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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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魔王軍に「昆布」

魔王の家。


その日の朝。


魔王軍は、朝食を食べながら相談していた。


「今日はどうする?」


魔王が聞く。


勇気が手を挙げた。


「応援です!」


「また?」


「はい!」


殴打がスマートフォンを見る。


「大会があります」


五利武も頷いた。


「以前、私たちがゴルフの応援に行ったのと同じですね」


鍋が言う。


「応援に行くと、皆さん喜んでくれますからね」


魔王は少し考えた。


「誰の大会?」


勇気が答えた。


「ゲーマー勇者です」


魔王は固まった。


「……あの?」


「はい」


魔王軍が一斉に思い出す。


以前、魔王の事務所にやってきた男。


ゲーム機を持っていた。


魔王軍全員で格闘ゲームをした。


しかし――。


誰一人として勝てなかった。


魔王も。


勇気も。


美咲も。


田中も。


全員負けた。


しかも相手は――。


「俺はプロゲーマーだから、ゲームじゃなきゃ勝てない」


と言って帰っていった男だった。


魔王は苦笑する。


「そういえば、あの人の大会か」


勇気が立ち上がった。


「応援しましょう!」


魔王軍全員が頷いた。


空耳さんが言う。


『横断幕を作ろう』


魔王が言う。


「また?」


『応援には必要だ』


「まあ……いいけど」


勇気が紙を持ってきた。


そして大きな文字で書いた。


『魔王軍の応援』


魔王はそれを見て言った。


「……普通だな」


勇気が胸を張る。


「今回は分かりやすくしました!」


「それが一番いいよ」


---


■大会会場


大会会場には、たくさんの観客が集まっていた。


巨大なスクリーン。


ステージ。


実況席。


そして選手たち。


魔王軍は観客席に座っている。


横断幕を広げる。


『魔王軍の応援』


周囲の観客がちらちら見る。


「魔王軍?」


「何の団体だ?」


「ゲーム大会なのに?」


魔王は少し恥ずかしくなった。


「勇気……」


「はい!」


「もう少し普通の応援にしない?」


「これが普通ですよ!」


「そうかな……」


そのとき――。


スクリーンに選手紹介が映し出された。


そこには――。


以前、魔王軍を全員倒したゲーマー勇者。


魔王が呟く。


「……強い人だ」


殴打も頷く。


「誰も勝てなかったと噂の」


五利武が言う。


「私も勝てないでしょうね」


鍋も、


「ゲームなのに、あれほど強いとは」


勇気は拳を握る。


「先生!」


魔王が振り返る。


「誰?」


「ゲーマー先生です!」


「いつから先生になったの?」


---


■ゲーマー勇者、快進撃


試合が始まった。


一回戦。


勝利。


二回戦。


勝利。


三回戦。


勝利。


準決勝。


勝利。


魔王軍はそのたびに拍手した。


「強い!」


「また勝った!」


「すごい!」


魔王も感心していた。


「本当に強いな……」


そして決勝。


相手もかなりの実力者だった。


しかし――。


ゲーマー勇者は冷静だった。


相手の動きを読んでいる。


攻撃をかわす。


反撃。


コンボ。


さらにコンボ。


最後の必殺技。


勝利。


会場が大歓声に包まれた。


「優勝!」


魔王軍も立ち上がる。


「おめでとう!」


勇気は横断幕を高々と掲げた。


『魔王軍の応援』


ゲーマー勇者がこちらを見る。


そして――。


小さく頭を下げた。


魔王も拍手した。


「本当に優勝したな」


空耳さんが言った。


『当然だ』


「なんで空耳さんが偉そうなんだよ」


『魔王軍が応援したからな』


「それはそうだけど」


---


■数日後


数日が経った。


魔王の家。


魔王軍はリビングに集まっていた。


勇気は掃除。


殴打はバットの手入れ。


五利武はゴルフクラブの手入れ。


鍋は料理の準備。


母は台所。


父は新聞。


そして魔王は――。


テレビを見ていた。


そのとき。


ピンポーン。


インターホンが鳴った。


魔王が立ち上がる。


「誰だろう?」


インターホンのカメラを見る。


そこには――。


一人の若い男。


魔王はすぐに分かった。


「……あっ」


勇気が後ろから覗き込む。


「誰ですか?」


魔王は答えた。


「この前のゲーマー勇者だ」


勇気が喜ぶ。


「先生!」


「だから先生じゃないって」


魔王は玄関へ向かった。


扉を開ける。


「こんにちは」


ゲーマー勇者が頭を下げる。


魔王は笑った。


「優勝おめでとう」


「ありがとうございます」


そしてゲーマーは続けた。


「応援もありがとうございます」


魔王は少し笑った。


「魔王軍全員で応援したからね」


「すごく嬉しかったです」


「どうぞ」


ゲーマーは家の中へ入った。


リビングへ案内される。


---


■ゲーマー勇者の秘密


ゲーマーはソファに座った。


魔王軍が周囲に集まる。


勇気が言う。


「やっぱり強いね」


殴打も、


「優勝はすごいです」


五利武も、


「全員に圧勝でしたね」


鍋も頷く。


「本当に強かったです」


ゲーマーは少し照れながら笑った。


「ありがとうございます」


そして――。


「実は」


魔王軍が見る。


「この前、皆さんと対戦してた時に――」


魔王が身を乗り出す。


「うん」


「良いコンボを発見したんです」


「え?」


勇気が驚く。


「僕たちとの対戦で?」


「はい」


ゲーマーは笑った。


「皆さんがあまりにも面白い動きをするので、いろいろ試していたら、新しいコンボを思いつきまして」


魔王が言う。


「それで優勝できたの?」


「それで優勝出来たもんです」


魔王軍が拍手する。


「すごい!」


「私たちが役に立ったんですね!」


殴打が嬉しそうにする。


五利武も笑う。


魔王も笑った。


「なるほどな」


そのとき――。


ガチャ。


母がリビングに入ってきた。


手には袋。


そして――。


「みんなで昆布買いに行ったの?」


魔王軍が振り返る。


「……コンボ」


母は不思議そうな顔をした。


「はい、便通大魔王どうぞ」


テーブルの上に、便通大魔王を何本か置く。


魔王が言う。


「母さん、昆布とコンボは違うよ」


「あら?」


母は笑う。


「そうだった?」


魔王がゲーマーを見る。


ゲーマーも少し困惑している。


その瞬間――。


『お前の名前は何だ?』


空耳さんの声が響いた。


ゲーマーが固まった。


「……?」


周囲をキョロキョロ。


右。


左。


後ろ。


天井。


「誰ですか?」


魔王が言う。


「空耳さんです」


『私だ』


ゲーマーはさらに周囲を見る。


「どこですか?」


『ここだ』


「……」


そしてゲーマーは答えた。


「名前は……」


少し考えて。


「昆布です」


魔王軍が固まった。


母が「あっ」と声を出した。


「まあ!」


そして笑う。


「あらごめんなさい、名前だったのね」


魔王が頭を抱える。


「母さんが先に昆布って言ったからだよ!」


母は悪びれずに笑っている。


「そうね」


ゲーマーも苦笑する。


「お母さんは関係ありません」


「名前が昆布?」


「はい」


「そうなんだ……」


空耳さんが言った。


『昆布よ』


「はい」


『魔王軍に入れ』


魔王が即座に言った。


「また!?」


---


■昆布、魔王軍へ


魔王は空耳さんに言う。


「魔王軍で何させるの?」


『軍師』


「軍師?」


『そして情報処理』


魔王は昆布を見る。


「さすがに昆布さんは、格ゲーのプロで良いでしょ」


昆布は頷いた。


「プロゲーマーは続けたいです」


「ほら」


空耳さんが言った。


『軍師と情報処理が出来そうじゃのう』


昆布が答える。


「情報処理なら得意です」


魔王が聞く。


「どのくらい?」


昆布は少し考えた。


「ハッキングもクラッキングもピッキングもマッチングも得意です」


魔王が固まった。


「……」


勇気が首を傾げる。


「すごいんですか?」


魔王は慌てて言う。


「いや、ちょっと待って」


昆布を見る。


「それ、どういう意味で言ってるの?」


昆布は普通の顔をしている。


「情報処理が得意という意味です」


「まあ……」


魔王は少し考えた。


「危ないことはしないでね」


「もちろんです」


昆布は笑った。


「合法的な範囲で、情報整理やゲームの分析などをしています」


魔王はホッとする。


「それならいい」


すると昆布が言った。


「あと、マッチングも得意です」


魔王が聞く。


「誰とマッチングするんだよ?」


昆布は即答した。


「魔王様です」


「俺か」


魔王軍が一斉に笑った。


勇気が言う。


「魔王様、マッチングされましたね!」


昆布が答える。


「あと魔王軍とです」


魔王は少し考える。


「……まあ、もう加入決定みたいな流れになってるけど」


空耳さんが言う。


『決定だ』


「俺の意見は?」


『大事だ』


「じゃあ聞いてよ」


『聞いた』


「いつ?」


『今』


「雑すぎる!」


---


■昆布の軍師能力


魔王は試しに昆布へ質問した。


「じゃあ昆布さん」


「はい」


「魔王軍にどんな役割が必要だと思う?」


昆布は周囲を見る。


勇気。


殴打。


五利武。


鍋。


母。


父。


そして魔王。


少し考える。


「役割はかなり揃っています」


魔王が頷く。


「そうなんだよ」


「ですが――」


昆布が続ける。


「情報を整理する人がいません」


魔王が黙る。


「……確かに」


昆布はテーブルの紙を見る。


そこには魔王軍の役割一覧がある。


昆布はそれを見て、すぐに分類を始めた。


「前衛」



殴打。


五利武。


「補助」


勇気。


「魔法」


便通。


「回復」


母。


「料理」


鍋。


「そして指揮」


昆布は魔王を見る。


「魔王様」


魔王が驚く。


「俺?」


「はい」


昆布は言った。


「魔王様が全体をまとめています」


魔王は少し照れる。


「まあ……」


すると昆布はさらに紙に書く。


「ただし、魔王様は便利屋の仕事もあります」


「そうなんだよ」


「そのため――」


昆布は言った。


「情報整理と作戦立案は私が担当します」


魔王軍がざわめく。


勇気が言う。


「すごい!」


殴打も頷く。


「軍師らしいです」


五利武も、


「プロゲーマーだけあって、状況判断が速い」


鍋も、


「これは頼りになりそうです」


魔王は昆布を見る。


「本当に軍師できそうだな」


昆布は笑う。


「ゲームでは、相手の動きを予測して戦う必要がありますから」


魔王は納得した。


「確かに」


---


■ただし名前は昆布


母が昆布を見る。


「昆布さん」


「はい」


「夕飯のお味噌汁に入ってくれる?」


「え?」


魔王が吹き出す。


「本人を具材にするなよ!」


母は笑う。


「あら、ごめんなさい」


勇気も笑う。


「昆布さん、料理担当の鍋さんと相性良さそうですね!」


鍋が言う。


「昆布出汁は美味しいですよ」


昆布が苦笑する。


「名前だけですよ」


父が新聞から顔を上げる。


「昆布は健康にいい」


「父さんまで!」


空耳さんが言う。


『魔王軍に鍋と昆布が揃った』


魔王が頭を抱える。


「食材じゃないから!」


---


■魔王軍の新しい軍師


夕方。


魔王は新しい魔王軍名簿を取り出した。


そして名前を書く。


昆布


役割は――。


軍師・情報処理担当


魔王はその文字を見つめる。


「……昆布か」


昆布が横から見る。


「はい」


「なんか軍師っていうより、料理に使いそうな名前だな」


鍋が言う。


「料理にも使えますよ」


「鍋さん!」


魔王軍が笑う。


昆布も笑った。


そして魔王は言った。


「でも、よろしくお願いします」


昆布は立ち上がって頭を下げる。


「こちらこそ、よろしくお願いします。魔王様」


勇気が手を叩く。


「これで魔王軍に軍師ができました!」


殴打も、


「心強いですね」


五利武も、


「私は攻撃します」


鍋は、


「私は料理をします」


母は、


「私は回復します」


父は、


「俺は防御だ」


昆布は全員を見る。


「では、皆さんの能力を把握して、効率よく動けるようにします」


魔王が言った。


「本当に軍隊っぽくなってきたな」


空耳さんが言った。


『魔王軍だからな』


魔王は名簿を見る。


「でも――」


「はい?」


「プロゲーマーは続けてくださいね」


昆布が笑った。


「もちろんです」


魔王は安心した。


「よかった」


これで魔王軍には――。


プロ野球選手。


プロゴルファー。


コック。


サラリーマン魔術師。


補助勇者。


魔女。


防御担当。


そして――。


プロゲーマー兼軍師。


魔王はリビングを見回した。


「……」


「なんの集団なんだ、これ」


勇気が答えた。


「魔王軍です!」


「まあ、そうなんだけど」


空耳さんが言った。


『名前だけは立派だ』


「名前だけって言うな」


そのとき昆布が言った。


「魔王様」


「ん?」


「次の大会、皆さんも来てください」


勇気が即答する。


「もちろんです!」


殴打も、


「応援します」


五利武も、


「横断幕を用意しましょう」


鍋も、


「お弁当を作ります」


母も、


「便通大魔王を持っていくわ」


父が言う。


「応援より、便通大魔王の方が目立つな」


魔王が笑った。


「じゃあ次の横断幕は――」


勇気が紙を取り出す。


「何にします?」


魔王は少し考えた。


そして――。


「普通に『昆布選手頑張れ』でいいよ」


昆布が笑う。


「ありがとうございます」


空耳さんが言った。


『私は「魔王軍の昆布」と書くのがいいと思う』


魔王が即座に答えた。


「絶対にやめて」


こうして魔王軍には、新たな軍師が加わった。


プロゲーマーとして数々の大会で勝ち上がる男。


魔王軍との対戦で新しいコンボを発見し、そのコンボを武器に優勝した男。


情報処理能力に優れ、状況判断も得意。


その名は――。


昆布。


ただし本人は、これからもプロゲーマーとして大会に出場する。


そして魔王は一つだけ心配していた。


「……鍋さんと昆布さんが一緒に厨房に入ったら、食材扱いされないだろうな」


鍋が振り返った。


「大丈夫ですよ」


昆布も笑った。


「私もそう思います」


母が台所から声をかける。


「昆布さん、お味噌汁に入って」


「だから本人を食材扱いするなって!」


魔王の家に、また笑い声が響いた。

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