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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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俺が次の魔王になる!

魔王軍は、広い地下空間の入口で立ち止まっていた。


先ほどから聞こえている怒鳴り声。


その正体を確かめるため、全員が暗闇の奥をじっくりと見つめていた。


「……」


「……」


「……何かいますね」


昆布が目を細める。


「さっきから声は聞こえるんだけどな」


魔王も目を凝らした。


最初は何も見えなかった。


しかし、地下空間の中央付近。


水路が集まっている場所に、何か二つの影がある。


「……あれ?」


勇気が言った。


「二人……いませんか?」


「二人?」


魔王はさらに目を凝らす。


「本当だ」


二つの影。


どうやら、二人とも地面に座っている。


そして――。


何か言い合っている。


「俺が全ての水を吸い取ってやる!」


「いや、俺がお前のテリトリーの水を全部吸い取ってやる!」


「誰か来たぞ!」


「お前が行け!」


「その間に俺の水を取る気だろ!」


「お前が行け!」


「お前が行け!」


「お前が行け!」


「お前が行け!」


魔王軍は黙って聞いていた。


魔王が小声で言う。


「……何の喧嘩なんだ?」


父が答える。


「水の取り合いでしょうか」


「いや、それは分かるんだけど……」


五利武が言った。


「二人とも水が欲しいんだな」


殴打が頷く。


「かなり欲しそうだな」


便意が言った。


「水分補給は大事ですからね」


魔王が振り返る。


「お前は黙っててくれ」


---


二人の正体


魔王軍がさらに目を凝らす。


すると、二人の姿が少しずつ見えてきた。


緑色の皮膚。


大きな口。


丸い体。


そして――。


頭のてっぺん。


そこから大量の水が、


ゴォォォォォ……!


と吸い込まれている。


「……」


魔王は目を見開いた。


「なんだあれ?」


二人とも頭から水を吸い込んでいる。


しかも、少しずつではない。


地下水路から、


ドドドドドドド……!


と水を吸い上げている。


まるで頭が巨大なポンプになっているようだった。


魔王は思わず叫んだ。


「河童か!」


声が地下空間に響き渡る。


「河童!?」


二人が同時に振り返った。


「誰だ!」


「誰が河童だ!」


魔王軍は固まった。


昆布が二人を観察する。


「確かに河童に似てますね」


「だよな?」


魔王が言う。


「頭に皿がありそうだし」


二人の頭を見る。


しかし、皿はない。


代わりに、


ゴォォォォ……。


水が吸い込まれている。


魔王は首を傾げた。


「でも……」


「はい」


昆布も首を傾げる。


「何か違いますね」


魔王が言った。


「河童は頭のお皿が湿ってれば良いんじゃないの?」


「そうですね」


「じゃあ、あんなに頭から水を吸い取る必要ある?」


「ありませんね」


「だよな」


魔王は二人を見る。


「お前たち、河童なのか?」


二人は顔を見合わせた。


「河童?」


「河童ってなんだ?」


「知らん」


「じゃあ違うな」


魔王が言った。


「違うのかよ!」


「河童に似てるけど違うのかもしれませんね」


昆布が冷静に分析する。


「じゃあ何なんだ?」


魔王が聞く。


昆布は少し考えた。


「……水吸いモンスター?」


「そのまんまだな!」


---


水を吸いすぎる二人


魔王は改めて周囲を見た。


水路。


地下水。


そして二人のモンスター。


二人は大量の水を吸い続けている。


ゴォォォォォォ……。


サァァァ……。


水の流れが明らかに弱くなっていた。


魔王は慌てた。


「おい!」


二人が振り返る。


「そんなに水を吸い取らないでくれ!」


「なぜだ?」


「森の水がなくなるだろ!」


「知らん!」


「知らんじゃない!」


魔王は指を差した。


「薬草が育たなくなってるんだぞ!」


二人は顔を見合わせた。


「薬草?」


「薬草がどうした?」


昆布が前に出る。


「あなたたちがこの水を大量に吸い上げているせいで、地下水脈の流れが変わっている可能性があります」


二人は黙った。


「……」


「……」


魔王が言った。


「分かった?」


「分からん」


「分からんのかい!」


---


魔王になる?


そのときだった。


片方のモンスターが立ち上がった。


「俺が全ての水を吸い取って、次の魔王になる」


魔王軍全員が止まった。


「……」


魔王の目が丸くなる。


「魔王?」


もう一人も立ち上がった。


「いや、俺が魔王になる」


「俺だ!」


「俺だ!」


「俺だ!」


「俺だ!」


二人が睨み合う。


魔王は困惑した。


昆布も黙っている。


勇気が小声で言った。


「……魔王様」


「何?」


「なんだか……」


「うん」


「魔王様の話をしているような気がします」


「俺もそう思う」


魔王は二人を見た。


「……俺、ここにいるんだけど」


二人は魔王を見た。


「……」


「……」


片方が言った。


「誰だ?」


魔王が答える。


「魔王」


二人が固まった。


「……」


「……」


そして片方が言った。


「嘘をつくな」


「なんでだよ!」


もう片方も言った。


「魔王がこんなところにいるわけない」


「いるんだよ!」


魔王が叫ぶ。


昆布が横から言った。


「魔王様は本当に魔王様です」


二人は昆布を見る。


「証拠は?」


「名前です」


「名前?」


昆布が魔王を見る。


「この方の名前は魔王です」


二人は顔を見合わせた。


「……」


「……」


片方が言った。


「名前が魔王?」


「そう」


魔王が答える。


「魔王」


「ややこしいな」


「俺もそう思うよ!」


---


水の取り合い再開


しかし、二人はすぐに喧嘩を再開した。


「だから俺が次の魔王になる!」


「いや、俺だ!」


「俺が先にこの水脈を見つけた!」


「俺の方がたくさん水を吸える!」


「俺の方が強い!」


「俺の方が水を吸える!」


「強さ関係ないだろ!」


魔王が思わずツッコむ。


二人は同時に魔王を見る。


「じゃあ、どっちが魔王になるべきだ?」


「え?」


突然話を振られた。


魔王は困った。


「いや……」


「決めろ」


「決めろ」


「……」


魔王は昆布を見る。


昆布は腕を組んでいる。


「昆布、どうする?」


「非常に難しい問題ですね」


「だよな」


「まず、魔王になる条件を確認する必要があります」


二人が昆布を見る。


「条件?」


「はい」


昆布は真剣に言った。


「水をたくさん吸えることが、魔王になる条件なのでしょうか?」


二人は顔を見合わせた。


「……」


「……」


片方が言った。


「たぶん」


「たぶんかよ」


昆布は続けた。


「では、もう一つ確認します」


「何だ?」


「なぜ魔王になりたいのですか?」


二人は黙った。


「……」


「……」


しばらくして、一人が答えた。


「強くなりたいからだ」


もう一人も言う。


「俺もだ」


「なるほど」


昆布は頷いた。


「では、魔王になったら何をするんですか?」


二人はまた黙った。


「……」


「……」


魔王が聞く。


「決めてないの?」


「……」


「決めてないらしいな」


---


魔王軍、地下水脈を調査


昆布は周囲を見回した。


「魔王様」


「うん」


「この二人が大量の水を吸い上げていることは間違いありません」


「じゃあ、止めてもらおう」


「ただ」


「ただ?」


昆布は水路を指差した。


「問題は、なぜこの二人がここで水を吸っているのかです」


魔王は黙った。


確かに。


二人が単純に水を飲んでいるだけなら、ここまで大量に吸い続ける必要はない。


しかも、


「次の魔王になる」


と言っている。


何か目的があるはずだ。


魔王は二人に聞いた。


「お前たち、どうしてここで水を吸ってるんだ?」


二人は答えなかった。


魔王がもう一度聞く。


「誰かに言われたのか?」


「……」


「何かを探してるのか?」


「……」


「それとも、この水に何か秘密があるのか?」


二人の表情が変わった。


ほんの一瞬だった。


しかし昆布は見逃さなかった。


「……」


昆布が魔王を見る。


「今の反応」


「何か知ってる?」


「可能性があります」


魔王は二人を見つめた。


地下水脈。


壊れた水の魔法石。


黒い核。


薬草不足。


そして――。


魔王になろうとしている二人のモンスター。


すべてが少しずつ繋がっている。


そのとき。


ゴプリンが二人に近づいた。


ドス。


ドス。


二人のモンスターがゴプリンを見る。


「……」


ゴプリンも二人を見る。


「……」


しばらく見つめ合う。


そしてゴプリンが言った。


「……違う」


魔王が驚く。


「何が?」


ゴプリンは地下水路の奥を指差した。


「……あいつじゃない」


魔王の表情が変わった。


「え?」


昆布も振り返る。


「どういう意味でしょう?」


ゴプリンは答えなかった。


ただ、暗闇のさらに奥を見る。


そこから、


ゴォォォォォ……。


という低い音が聞こえてきた。

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