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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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中学校にも魔王が降臨

中学校の入学式。


俺は新品の制服を着て、校門の前に立っていた。


小学校を卒業してから、俺は少しだけ期待していた。


中学校になれば。


もしかしたら。


俺の名前について何も言われなくなるんじゃないか。


「魔王」という名前も、もう珍しくないと思われるんじゃないか。


そんな淡い期待を抱いていた。


しかし。


その期待は。


入学式開始から三十分で消えた。


---


出席確認


担任の先生が名簿を持って教室に入ってきた。


「それでは、出席を取ります」


クラスが静かになる。


「青木」


「はい」


「佐藤」


「はい」


「田中」


「はい」


そして。


先生の指が止まった。


「……魔王」


俺は立ち上がった。


「はい!」


教室の何人かが振り返る。


「魔王?」


「本当に魔王って名前?」


「すげえ……」


俺は座る。


すると。


後ろから聞き覚えのある声。


「魔王!」


振り返る。


そこには。


健太がいた。


「……お前かよ」


「よっ!」


「なんでいるんだよ」


「同じ中学校だから」


「それは知ってる」


「同じクラスだったな」


「小学校から何回目だよ」


健太は指を折る。


「一年、二年、三年、四年、五年、六年……」


「数えるな」


「七年目!」


「長いな!」


俺たちの会話を聞いていた隣の生徒が笑った。


健太が俺を見る。


「安心しろ、魔王」


「何が?」


「中学校でも俺がいじってやる」


「安心できねえよ!」


---


制服問題


中学校生活最初の難関。


制服だった。


俺は朝、鏡の前に立った。


「……」


母さんが後ろから見る。


「似合ってるわよ」


「本当に?」


「うん」


父さんもやってきた。


「おお」


「どう?」


「魔王っぽい」


「やめて」


「黒い服だから」


「制服だから!」


そこへ母さん。


「でも中学生らしくなったわね」


父さんが頷く。


「うむ、制服で世界征服だ」


俺は鏡を見る。


少し大人になった気がする。


そして学校へ行った。


教室。


健太が俺を見る。


「おお!」


「何だよ」


「魔王、制服着てる」


「中学生だからな」


「魔王学園編スタート」


「何のシリーズだよ」


「今日から学校を支配する」


「普通に授業受けろ」


「魔王なのに?」


「だから名前!」


---


初めての定期テスト


中学校に入って一番衝撃的だったのは。


定期テストだった。


小学校のテストとは違う。


範囲が広い。


科目も多い。


そして。


前日になって健太が言った。


「魔王」


「何?」


「明日テスト」


「知ってる」


「勉強した?」


「した」


「何時間?」


「二時間」


「少なっ」


「お前は?」


「三十分」


「もっと少ないだろ!」


「俺は勇者だから」


「勇者は勉強しなくていいのか?」


「剣術がある」


「学校に剣術の授業ないぞ」


「体育がある」


「それは俺もある」


「じゃあ俺、体育型勇者」


「知らん」


テスト当日。


問題用紙が配られる。


健太が小声で言う。


「魔王」


「何?」


「終わった」


「始まったばかりだぞ!」


「人生が」


「テストで人生終わらせるな!」


---


テスト返却


数日後。


答案が返ってきた。


先生が言う。


「では、返します」


俺の点数。


八十二点。


「よし」


健太を見る。


「何点だった?」


健太は無言。


「見せろよ」


「嫌だ」


「何点?」


「……」


「言え」


「三十八」


「お前、何した?」


「勉強」


「した結果がそれか」


「魔王」


「何?」


「勇者にも敗北はある」


「テストで勇者を語るな」


健太は机に突っ伏した。


「次は勝つ」


「誰に?」


「数学モンスター」


「数学を敵扱いするな」


---


部活動見学


中学校では部活動が始まる。


放課後。


俺と健太は校内を歩いていた。


「どの部活にする?」


健太が聞く。


「まだ決めてない」


「俺は剣道」


「本当に勇者路線なのか?」


「当然」


「じゃあ俺も剣道にしようかな」


「魔王が剣持つの?」


「名前だけ魔王だから」


「魔王が剣を持ったらラスボスじゃん」


「お前が勇者なら戦えるだろ」


「……」


健太が真顔になる。


「俺、やっぱり別の部活にする」


「なんで?」


「魔王と戦いたくない」


「お前が言い出したんだろ!」


---


体育祭


体育祭の練習。


先生が言う。


「二人一組になってください」


俺は健太を見る。


健太も俺を見る。


「……」


「……」


「またお前か」


「また魔王か」


「何で毎回一緒なんだよ」


「運命」


「やめろ」


二人三脚。


足を結ぶ。


「せーの!」


「右!」


「左!」


「右!」


「お前逆!」


「魔王だから!」


「関係ない!」


転倒。


ドサッ。


先生が駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか?」


俺は起き上がる。


「大丈夫です」


健太も起きる。


「先生」


「何ですか?」


「魔王が俺を転ばせました」


「お前が逆に動いたんだろ!」


先生が笑う。


「二人とも、もう少し息を合わせましょう」


健太が俺を見る。


「魔王」


「何?」


「俺たち、息合ってないな」


「七年間一緒なのにな」


「むしろ七年間一緒だから合わないのかも」


「どういう理屈だよ」


---


身体測定


中学生になると。


身体測定も少し気になる。


俺は身長計に乗った。


「……」


先生が数字を見る。


「伸びましたね」


俺も見る。


「やった」


健太が乗る。


「……」


先生が測る。


「健太くんも伸びましたね」


健太が俺を見る。


「何センチ?」


「俺の方が高い」


「……」


健太が悔しそうな顔をする。


「魔王め」


「身長で魔王扱いするな」


「最終形態は10メートルか」


「ただの成長期だ!」


---


思春期の男子


中学二年生。


クラスの男子たちは少しずつ大人びてきた。


声変わりする奴。


身長が急に伸びる奴。


女子を意識し始める奴。


俺も少しだけそういうことを考えるようになった。


ある日の休み時間。


健太が真剣な顔で話しかけてきた。


「魔王」


「何?」


「好きな人いる?」


俺は固まった。


「……」


「いる?」


「いない」


「本当に?」


「本当」


「じゃあ好きなタイプは?」


「知らない」


「魔王なのに恋愛経験ゼロ?」


「お前もだろ!」


「俺は勇者だから、これから姫が現れる」


「現実を見ろ」


「魔王にも姫が必要だろ」


「俺はいらない」


「じゃあ魔王城は?」


「ない」


「国は?」


「ない」


「部下は?」


「いない」


「財宝は?」


「ない」


健太が腕を組む。


「魔王、何もないな」


「うるさい!」


---


文化祭


文化祭ではクラスの出し物を決めることになった。


候補は、


お化け屋敷。


喫茶店。


劇。


そして。


誰かが言った。


「魔王の劇がいい!」


俺は嫌な予感がした。


「待て」


健太が立ち上がる。


「魔王役は魔王!」


「お前、絶対それやりたいだけだろ」


「本物だから」


「俺は本物じゃない!」


「名前は?」


「魔王」


「ほら」


「名前だけ!」


結局。


クラスの投票で劇に決まった。


そして。


俺は魔王役になった。


健太は勇者役。


先生が台本を渡してくれる。


俺は読む。


「魔王は世界征服を企む……」


健太が言う。


「役作りいらないな」


「お前は黙れ」


---


文化祭当日


舞台。


俺は黒いマントを着て立っていた。


健太が剣を持って現れる。


「魔王!」


「来たな、勇者!」


客席から笑い声。


健太が台詞を言う。


「世界を返してもらうぞ!」


俺は台本通りに言う。


「断る!」


健太が剣を構える。


「覚悟しろ!」


俺も構える。


しかし。


ここで健太がアドリブを入れた。


「魔王!」


「何だ!」


「お前、宿題やったか?」


客席が爆笑。


俺は一瞬固まった。


「……魔王は、宿題なんかやらない」


さらに笑い声。


俺も負けずに返す。


「勇者こそテスト三十八点だっただろ!」


会場が大爆笑。


先生が舞台袖で頭を抱えている。


健太が叫ぶ。


「それは秘密だろ!」


「自分で言っただろ!」


「魔王!」


「何だ!」


「卑怯だぞ!」


「お前が始めたんだろ!」


観客から拍手。


劇なのか漫才なのか。


誰にも分からなくなっていた。


最後。


健太が倒れるふりをする。


「くっ……魔王……強い……」


俺が言う。


「当然だ」


健太が小声で言う。


「お前、楽しんでるだろ」


俺も小声で返す。


「お前もな」


二人で笑った。


---


卒業前


中学三年生。


卒業が近づいてきた。


教室の黒板には、


「卒業まであと○日」


と書かれている。


俺は黒板を見た。


「もう終わるんだな」


健太が隣に来る。


「何が?」


「中学校」


「そうだな」


「小学校からずっと同じクラスだったな」


「そうだな」


「中学校も」


「うん」


健太が笑う。


「高校も同じだったりして」


俺は笑った。


「さすがにないだろ」


「だな」


俺たちは笑った。


このとき。


俺たちはまだ知らなかった。


この先。


それぞれの人生が少しずつ変わっていくことを。


今はまだ。


ただの中学生。


「魔王」という名前を持った。


どこにでもいる――


とは言い切れない中学生だった。

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