きたぜっ
リヒテと令息たちが地上を調査し始めて一週間。
隠れている可能性の高い森林や孤島をあえて避けて探索している。
シュナイザー中佐もシャルロッテ姫が発見される方が問題なので黙認してくれているようだ。
大きな滝つぼの縁に人型形態で片膝をついた宇宙戦闘機が四機座っている。
赤い戦闘機は頭の上に大きな皿、レドームがゆっくりと回っていた。
肩までの赤毛をソバージュにした女性が滝つぼをゆったりと泳ぐ。
パイロットとして鍛えられた身体。
水色のセパレートタイプの水着がよく似合っている。
ピピピピピ
無線の着信音が響いた。
「定時連絡か」
通常無線だ。
この時点で自分たちの位置はばれたことだろう。
弾道計算はサクラギの十八番だ。
この一帯に砲弾の雨を降らすことも出来るだろう。
やらないが。
リヒテは、水辺に置いた無線機に向かった。
『あいつらはどこだあ』
無線に出た途端にアウディー侯爵の怒鳴り声が聞こえた。
『あ~あ~、今は滝の裏に隠れていないか調査中でありますっ』
リヒテが答える。
「たいちょ~、BBQの火がつきましたよ~」
少し離れたところで水着姿の令息二人が火を起こしていた。
「ご苦労っ」
パシャンッ
もう一人の令息が釣りをしていて、魚をばらした。
「ぴっといけ、ぴっとお」
リヒテだ。
「イエス、マアムゥ」
令息が笑いながら答える。
『んん? BBQとは何だっ』
『……生存訓練中でありますっ』
『な、なにっ』
『ざ、ざざざざ、あ~、無線機が不調でありますうう』
ブチッ
リヒテが無線を電源ごと叩ききった。
「たいちょ~、焼きますよ~」
「ああ、しっかり野菜も焼けよ~」
「イエス、マアム」
「ひと泳ぎしてから食べる」
「「「はあい」」」
リヒテは滝つぼに身を躍らせた。
その場でキャンプをして次の日の朝、広域無線から次の声が流れた。
『こちら、東和宇宙軍である、速やかに投降せよ』
◆
衛星軌道上、青い惑星に影を落として三隻の戦艦が浮かんでいる。
戦艦ティルピッツの艦橋である。
「シュナイザー艦長っ、ダイブ空間からダイブアウトしてくる艦影あり」
「メインモニターに移せっ」
艦橋の前の天井のモニターに銀色の波頭を出しながら浮かんでくる艦が映る。
『こちら、東和宇宙軍である、速やかに投降せよ』
広域無線が流れた。
「艦長、ダイブアウトする数、三」
「艦種識別します」
「豆狸級雷撃駆逐艦、二、文福茶釜級戦艦、一、シャルロッテ姫の護衛隊ですっ」
「第一種警戒態勢っ」
シュナイザー艦長が言った。
「待ってくださいっ、続けてダイブアウトする艦あり」
「大きいっ」
文福茶釜の1,5倍くらいだ。
「あれはっ」
「狸の東軍の大将の名を冠し、東和をニャンドロスの進攻から守った二艦の大型空母のうちの一艦」
「東和軍所属、弩級三段宇宙空母、”金長大明神”っ」
ちなみにもう一艦は、狸合戦の西軍の大将の名を冠した、”六右衛門”である。
特徴的な三段の飛行甲板から、艦載機が次から次へと出撃する。
その数約、五十。
四枚のシールドブースターを×字に装備。
一部のエースに支給された、攻撃型宇宙戦闘機、”震電”
その後ろを、東和軍正規宇宙戦闘機であり重装甲の、”紫電改”が続く。
「ま、まだ来ますっ」
弩級三段宇宙空母、”金長大明神”よりさらに大きい。
『繰り返す、東和宇宙軍である、速やかに投降せよ』
「狸たちの総大将の名を冠した」
「東和皇帝、”ヤマモト”の座上する総旗艦」
「超超弩級戦艦、”隠神刑部”っ」
「信号弾、白、一発っ、リアクターを生命維持装置以外全部切れっ」
「降伏するっ」
シュナオイザー艦長が叫んだ。
「イ、イエスサー」
艦橋が一瞬、暗闇に包まれた後、警告灯の赤い色に染まった。
モニターの中で、銀色の波頭の後、前部から四艦、後部から四艦、豆狸級雷撃駆逐艦を横にスライドした格納庫から出撃させながら、”隠神刑部がダイブアウトする。
パッ
白い信号弾の光を跳ね返した。
「う、うわああ、逃げろ」
アウディー侯爵とバイエルン伯爵の乗った、”ドイッチェランド”級戦艦が逃げ始めた。
『孫娘にやりたい放題してくれたのう。 死なない程度に痛めつけてやろう』
年配の男性の声が無線で響く。
東和皇帝、ヤマモトの声だ。
「うわあああ」
東和軍の宇通戦闘機が、戦艦の砲弾が、二艦を蹂躙した。
ドイッチェランド級二艦は、生命維持装置の動力すら破壊された。
真っ暗な艦の中、時々バチバチと電気のスパークが光る。
どんどん空気が悪くなり息苦しくなった。
緊急避難信号は意味をなさない。
「た、助けてくれえ」
アウディー侯爵とバイエルン伯爵が叫ぶ。
シャルロッテとやまとんが東和軍に救出されるまで、二人は宇宙をさ迷うことになった。




