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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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ゴプリン、隣町へ

森を抜けると――


目の前に大きな町が見えてきた。


魔王軍が運んでいた荷車には、たくさんの薬草が積まれている。


商人は町の入口を見て、ほっとした。


「やっと着きました……!」


魔王も笑顔になる。


「無事に到着できてよかったですね」


父さんが後ろを見る。


「ゴプリンは?」


「……」


全員が森の方を見る。


いない。


魔王が安心した。


「よかった。さすがに町までついてくることは――」


ドス……


「……」


魔王が振り返る。


ドス……


ドス……


森の出口から――


ゴプリンが出てきた。


「……」


魔王は無言になった。


殴打が言う。


「来たな」


五利武も頷く。


「普通についてきたな」


父さんが腕を組む。


「かなりしつこいな」


ゴプリンは――


ドス。


ドス。


ドス。


と、いつものようにゆっくり歩いている。


魔王が呟く。


「……なんでついてくるんだ?」


昆布が答える。


「分かりません」


「昆布にも分からない?」


「はい」


「じゃあ、しばらく様子を見よう」


「そうしましょう」


商人はゴプリンを見て、ため息をついた。


「まあ……町に入ってから考えましょう」


こうして魔王軍と商人は、隣町へ入っていった。


---


町に入った瞬間。


「薬草だ!」


「薬草が来たぞ!」


「本当に!?」


「助かった!」


町の人々が一斉に集まってきた。


商人の荷車を見るなり、皆が嬉しそうな顔をする。


「待っていました!」


「これで薬を作れる!」


「最近、本当に薬草が手に入らなかったんです!」


商人は笑顔で荷車を開ける。


「お待たせしました!」


町の人々が薬草を買っていく。


「これをください!」


「私も!」


「傷薬を作りたいんです!」


「子どもの薬にも使います!」


商人は次々と薬草を渡していく。


魔王軍も町の人々と話していた。


魔王が聞く。


「そんなに薬草が不足していたんですか?」


町の女性が頷く。


「はい」


別の男性も言う。


「森に取りに行けなくなったんです」


勇気が聞く。


「どうしてですか?」


男性は森の方を見る。


「モンスターが増えたからです」


「やっぱり……」


昆布が小さく呟く。


町の人が続けた。


「以前は森に入れば、薬草をたくさん採れました。でも最近は魔物が増えてしまって……」


「薬草を採りに行った人が襲われる?」


「そうなんです」


魔王は考え込んだ。


村でも薬草不足。


この町でも薬草不足。


森では魔物が増えている。


そして――


井戸の水まで出なくなっている。


昆布が静かに言った。


「……偶然ではないかもしれません」


魔王が振り返る。


「昆布?」


「いえ。まだ何も分かりません」


昆布は周囲を見る。


「もう少し情報が必要です」


---


その頃。


商人は大忙しだった。


「はい、薬草五束!」


「ありがとうございます!」


「こちらは十束!」


「助かります!」


魔王は微笑ましくその様子を見ていた。


「よかったね」


母さんが頷く。


「町の人たちも嬉しそうね」


鍋も笑う。


「これで料理にも……」


魔王が振り返る。


「鍋さん」


「はい?」


「薬草を料理に使う話は一旦やめよう」


「分かった」


しかし――


そのとき。


昆布が突然、顔を上げた。


「……」


魔王が聞く。


「どうした?」


昆布は周囲を見渡す。


「そういえば……」


「うん」


「誰かを見張りにしておかなければいけません」


魔王も辺りを見る。


確かに、全員が町の人たちと話している。


ゴプリンのことをすっかり忘れていた。


「……あれ?」


魔王が周囲を見る。


「ゴプリンは?」


「……」


全員が止まった。


殴打が言う。


「さっきまで後ろにいたぞ」


五利武が言う。


「町に入るまではいた」


父さんが辺りを見る。


「見当たらないな」


昆布がさらに周囲を見渡す。


そして――


「……」


目を細めた。


「いました」


魔王が聞く。


「どこ?」


昆布が指差す。


「あそこです」


全員が振り返る。


そこには――


薬草を積んでいた荷車。


その荷車の前に――


ゴプリン。


「……」


魔王が固まった。


ゴプリンは――


薬草を食べていた。


むしゃ。


むしゃ。


むしゃ。


「……」


もう一口。


むしゃ。


さらに一口。


むしゃむしゃ。


魔王が呟く。


「食べてる……」


殴打が言う。


「めちゃくちゃ食ってるな」


五利武も驚く。


父さんが言った。


「食欲旺盛だな」


昆布が叫んだ。


「ゴプリンだ!」


町の人々が振り返る。


「え?」


「ゴプリン?」


「魔物だ!」


「うわあああ!」


「逃げろ!」


「薬草を食べてるぞ!」


「町に魔物が入ってきた!」


町の人々が一斉に逃げ始めた。


ガタガタガタ!


「待ってください!」


魔王が叫ぶ。


しかし――


誰も止まらない。


あっという間に通りから人がいなくなった。


魔王は呆然と立っていた。


「……」


昆布もゴプリンを見る。


ゴプリンは逃げる町の人々など気にしていない。


むしゃ。


むしゃ。


むしゃ。


薬草を食べている。


昆布が小さく呟いた。


「……ゴプリンは、薬草が好きなのか?」


魔王が頷く。


「たぶんね」


鍋が腕を組む。


「薬草をあれだけ食べるということは、かなり好きだろう」


便意が言う。


「僕も薬草を食べたら、便意が来ますかね?」


「今はそこじゃない」


母さんがゴプリンを見る。


「でも、攻撃はしてないわね」


勇気も頷く。


「うん」


ゴプリンは――


薬草を食べ終えた。


「……」


お腹を少しさする。


そして――


ドス。


一歩。


ドス。


もう一歩。


町の奥へ向かって歩き始めた。


魔王が言った。


「どこに行くんだ?」


ゴプリンは振り返らない。


ドス。


ドス。


ドス。


五利武がゴルフクラブを持ち上げた。


「今のうちに倒そう」


殴打も拳を握る。


「そうだな」


しかし――


昆布が手を上げた。


「ちょっと待ってください」


「どうして?」


昆布はゴプリンを見る。


「攻撃してきていません」


五利武が言う。


「でも、魔物だぞ」


「はい」


「薬草も食べた」


「はい」


「町の人たちも逃げた」


「はい」


昆布は冷静に答える。


「それでも、こちらには攻撃していません」


魔王も頷いた。


「確かに」


父さんが言う。


「なら、様子を見るか」


昆布が頷く。


「はい」


魔王軍は、ゴプリンの後ろをついていくことにした。


ドス。


ドス。


ドス。


ゴプリンが歩く。


魔王軍がついていく。


ドス。


ドス。


ドス。


魔王軍。


ドス。


ドス。


ドス。


魔王軍。


まるで町の中を――


巨大なプリンが散歩しているようだった。


魔王が小声で言う。


「これ、どう見ても追跡してるように見えるよね」


昆布が答える。


「実際、追跡しています」


「そうなんだけど」


---


ゴプリンは町の中心へ進んでいく。


魔王が周囲を見る。


「どこへ行くんだろう?」


昆布が地図を見る。


「町の中心には……」


「何がある?」


「井戸があります」


魔王が足を止めた。


「……井戸?」


昆布が頷く。


「はい」


魔王は思い出した。


「そういえば……」


父さんを見る。


「この町も井戸水が出なくなったって言ってたよね」


昆布が頷く。


「そうです」


魔王がゴプリンを見る。


ゴプリンは井戸へ向かっている。


ドス。


ドス。


ドス。


魔王の表情が変わった。


「まさか……」


ゴプリンが井戸の前で止まった。


「……」


そして――


井戸の中を覗き込む。


ぷるん。


ゴプリンのプリンが揺れる。


昆布が近づく。


「ゴプリン……」


ゴプリンは井戸の中を見つめている。


何かを探しているようにも見える。


魔王が言った。


「やっぱり、何かあるのかもしれない」


昆布が頷く。


「調べましょう」


父さんが井戸を見る。


「深そうだな」


殴打が覗き込む。


「暗いな」


五利武も見る。


「底が見えない」


便意が杖を入れてみる。


「……」


「便意さん、何してるの?」


「深さを測っています」


「それで分かるの?」


「分かりません」


「じゃあ、やめよう」


母さんがロープを持ってきた。


「これを使えば降りられるわ」


魔王が頷く。


「よし」


昆布が言う。


「ただし、全員で降りるのは危険です」


「じゃあ誰が?」


昆布が考える。


「まず私と魔王様――」


ゴプリンが――


井戸の縁に手をかけた。


「……?」


そして――


ぴょん。


「え?」


ゴプリンが井戸の中へ飛び込んだ。


「ゴプリン!」


ドスン!!


「……」


全員が井戸を覗き込む。


「大丈夫か!?」


返事はない。


ただ、下から――


ボチャ……


という音が聞こえた。


魔王が言った。


「……落ちた?」


昆布が首を振る。


「分かりません」


魔王はロープを見る。


「じゃあ、追いかけよう」


父さんが頷く。


「行くか」


殴打も準備する。


五利武もゴルフクラブを背負う。


勇気と母さんもロープを持つ。


鍋はフライパンを腰に下げる。


便意は杖を握る。


昆布は最後に井戸の中を確認した。


「全員、慎重に」


魔王が先にロープを掴む。


「よし」


ゆっくりと井戸の中へ降りていく。


父さん。


殴打。


五利武。


昆布。


勇気。


母さん。


鍋。


便意。


そして――


最後に商人も恐る恐る井戸を覗いた。


「私も行くんですか?」


魔王が下から叫ぶ。


「薬草を届けた商人さんが、ここまで来たんだから最後まで一緒に行きましょう!」


「……護衛クエストって、ここまでやるものなんですか?」


「僕にも分かりません!」


一人ずつ、ロープを使って井戸の中へ降りていく。


暗い。


冷たい。


水の音が聞こえる。


そして――


井戸の底。


そこには――


ゴプリンがいた。


しかし、ゴプリンは魔王軍を見ていなかった。


じっと――


奥の暗闇を見つめていた。


魔王がゴプリンの視線の先を見る。


「……何かいる」


昆布が目を細める。


「魔王様……」


「うん」


井戸の奥から――


ゴォォォ……


という低い音が聞こえてくる。


そしてその音とともに――


地下の奥から、冷たい風が吹いてきた。


ゴプリンのプリンが――


ぷるん。


魔王軍全員が構える。


昆布が静かに言った。


「どうやら……」


「うん」


「ゴプリンは、何かを探してここまで来たようです」


魔王は暗闇を見る。


「薬草を食べるためだけじゃなかったんだな」


ゴプリンは――


ゆっくりと奥へ歩き出した。


ドス……


ドス……


ドス……


魔王軍も、その後を追う。


井戸の底にあったもの。


そして――


薬草不足の本当の原因。


その謎が、少しずつ姿を現し始めていた。

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