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異世界彼女は純和風  作者: 凪沙一人
守れるのは自分
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拾肆葉 ‡ 色葉の義父

御奉行様は何を成す?

 思い当たる手段は一つしか無かった。こちらの世界で色葉の戸籍上の父親、地方裁判官遠山景元こと、町奉行の遠山だ。ただ、困った事に連絡方法が分からない。今日は無理として、日をあらためて上野の東照宮に行ってみよう。それで、もし会えなかったら日光まで行って将軍探しでも、するしかない。そもそも、また時空を越えて来た奴らがいるのに何をしているのだろう。ただ、筝葉は所払いにならないように、何とかしてやりたい。色々と考える事はあるが、取り敢えずは奉行か将軍に会えるかどうかだ。それによって先の展開は全く変わってくる。

「よっ。そろそろ現れるんじゃねぇかと思って待ってたぜ。」

 相変わらずのチャラい格好だ。何故、奉行がこんな格好で現れるのだろう。こちらの世界に紛れ込もうとして、逆に浮いている。

「奉… 遠山さん。こちらの事情が分かっているなら、そちらから出向いて貰っても一向に構わないんだけどな。」

「こっちにも、色々あってな。俺ら一人の思惑で動く訳にもいかねぇんだよ。」

 そりゃ、こっち世界じゃ、チャラいおっさんでも、向こうの世界じゃ町奉行って役職だ。自由に動き回る訳にいかないのは理解出来る。とはいえ、異世界に迷惑を掛けないで欲しいものだ。迷惑を掛けているのは直接、奉行ではないが、それを取り締まる役職ではある筈だ。

「それで、今回は僕はどう動けばいい? どうせ、捕まえる時くらいしか、動けないんだろ? 」

「お!? なんでぇ。話しが早くて助かるぜ。お前ぇさんの言うとおり、お前ぇさんたちの世界で魔法合戦する訳にもいかねぇからな。」

 確かに、それはそうなんだが、もう少し何とかならないものだろうか。

「言っておくけど、色葉や筝葉に危険が及ぶような事は無いだろうね? 」

「お前ぇさんがついてるんだ。心配はあるめぇ? 」

「つまり、信頼したふりをして、人任せという事か。」

「まぁ、そう言うねぇ。今回は、うちの筆頭与力、つけるからさ。」

 奉行がそう言うと、年恰好は僕とそう変わらない男性が現れた。

「拙者、北町奉行所筆頭与力、竜紋 光之介と申す者。以後、宜… 」

「硬い、硬い。そんな話し方じゃ怪しまれるよ。奉行のは砕けすぎだけど、もう少し砕けた感じの方がいいと思う。ちょっと待って。」

 不意に鳴ったスマホの音に嫌な予感がしながら出た。このメロディは大友からだ。あいつがメッセージじゃなく電話を掛けて来るという事は、かなりの緊急事態の可能性が高い。

「どうした、大友!? 」

「変な奴らが現れて、今、北条さんが二人を連れて逃げてるっ! 」

「わかったっ! 」

 僕は電話を切ると走り出した。奉行が頷くと、竜紋も僕の後を走ってきた。かと思うと、いつの間にか隣を走っていた。僕も足が遅い方では無い筈なのだが。

「鍋島氏(うじ)、居場所には心当たりが、お有りか? 」

「電話がきた時間から、筝葉の歩測で移動距離を換算して、奴らが魔法を使う変な空間を作れる場所に追い込んでくるとしたら、一ヶ所。逆に追い込まれていなければ、まだ逃げてる筈だっ! 」

「見事な御推察っ! 」

 今、最大の心配事は巻き込まれた北条さんに魔法世界の事がバレる事だった。口の堅さは信頼出来るが、何の力も持たない北条さんが、今後も巻き込まれるような事態は避けたかった。

「ここだっ! 」

 僕たちは奴らが色葉たちを追い込むとすれば此処であろう場所に着いた。今までの経験からすると、将軍や奉行のように話すだけと違い、戦闘になる事を前提としている所為か、ある程度、広い場所を選ぶ傾向がある。人影は見えないが、違和感がある。これは北条さんでも逃げ切れなかったという事か。

「竜紋、探せるか!? 」

「はいっ! 先に突入します。鍋島氏は後に続いてくだされっ! 」

「鍋島でいい。」

「え!? いえ、上様御声掛かりの鍋島氏を呼び捨てになど… 」

「この件は後だ。先に三人を助けるぞっ! 」

「承知っ! 」

 筆頭与力と言うだけあって、腕も洞察力も確かなようだ。瞬時に空間の歪みを見極めると、一瞬で裂け目を作った。僕たちが飛び込むと裂け目は閉じてしまった。まぁ、この空間から魔力が漏れるよりはいい。欲を言えば、北条さんは外に出したかったが。さすがに、この空間では色葉が前面に出ていると思いきや、奴らと対峙していたのは北条さんだった。

「ここは拙者が。鍋島氏は、お三方を。」

「いや、こいつの力量を見定めるなら先に僕が前に出る。ミッチーは三人を頼む。」

「ミッ… 承知つかまつった。」

 光之介だからミッチー。咄嗟に出たが、竜紋より、しっくりくる気がした。この方が向こうも僕の事を砕けた呼び方が、しやすいかもしれない。

「どっちが先でも結果は一緒なんだよっ! 」

 この手の雑魚は単純で助かる。恐らくは情報共有なんて、端から考えていない。したがって、この僕目掛けて全力で魔法を撃ち込んでくる。勿論そこには、お約束の結果が待っている。これで、奴らを追い払い、ミッチーの印象は残っていないだろう。仮にも筆頭与力と名乗るからには、色葉より魔力は強いと思っている。手の内は出来るだけ隠しておきたかった。それより難問は、後ろで腕組みをして、こちらを睨み付けている北条さんである。

北条さんにバレた!?

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