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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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魔王軍に初めて作戦会議が生まれた

魔王の家。


朝。


リビングには、魔王軍全員が集まっていた。


テーブルの上には、昨日までとは違うものが置かれている。


大きな紙。


その紙には、


「魔王軍・作戦会議」


と書かれていた。


魔王が首を傾げる。


「……これ、誰が作ったの?」


昆布が手を挙げた。


「私です」


「昆布さんか」


「はい」


昆布は真剣な表情だった。


魔王は椅子に座る。


「どうしたの?」


昆布は紙を指差した。


「魔王軍には、これまで役割がありませんでした」


魔王が訂正する。


「いや、役割はあるよ」


「はい。役割はあります」


昆布は書き込まれた文字を見る。


勇気――補助


殴打――物理攻撃


五利武――素早い物理攻撃


鍋――コック


便意――魔術師


母――回復


父――防御


そして、


魔王――便利屋・総合指揮


昆布は言った。


「しかし、役割が決まっていても、誰がいつ何をするかは決まっていません」


魔王は少し考えた。


「……確かに」


勇気が手を挙げる。


「じゃあ、どうするんですか?」


昆布は立ち上がった。


「私が考えます」


魔王が驚く。


「軍師として?」


「はい」


昆布はホワイトボードを持ってきた。


「今日から私は、魔王軍の作戦を考えます」


殴打が頷く。


「本格的ですね」


五利武も、


「プロゲーマーらしいです」


鍋はお茶を配る。


「軍師さん、お茶です」


「ありがとうございます」


魔王は笑った。


「じゃあ、やってみようか」


---


■最初の作戦


昆布がホワイトボードに書いた。


作戦その一


「魔王様をできるだけ働かせない」


魔王が固まった。


「……俺を?」


「はい」


「俺、魔王だよ?」


「だからです」


昆布は真剣だった。


「魔王様は便利屋の仕事、魔王軍の管理、家事、勇者対応など、多くの仕事をしています」


魔王が頷く。


「まあ……」


「負担が集中しています」


父が新聞を読みながら言った。


「確かにな」


魔王が父を見る。


「父さんまで」


昆布は続けた。


「そこで、魔王様が全部やるのではなく、適材適所で分担します」


勇気が言った。


「それ、軍師っぽい!」


「はい」


昆布は紙を配った。


「今日の便利屋依頼はこちらです」


魔王が見る。


依頼内容は、


「引っ越しの手伝い」


魔王が言った。


「これは結構大変そうだな」


昆布が頷く。


「だからこそ、役割分担です」


そしてホワイトボードに書いていく。


「殴打さん」


「はい」


「重い家具担当」


「任せてください」


「五利武さん」


「はい」


「細かい荷物を素早く運ぶ担当」


「分かりました」


「勇気さん」


「はい!」


「依頼主への声かけと全体補助」


「任せてください!」


「鍋さん」


「はい」


「昼食担当」


「分かりました」


「便意さん」


「はい!」


昆布は少し考えた。


「……」


「……」


「呪文練習担当」


便意が固まった。


「それ、仕事じゃないですよね?」


「魔王軍として重要です」


「はい……」


最後に、


「魔王様」


魔王が身構える。


「何?」


昆布は言った。


「指示と確認だけお願いします」


魔王が目を丸くする。


「俺、働かなくていいの?」


「はい」


「……」


魔王は少し感動した。


「軍師っていいな」


空耳さんが言った。


『私も軍師になろうか?』


魔王が即答する。


「空耳さんは忘れるからダメ」


『そうだった』


---


■引っ越し開始


依頼主の家に到着。


大きな家具が並んでいた。


魔王は全体を見回す。


「これ、どうする?」


昆布がすぐに答えた。


「まず家具を外へ出します」


殴打が大型の棚を見る。


「これなら私が持てます」


「お願いします」


殴打が持ち上げる。


「よいしょ!」


巨大な棚が軽々と持ち上がった。


依頼主が驚く。


「すごい……!」


昆布が言う。


「五利武さん、後ろをお願いします」


「はい」


五利武がすぐに移動する。


「通路、確保しました」


「勇気さん」


「はい!」


「角を確認してください」


「分かりました!」


勇気が先回りする。


「右、問題ありません!」


「進めます」


殴打が棚を運ぶ。


魔王は後ろから見ていた。


「……」


昆布が次々と指示を出している。


「次、テーブル」


「はい」


「五利武さん、先に小物を」


「分かりました」


「勇気さん、依頼主の方に確認を」


「はい!」


「鍋さん、そろそろ昼食の準備を」


「もう始めています」


「早いですね」


魔王は思わず笑った。


「昆布さん」


「はい」


「本当にゲームの指揮みたいだね」


昆布は頷く。


「ゲームでも、一人で全部やろうとすると負けますから」


魔王は納得した。


「なるほど」


---


■突然の問題


順調に進んでいた。


しかし――。


「大変!」


依頼主が叫んだ。


「どうしました?」


「この大きなソファが廊下を通りません!」


魔王軍全員が見る。


確かに大きい。


殴打が持ち上げようとする。


「持てますけど、通りません」


五利武が周囲を見る。


「角度を変えても難しいですね」


魔王が言う。


「どうする?」


昆布はソファを見る。


そして――。


部屋を見る。


廊下を見る。


玄関を見る。


数秒。


「……」


昆布が言った。


「玄関からではなく、庭側の窓から出しましょう」


依頼主が驚く。


「窓から?」


「はい」


昆布は説明する。


「このソファは横幅があります」


「はい」


「玄関は狭い」


「そうですね」


「しかし庭側の窓なら、家具を回転させるスペースがあります」


魔王が窓を見る。


「確かに」


昆布が続ける。


「殴打さんが持ち上げます」


「はい」


「五利武さんは周囲の確認」


「任せてください」


「勇気さんは窓の開閉」


「はい!」


「私は全体の角度を指示します」


魔王が言う。


「俺は?」


昆布は即答した。


「見守ってください」


「俺、完全に暇じゃない?」


「魔王様は最終確認です」


「それなら仕方ない」


そして――。


ソファは見事に窓から搬出された。


依頼主が驚く。


「すごい!」


魔王軍が拍手する。


魔王も昆布を見る。


「すごいな」


昆布は笑った。


「状況を見れば、方法はあります」


魔王は感心した。


「……軍師だ」


---


■昆布の本領


その日の夕方。


魔王軍は家に戻った。


魔王はリビングで昆布を見る。


「今日は助かったよ」


昆布は頭を下げる。


「ありがとうございます」


「正直、軍師って何するのかよく分からなかったけど」


「はい」


「今日で分かった」


魔王は笑う。


「みんなの力を無駄にしないようにするんだな」


昆布は頷く。


「そうです」


「それなら、魔王軍に必要だ」


勇気が言う。


「昆布さん、すごいです!」


殴打も、


「私たち、指示があると動きやすかったです」


五利武も、


「自分が何をすべきか迷いませんでした」


鍋も、


「昼食のタイミングまで完璧でした」


便意も手を挙げる。


「私も何をすればいいか分かりました」


魔王が便意を見る。


「呪文練習だけだったけどね」


「はい……」


---


■昆布、ゲームで魔王軍を鍛える


その夜。


昆布は突然、ゲーム機をテレビにつないだ。


魔王が驚く。


「何するの?」


「訓練です」


「ゲームで?」


「はい」


魔王軍が集まる。


昆布は説明した。


「魔王軍は、それぞれ能力が違います」


「はい」


「だから、状況判断の練習をします」


魔王がゲーム画面を見る。


「また俺たちが負けるんじゃない?」


昆布が笑う。


「今回は勝つことが目的ではありません」


「じゃあ何?」


「役割を理解することです」


昆布がゲームを始める。


敵が現れる。


「殴打さん、前へ」


「はい!」


殴打が操作するキャラクターで前進。


「五利武さん、横から」


「はい!」


「勇気さん、支援」


「はい!」


「魔王様、全体を見る」


「俺は?」


「指示してください」


魔王は少し考える。


「じゃあ……殴打、前!」


「はい!」


「五利武、右!」


「了解!」


「勇気、助けて!」


「はい!」


一気に敵を倒す。


魔王軍全員が驚く。


「勝った!」


魔王も驚く。


「勝った……」


昆布は頷いた。


「これが役割分担です」


魔王は笑った。


「なるほど」


以前は――。


それぞれが得意分野を活かす。


一人ではできないことも、全員ならできる。


魔王は少し嬉しくなった。


「昆布さん」


「はい」


「魔王軍、強くなったな」


昆布が笑う。


「まだまだです」


「え?」


「まだ改善できます」


魔王が苦笑する。


「プロゲーマーらしいな」


---


■昆布の軍師としての第一歩


翌朝。


魔王がリビングへ行くと――。


ホワイトボードが置かれていた。


そこには大きく、


「魔王軍・基本作戦」


と書かれている。


その下には、


①まず状況を見る


②得意な人に任せる


③無理をしない


④魔王様を無駄に働かせない


と書かれていた。


魔王は④を見る。


「これ、必要?」


昆布が答える。


「必要です」


「なんで?」


「魔王様が無理をすると、全体の効率が落ちます」


父が新聞を読みながら言った。


「正論だな」


母も頷く。


「魔王は昔から頑張りすぎるのよ」


魔王が困る。


「みんなして……」


勇気が言う。


「僕たちが魔王様を支えます!」


殴打も、


「そうです」


五利武も、


「私たちもいます」


鍋も、


「食事も任せてください」


便意も、


「魔術師として頑張ります!」


魔王はみんなを見る。


そして笑った。


「……ありがとう」


空耳さんが言った。


『魔王軍らしくなってきたな』


魔王が振り返る。


「空耳さん」


『何だ?』


「昆布さんを軍師にしたの、正解だったかもね」


空耳さんは少し黙った。


『……』


「どうした?」


『私が忘れていた』


「何を?」


『軍師を必要とするくらい、魔王軍が大きくなることを』


魔王は少し驚いた。


「……」


空耳さんの声が珍しく静かだった。


しかし――。


次の瞬間。


『まあ、昆布がいれば大丈夫だ』


「急に普通に戻ったな」


『私は褒めるのが苦手だ』


「知ってる」


魔王軍が笑った。


---


■そして昆布は、正式に軍師となった


その日の夜。


魔王は名簿を更新した。


昆布


職業――プロゲーマー。


魔王軍役割――


軍師・情報処理担当。


能力――


状況分析


先読み


作戦立案


役割分担


そして、その下に魔王が一言書き加えた。


「かなり頼りになる」


翌朝、昆布がそれを見つけた。


「魔王様」


「ん?」


「ありがとうございます」


「何が?」


「ここです」


昆布が「かなり頼りになる」という文字を指差す。


魔王は少し照れた。


「本当のことだから」


昆布は嬉しそうに笑った。


「これからも頑張ります」


そして――。


魔王軍には初めて、


「考えて戦う人」


が生まれた。


もちろん魔王は、戦うこと自体を好まない。


だから昆布も、


「どうすれば戦わずに済むか」


「どうすれば相手を傷つけずに済むか」


を最初に考える。


それこそが、魔王軍の軍師だった。


そして昆布のホワイトボードには、最後に一つだけ新しい項目が追加された。


⑤できれば戦わない。


魔王はそれを見て笑った。


「それ、俺の軍隊らしいな」


昆布は頷く。


「はい」


空耳さんが言う。


『良い軍師になった』


魔王が振り返る。


「空耳さんがちゃんと褒めた」


『私は最初から褒めるつもりだった』


「珍しい」


『ただ――』


「何?」


『次の作戦はまだ思いついていない』


「やっぱり空耳さんだな」


魔王軍の笑い声が、一軒家いっぱいに響いた。

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