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異世界彼女は純和風  作者: 凪沙一人
重なるは時間
22/38

廿弐葉 ‡ 作用点

「私の可愛い色葉ちゃんを拐かしといて、随分と勝手な理屈よね? 」

 北条さんも、こいつらの言葉にだいぶ慣れたんだな。なんて感心している場合じゃない。北条さんは蘆塚に向かって歩いていった。魔法の使えない北条さんに、どんな策があるのか。いや、本当に策なんかあるのか? 止めるべきだったんじゃないのか? 僕がそんな葛藤をしている間に北条さんは蘆塚の目の前だ。

「えぇい、寄るな寄るなっ! 」

 威嚇のつもりなのだろう。蘆塚は北条さんの足元を狙って攻撃魔法は放つが全く怯む様子はない。

「こうなれば、女子供といえど容赦はせぬっ! 」

 ついに蘆塚が北条残業目掛けて魔法を放った… が、北条をすり抜けた。一瞬、驚いた蘆塚が再び攻撃を開始したが当たる様子はなかった。

「色葉ちゃん、早く鍋島さんの元へ。」

「でも… あたしが居ると直に迷惑が… 。」

「つべこべ言わずに走るっ! 」

「はいっ! 」

 躊躇する色葉を一喝して走らせた。さすが北条さんだ。僕には出来ない。色葉が僕の元に着くと北条さんは蘆塚に背を向けた。

「まさか、女子供を背後から撃つような真似はしないわよね? 」

 蘆塚は苦虫を潰したような顔をしているが、北条さんの言うとおり背後から撃つ事はなかった。魔法世界にも武士道のようなものが在るのだろう。もっとも、あの様子では攻撃してもすり抜けそうだが。

「あたし… 。」

「はい、そこまで。佐野さん怪我は無い? 」

 北条さんは怯えたような色葉の言葉を遮った。

「私は大丈夫です。竜紋さんは? 」

「帰ってからね。ここは退く… で、いいかしら? 」

「えぇ。」

 ミッチーが居ないのであれば、加勢が来る前に撤退すべきだ。色葉と佐野さんを取り戻したのだから、長いは無用だ。敵の追撃を避ける為に僕は殿しんがりを務める事にした。北条さんは何か言いたげだったが、そのまま僕たちは逃げおおせた。自宅に戻るのも危険だと、また北条さんの本家にお邪魔する事になってしまった。

「あのぉ… 」

 申し訳なさそうに開こうとした色葉の口に北条さんが人差し指を当てた。

「要らない責任は、感じなくていいわよ。あいつらの目当ては鍋島さんなんだから。」

「えっ… 直? でも将軍様は… 」

 色葉は意外そうな顔をした。確かに将軍は天草の目的は僕らへの復讐だと言っていた。どうやら、蘆塚と僕の会話は聞こえていなかったようだ。

「天草四郎の狙いは鍋島の能力ちから。あの能力ちからを使って将軍を倒すつもりらしいわ。だから、色葉ちゃんが責任感じる必要は無いの。」

「でも、あたしが、こちらの世界に… 」

「それも天草の実験失敗の所為なんでしょ? みんな、あいつが悪いのよ。」

 ネガティブになっている色葉を論破していく北条さん、さすがだ。

「お話し中、すみませんが竜紋さんのご容態は、如何なのでしょうか? 」

 二人の会話に佐野さんが割って入った。状況的に考えて、蘆塚に襲われてミッチーが怪我をして色葉が拐われ佐野が追ったのだろう。だとすれば、怪我をしたミッチーを佐野さんからすれば置いていった事になる。多分、ミッチーが自分は大丈夫だからとか言ったんだろうけど。

「ミッチーなら… 」

「あの小僧なら、心配ない。峠は越した。」

 僕の言葉を遮ったのは小川さんのようなだった。確か、小石川の町医者って言ってたけど。なぜ、ここに?

「小川先生、ミッチーの具合は… 」

 僕も小川先生にミッチーを任せてしまった点では佐野さんと変わりはない。その後の具合は気になっていた。

「まったく、患者は医者の言うことを聞いておれと言うに、目を覚ました途端に、鍋島氏の加勢に行かねばとか、色葉殿をお救いせねばと喧しゅうて仕方ないんで薬で眠らせてやったわい。で、お前さんが鍋島さんか? 」

 僕は黙って頷いた。

「あんたの話しは奉行から聞いとる。上様御声掛とかで、偉い目に巻き込まれたものよのぉ。」

「ひょっとして… O.E.D.O.の人!? 」

 小川先生は二度程頷くと腰を下ろした。

「O.E.D.O.でも、天草の乱は無視する訳にもいかず、騒ぎになっておる。島原を拠点に小競り合いが続いておるらしいが、総大将と軍師が異世界と行ったり来たりでは、向こうも苦しかろうが、それだけ、お前さんの能力ちからは戦況を左右するって事だ。」

 将軍でさえ、奴らの目的を見誤っていたのに、この爺さん、どこまで知ってるんだ? いや、そもそも将軍だって本当に誤っていたのかも疑わしい。実は知っていて伏せたのではないか。

「僕の能力ちからって言えば、将軍が強化したとか言ってたけど何が強化されたのやら。」

「それなら、さっき使っていたじゃない、私に。」

 ん? 北条さんに?

「あぁっ! 」

「私に能力くれないから、鍋島さんの能力で私を透過できるようにさせたのよ。」

 させたって… 北条さん、恐るべし。

「まぁ、ともかく一時的にO.E.D.O.を北町、こちらを南町、島原を長崎の各奉行が受け持つ事になった。儂も療養所と、こっちの行ったり来たりじゃから、あんまり怪我するでないぞ? 」

 どうみても、ただの町医者じゃないな。かといって御殿医とも思えない。聞いても答えないだろうけど、何者なんだ?

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