や川柳の話をしていてな。なかなか趣味の合う男だったから、帰ったら互いに好きな絵や句を葉書に書いて、送りあおうと約束したんだ。」


「「西の兵士が攻め入って来た!?」」


「なんだ、聞いていなかったのか。緑田は部屋に入ろうとした二十人ばかりの不届き者を、たった十五秒で全員斬り伏せたのだ!父上とロメオ兄様以外にも、あれほど強くて立派な男がいたとは驚いたぞ!」


「「へ、へぇ……」」


それで懐く紫水は、やはり紫十郎の息子と言うべきだろうか。


リコとセリナは乾いた笑みを浮かべた。


兵士相手に、十五秒で二十人。


あまりにも現実離れした数字に、二人の頭ではうまく情景を思い浮かべることができなかった。


「その凄い人に送る葉書の絵を、ウチが描いて良かったの?」


「たしかに。緑田さんは、紫水君が書いた絵が見たいんじゃないの?」


リコとセリナの言葉に、紫月は気まづそうに目を逸らす。


「オ、オレは……絵があまり得意ではないからな……。リコが描いた上手い絵の方が、緑田だって喜ぶだろう……?」


「えー!絶対にウチじゃなくて紫水君の描いた絵の方が、心がこもってる感じがしていいと思う。ウチだって、紫水君が描いた愛のある絵が欲しいし。」


「うーん……」


「描いてみなよ〜」


その時。


ダァァァン!!


「「「おわっ」」」


ドアが、非常に勢いよく開いた。


「お前たち、今日も紫水と遊んでやってたのか!!もうすっかり仲がいいなぁあ!」


「お帰りなさいませ父上!!」


現れたのは、二メートルはありそうな大男、紫十郎。


紫水は父の姿を見るなり、喜んで飛びつく。


「すまんな。一刻したら、また出らねばならん。それまでならお前と遊んでやれるが?」


「ぜひ、お願いします!」


満面の笑みを浮かべる紫水。


その笑顔につられ、紫十郎も豪快に笑うと、


ひょい。


軽々と息子を肩へ担ぎ上げた。


その姿はまるで、山のフドウだ。


「青と赤の娘!!お前たちはどうする!!」


「……」


紫水が、ジーッとリコとセリナを見る。


あの目はきっと、“ パパとの時間を邪魔しないで!”という目だ。


だからセリナは、苦笑いしながら立ち上がる。


「私らはもう帰ります。その前に、紫月さんとロメオに会いたいんですが……」


「あぁ。その二人なら、俺と共にこの屋敷へ戻ったぞ。半刻もすれば、また出かけるだろうがな。」


「ありがとうございます!」


二人は頭を下げ、小走りで部屋を出た。


「またお邪魔します!!」


「じゃあね、ウチの未来のダーリン!!」


リコの下手なウインクに、


「ひっ……」


紫水は顔を青くした。


「喜んでくれて嬉しい♡やっぱもうちょい……」


「リコちゃん行くよー。」


リコをズルズルと引きずっていくセリナ。


「私らが佐々木さんに頼まれたこと忘れてる?」


「あぁ、ごめん。紫月ちゃんとロメっちを連れてかなきゃだったね。」


少し歩いていたら使用人が見つかったので、紫月たちの居場所を尋ねた。


「お二方でしたら、一階右端のお部屋にいらっしゃいます。」


「「ありがとうございます。」」


教えてもらった部屋までたどり着き、リコが勢いよくドアを開ける。


ダァァァン!


「リ、リコさん?」


「急にどうしたんだい?」


部屋では、今日も美しい紫月とロメオがお茶を飲んでいた。


「なるべく早くしろって言われてるから、ちょっと失礼するねー。」


「「え?」」


セリナが二人の手首を掴む。


「リコ、合言葉をお願い!」


「おっけー!」


リコはドアを一旦閉め、


「lunch!!」


勢いよく開き直す。


「はい、いらっしゃーい。」


セリナはドアの向こう側へ、紫月とロメオを押し込んだ。


その先に広がっていたは……


「こ、これは何ですか!?」


「何がおきているんだ……!?」



真っ黒な空間の中で輝く、“ 虹色の道”が出現していた。






ーーーーーー








「私らは異世界人で、なんやかんやで全部丸く収まったってとこまで大丈夫?」


「「全く。」」


セリナの確認に、紫月とロメオは同じタイミングで首を振った。


二人はリコとセリナに半ば強引に連れられ、『ストロベリーローズ』へやって来ていた。


店内にはユキミ、ミキ、リコ、セリナ、そして佐々木が揃っている。


突然、見知らぬ世界へ放り込まれたというのに、二人は大声を上げて取り乱すことはなかった。


……いや。


正確には、驚きすぎて声すら出なかったのだ。


その後。


四人が異世界から来たこと。

11時〜14時の間で異なる世界を行き来しながら、各地で起こる問題を解決するよう佐々木さんから頼まれたこと。

その最初の世界が紫月とロメオの世界、通称“ 第一の世界”だということ。

“ 本来の世界線”だと紫月たちは“ いい未来”を迎えられなかったこと。


最低限の事情だけを説明し、現在に至る。


ロメオは店内をゆっくり見回した。


「ここが僕たちの世界とは違う場所だということは分かるよ。この部屋だけでも、見た事のない物ばかりだから。だけど急に連れてこられて……そのアバウトな説明だけで受け入れられる話ではないな。」


「私もロメオさんと同意見です。皆さんのことは信頼していますが……違う世界を繋ぐなど、得体の知れない力には少々警戒してしまいます。」


紫月は佐々木さんに視線を向けた。


今回、紫月とロメオを連れてくるように指示したのは彼だ。


「そんな目で見ないでおくれよ。その得体の知れない力で、君たち二人も、家族も、国民も救われたんだから。」


「「……」」


紫月は小さく息を吐いた。


「私たちに危険が迫っていたことは認めますが……その不思議な力で、他にどんなことをしたのか教えて頂けますか?」


「ふーむ。」


佐々木さんは少し考えて、頷く。


「君たち、この四人に何かおかしいと思うことはなかったかい?」


「「……」」


二人は顔を見合わせる。


「そういえば……」


ロメオが先に口を開いた。


「この四人は名字を名乗らなかったし、何度か家に帰れない日があったね。本来なら怪しむべきことなのに、何の疑問も抱かなかった。どうして今まで気づかなかったんだろう……」


紫月も頷く。


「言われてみれば……通常なら使用人の誰かが素性を調査するところですが、誰もそれを行っていません。私がどれだけ親しくしていたとしても、安全のために必要なことのはずです。」


そこで佐々木さんは、人差し指を自分へ向けた。


「それは私の仕業だよ。普通なら、素性も所在も分からないこの子達を、高貴な身分の君たちは傍に置いておけないだろう?そうならない為にも、私がちょっと干渉しておいたんだ。今はその干渉を緩めているから、君たちはおかしな点に気づくことができるんだよ。」


「「……」」


「あとは……記憶を共有。それと、君たちが戦った山が火事にならないように、前もって雨を降らせたりした。……私がやったのは“ その程度”かな。他にも何かやった気がするけど、あんまり覚えていないや。」


さらりと口にした内容は、とても”その程度”と呼べるものではない。


紫月とロメオの警戒心が、一段と高まった。



「あ、あの佐々木さん!」


リコが手を上げる。


「どうしたの?」


「もしかして、ウチらにも何かしました?今思えば、いつもなら名字から名乗るのに、何故か下の名前だけで自己紹介してました。」


「うん、私の仕業だよ。その方が早く親しくなると思ってね。」


「そんな理由で……?」


リコは目を瞬かせた。


(そういえば……)


ミキも、ふと思い返す。


(ミキは性格が変わってた気がするな……。紫十郎さんと墨男さんに、紫月さんの婚約のこととかで怒鳴ったけど……いつものミキならあんなことしないもん。言いたいことがあっても、あんなに怖い顔のオジサンには無理だし、墨男さんのことは見守るよ。)


彼女も自身の違和感に気づいたが、余計な亀裂を産みそうなので口を噤んだ。


次はセリナが手を上げる。


「はい、セリナちゃん。」


「佐々木さんの能力を教えてください。」


「何でもできるよ。“ 魔力”さえればね。」


「ま、魔力ですかぁぁああ!?!?」


途端、セリナの目がキラキラと輝き出した。

アニオタの血が騒いだらしい。


「あ、次の世界では“ 魔力”が君たちの魂に宿って、“ 魔法”が使えるようになるよ。」


「「「「魔法!?」」」」


「私が使うものとは違うけれど、みんなは“ 四大元素”の魔法を操って戦って貰うことになる。」


「「「「戦う……!?」」」」


何やら物騒な話に、四人は目を丸くする。


「今日はそのサポートをお願いしたくて、紫月とロメオ君を呼んだんだ。」


佐々木さんは二人に視線を向ける。


「この子達に、どうか君たちの力を貸してはくれないだろうか。君たちはどの世界に行ったとしても比類ないほど強い。必ずその力が必要になる時が来るはずなんだ。」


「それならば……」


シッッ!!!!


突如。


紫月が美しい右ストレートで、佐々木さんの顔を狙った。


パシッ


それを、佐々木さんは平然と受け止めて見せる。


「本気でないとはいえ、この一撃を受け止めたあなたは相当お強いはずです。その上、私たちには理解の及ばないほど不思議な力もお持ちです。なのに自分では戦わず、私とロメオさんに頼ろうとするのは何故ですか?」


「理由は簡単だよ。世界を繋ぐ“ 道”を出現させるのは、魔力消費がとても激しいからさ。正直、五分間出現させるだけでも疲れるんだよ。それを、11時〜14時の三時間維持。とても戦える余力はない。できることはせいぜい、ここから少しサポートと覗き見をする程度かな。」


「……失礼しました。」


紫月は拳をゆっくり下ろした。


(魔力等の話は分からないけれど……五分で疲れを感じるのなら、十三時の今は相当消耗しているはず。なのに、私の拳を受ける余裕はある。余計に得体がしれないわ……)


彼女の表情に警戒心がはっきり現れているが、佐々木さんは笑顔を崩す様子はない。


「胡散臭いと思うのも仕方がないけれど、これだけは信じて欲しい。私は君が幸せになって嬉しいよ。」


「……どうしてでしょうか。」


「君に恩があるから。君と言っても、本来の世界線の紫月だから分からないだろうね。」


その瞬間。


紫月は、不思議と思った。


(この方が私に向ける目が、暖かい……?)


理由は分からない。

それでも、


“ 私は君が幸せになって嬉しいよ。”


この一言だけは信じられる気がした。


「……よろしければ、教えていただけませんか。本来の世界線で、私たちがどんな末路だったのかを。」


「それを見るのは……かなり辛いと思うよ。」


「構いません。」


「……分かった。だけど、途中で止めることはできない。」


「……分かりました。」


佐々木さんは、次にロメオへ視線を向ける。


「ロメオ君はどうする?」


「……見せてください。」


「……うん。では二人とも、頭を触るから近寄って。」


佐々木さんは、紫月とロメオの頭に優しく手を置く。


「今から映像を頭に流し込む。どうか気をしっかり持って。」


「「……」」


静かに目を瞑る紫月とロメオ。


その瞬間。


ピリッ


静電気のような音と共に、


「うそ……いやっ……!」


「っ……そんな……」


二人の肩は震え、苦しそうに歯を食いしばる。


「こ、これ大丈夫なんですか!?」


「うん、多分、きっと大丈夫。この二人の精神次第かも。」


「えぇ!?」


ハラハラしながら見守るユキミ。


「いや……」


「ッ……」


二人の額には汗が浮かび、拳は真っ白になるほど強く握られている。


口元の震えが激しく、今にも発狂しだしそうだ。


だが、まるで金縛りにでもかかったかのように、ずっと背筋はピンとして、その場から動く気配はない。


そこから数十秒後。


「……よし、終わった。よく頑張ったね。」


佐々木さんがパッと手を離すと、


「「ッッ……!!!」」


紫月とロメオは同時に大きく息を吸いこみ、その場でよろめいた。


「これに座って!!」


リコが慌てて椅子を運ぶ。


しかし二人は、それすら視界に入っていなかった。


「……ロメオさん」


「……うん」


紫月の瞳から、大粒の涙が零れる。


「ごめんなさい、私……私……」


「何も言わなくていい。」


ロメオはそっと、呼吸の荒い紫月を抱きしめた。


「自分や大切な人が死ぬ場面を見て、悲しかっただろう。」


「……当たり前です。」


佐々木さんの問いに、ロメオが低く答える。


「だけど、その未来は訪れなかった。紫月とロメオ君は心を通わせ、墨男君は別の道へ進む決意をし、紫十郎さんは長年の苦悩から解放された。紫水君も、リコちゃんとセリナちゃんという遊び相手が出来て、今を楽しく生きている。違うかい?」


「……その通りです。本当に、あんな未来にならなくて良かったッ……」


ロメオの言葉を聞き、佐々木さんはほんの一瞬だけ、

誰かが気づく暇もなく、柔らかな笑みを浮かべた。


しかし次の瞬間には、また真顔へ戻る。


「同じように、苦しんで悲惨な結末を迎える人が違う世界にもいる。そんな彼ら彼女らを、私は救いたい。自分では大したことができなくて歯痒いけれど……そのために、この四人に異世界で人助けをするように頼んだんだ。」


佐々木さんは、そっと紫月とロメオの背中をさすった。


二人の呼吸が、いくらか落ち着く。


「次の世界では、この子達は戦うことになる。肉体が強くなった四人がやられることは滅多にないだろう。だけど、それでも君たちがいれば危険はもっと減らせる。そして、次の世界でキーパーソンとなる人間は君たちと同じ高貴な身分の子だ。彼女の抱える苦悩を、似た立場の君たちだからこそ理解できることがあるはずだよ。……どうだろう、二人の力を貸してくれないだろうか。」


「「……」」


紫月とロメオはまだ決めかねていた。


そんな二人を急かすことなく、佐々木さんは今度は四人へ語りかける。


「みんな、次は剣と魔法の世界で、モンスターと戦うことになる。それでも、また力を貸してくれるかい?」


「やりまぁぁああす!!」


「おわっ」


セリナが勢いよく挙手した。


「魔法やモンスター退治なんて、全オタクが一度は妄想する夢!!やりまぁぁあす!!」


「や、やる気十分だね……他のみんなはどうかな?」


「「「……」」」


顔を見合わせるユキミ、ミキ、リコ。


「ウチもやろうかな。楽しそうだし。」


「ミキも魔法使ってみたい!」


リコとミキは、すぐに頷いた。


だが、ユキミだけはオロオロしながら難しい顔をしている。


「モンスターとか大丈夫?普通に危なそう……」


「ウチらがユッキーを守るよ。」


「なら……いいか。」


リコの説得(?)により、案外早く頷いてくれた。


佐々木さんは満足そうに微笑み、再び紫月とロメオに視線を向ける。


「ほら、そこまで深く考える必要はないんだよ。なんなら、次の世界も見てから決めてくれてもいい。ということで……」


パチンッ


佐々木さんが指を鳴らすと、カウンターに八本の鍵が現れた。


どれも宝石がはめ込まれた、とても美しい鍵だ。


四本には、神秘的な光を放つアメジスト。

もう四本には、燃えるように赤いルビーが輝いている。


「虹色の道を渡った先のドアで、紫の鍵をさして開けば“ 第一の世界”。赤い鍵をさして開けば“ 第二の世界”に繋がる。今から赤い鍵を使って、次の世界を見ておいで。」


「「「「おぉー!」」」」


「とりあえず今は四人分。紫月とロメオ君は、協力してくれる気になったら鍵を渡すよ。」


四人は嬉しそうに、それぞれの鍵を見つめた。


「行こう!今すぐ行こう!!ほらほら二人もおいでよ!!ちょっとだけだから!!」


セリナはずっとウズウズしていた。


ストロベリーローズに連れてきた時と同じように、紫月とロメオの背をグイグイ押す。


「セ、セリナさん……」


何が彼女をつき動かしているのか分からず、紫月は困惑する。


その時だった。


『この街を破壊するなんて許せない!!みんな、変身よ!!』

『『『えぇ!!』』』


『『『『魔女っ子!!ウィズビー!!』』』』


カウンター上の“ あるもの”が、紫月の目を奪う。


「あ、あれは何ですか……?」


「ん?あぁ、スマホね。リコとセリナを待ってる間暇だったから、サブスクで“ 魔女っ子物語”を見てたの。いやぁ、懐かしいな〜。」


ミキの説明に、紫月は目を瞬かせた。


(スマホ……?サブスク……?)


聞いた事のない単語に、紫月の好奇心は膨れ上がる。

しかし、それ以上に気になるのは画面の中だった。


スマホの画面では四人の少女が光に包まれ、きらびやかなでフリフリの衣装へと変身していく。


(服装が変わった!なんて綺麗なんでしょう……!)


『火のエレメント! 魔女っ子ルビー!』

『水のエレメント! 魔女っ子サファイア!』

『風のエレメント! 魔女っ子エメラルド!』

『土のエレメント! 魔女っ子トパーズ!』


キラキラッ


背景の光り輝くエフェクトと共に、魔女っ子たちはポーズを決めた。


(不思議な構えだけれど、格好いい……!)


『ファイヤーボール!』

『ウォーターアロー!』

『ウィンドショック!』

『アースバレット!』


大きな犬のような怪物に、魔法や体術で果敢に立ち向かう少女たち。


(すごいすごい……!!)


ジーッ


華麗に戦う魔女っ子に、紫月の目は釘付けだった。


「し、紫月……?」


「……」


もはやロメオの声すら耳に入らない。



「そうそう。これから使う魔法はちょうどこんな感じだよ。」


「そういえば、佐々木さんの魔法はどんな魔法なんですか?」


セリナが手を挙げる。


「魔法……とは少し違うけれど、ビビデバビデブーてきな。」


「あぁ、そういう感じの魔法なんですね。」


セリナは妙に納得した。


(なんもないところから鍵を出してたし、前に“ 死に対するダメージ”がどうのこうの言ってたもんな。もしかして、作中最強人物なのでは……?)


ありえない話ではなさそうだ。


そんなことを考えていると、当の佐々木さんは紫月へそっと耳打ちする。


「第二の世界に行けば、魔法使えるかもよ?」


「え!!」


「戻ってきたら、何の属性に適性があるか調べてあげよう。」


「い、行きます!」


顔を上げた紫月は、満面の笑みだった。


(僕のお嫁さんは、どうしてこう単純なのだろう……)


ロメオは内心、頭を抱える。


「紫月は行くってよ。ロメオ君は?」


「……行きます。心配なので。」


「よし、じゃあ行ってらっしゃい!」


佐々木さんは、笑顔で手を振った。


「「「「lunch!」」」」


ガチャッ


四人が合言葉を唱えると、セリナを先頭に一同は虹色の道を歩き始める。


「あ、あの……」


「ん?」


歩きながら、紫月はミキへ尋ねた。


「あんなに綺麗な映像は初めて見ました。あの“ スマホ”というものは、小さな映画館のようなものなのですか?」


「映画も見られるけど、基本は電話ですよ。あとは写真を撮ったり、ゲームしたり、お金を払ったり色々と出来ます。」


「あ、あんなに小さくて薄いのにですか!?」


「ミキにも仕組みは全然分かりませんけどね!」


そんな話をしているうちに。


「あ、鍵穴が出てきてる。」


ガチャッ


セリナが赤い鍵を使用し、ドアを開けた。



ギィイイイ……



扉を開けたその先に広がっていたのは、



「「「「「「わぁ……!!」」」」」」



まるで中世ヨーロッパのような、


「そこの旦那!!この剣はいかがかな?」

「ただいま、フイッシュ&チップスが揚げたてです!」

「魔物の皮はいかがでしょうか!!防具にも家具にも加工可能です!」


白い石畳と、店の呼び込みが激しい、美しい街並みだった。

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