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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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高校にも魔王が降臨

高校の入学式。


俺は校門を見上げた。


「……高校か」


中学校を卒業して。


俺たちは別々の高校になる――。


そう思っていた。


ところが。


教室に入った俺は。


自分の席を確認した。


窓際。


悪くない。


そして。


黒板に貼られた座席表を見る。


「……」


俺は固まった。


その隣。


見覚えのある名前。


健太。


「嘘だろ……」


背後から声がした。


「魔王!」


俺は振り返った。


健太だった。


「お前かよ!」


「お前こそ!」


「また同じクラス?」


「三年連続!」


「小学校六年、中学校三年、高校一年……」


「合計十年!」


「怖いわ!」


健太が笑った。


「俺たち、腐れ縁だな」


「腐りすぎだろ」


「熟成されてる」


「チーズみたいに言うな」


こうして。


高校生活も。


俺と健太は同じクラスになった。


---


高校生になった魔王


高校では。


さすがに俺の名前を見ても、みんな子供のようには騒がない。


そう思っていた。


甘かった。


担任が出席を取る。


「……魔王」


「はい」


クラスがざわつく。


「本当に魔王って名前なんだ」


「すごいな」


「珍しい」


すると健太が手を挙げた。


「先生!」


先生が嫌そうな顔をする。


「健太くん。何ですか?」


「魔王は本当に魔王です」


俺はすぐに立ち上がった。


「違います!」


教室が笑う。


先生も笑っている。


「魔王くん。自分で否定するんですね」


「はい。人間です」


健太が言う。


「証拠は?」


「保険証!」


「持ってきてるの?」


「持ってきてない!」


「じゃあ魔王じゃん」


「なんでだよ!」


高校最初の日。


俺たちはすでに漫才をしていた。


---


第一話 高校生の朝は眠い


高校生活で最初に感じたこと。


眠い。


とにかく眠い。


ある朝。


教室で俺は机に突っ伏していた。


健太がやってくる。


「おはよう、魔王」


「……おはよう」


「寝不足?」


「うん」


「何時に寝た?」


「一時」


「遅いな」


「宿題してた」


「偉いじゃん」


「ありがとう」


「何の宿題?」


「……忘れた」


「お前、宿題したんじゃないの?」


「した気がする」


「気がする?」


「夢の中で」


「それ宿題じゃない」


俺は顔を上げた。


「健太は?」


「俺は三時」


「もっと遅いじゃん」


「スマホ」


「何してた?」


「動画」


「馬鹿だろ」


「勇者は夜更かしする」


「宿屋で寝ろ。お前、勇者設定まだ続いてるのか」


「人生のテーマだから」


「知らんわ!」


---


第二話 スマホ


高校生になると。


スマートフォンを持っている人が一気に増えた。


休み時間。


みんなスマホを触っている。


健太も触っている。


俺も触っている。


健太が俺の画面を見る。


「魔王」


「何?」


「待ち受け何?」


「普通の風景」


「地味」


「お前は?」


「俺はこれ」


画面を見る。


筋肉ムキムキの男がポーズを取っている。


「何だこれ」


「俺の理想」


「誰だよ」


「知らない」


「知らないのかよ!」


「でも強そう」


「それだけ?」


「重要だろ」


「お前、高校生になっても基準が強さなのか」


健太がスマホをしまう。


「魔王は?」


「何?」


「どんな女性がタイプ?」


「急に何だよ」


「高校生だから」


「高校生関係ないだろ」


「彼女欲しくない?」


「……」


俺は黙った。


健太がニヤニヤする。


「いるんだ?」


「いない!」


「今の間は?」


「考えてただけ!」


「怪しい」


「うるさい!」


---


第三話 恋愛相談


ある日の放課後。


健太が真剣な顔をしていた。


「魔王」


「何?」


「相談がある」


「珍しいな」


「俺、好きな人ができた」


俺は驚いた。


「本当に?」


「うん」


「誰?」


「言わない」


「なんで相談した?」


「作戦を考えてほしい」


「俺に?」


「お前しかいない」


俺は少し嬉しくなった。


「分かった」


「まず、どうしたい?」


「話しかけたい」


「普通だな」


「でも緊張する」


「お前でも緊張するのか」


「する」


「じゃあ普通に話せばいい」


「それができないから相談してる」


「じゃあ……」


俺は考えた。


「『こんにちは』って言えば?」


「それだけ?」


「うん」


「作戦名は?」


「作戦?」


「必要だろ」


「……」


俺は適当に言った。


「作戦・こんにちは」


健太が真顔になる。


「ダサい」


「お前が考えろ!」




---


第四話 先生との戦い


高校の先生は。


中学校の先生より厳しかった。


ある日。


授業中。


健太が眠っている。


先生が黒板から振り返る。


「健太」


「……」


「健太!」


「はい!」


飛び起きる。


「寝ていましたね」


「寝てません」


「では、今何の説明をしていましたか?」


健太が固まる。


「……魔王について」


教室が爆笑。


俺も笑った。


先生が俺を見る。


「魔王くん、笑ってないで答えてください」


「俺も分かりません!」


先生がため息をつく。


「二人とも後で残りなさい」


健太が小声で言う。


「魔王」


「何?」


「俺たち、処刑される?」


「高校に処刑制度ないわ!」


---


第五話 体育祭


体育祭。


クラス対抗リレー。


俺たちは選手になった。


健太が言う。


「魔王」


「何?」


「俺たち、ついに決着をつける時が来た」


「何の?」


「どっちが速いか」


「中学校でも俺が勝っただろ」


「高校では違う」


「練習したの?」


「してない」


「じゃあ同じだろ」


「精神力が違う」


「走るのに精神力?」


「重要だ」


本番。


スタート。


俺が走る。


全力。


バトンを渡す。


そして健太。


健太も走る。


結果。


健太が最初にゴールした。


「……」


「健太」


「……」


「大丈夫?」


「勝った」


「うん」


「魔王に」


「同じチームだろ。チームが勝ったんだよ。名前は関係ない」


「俺、勇者なのに」


「だから何なんだよ、その設定!」


---


第六話 文化祭


高校の文化祭。


クラスでは喫茶店をすることになった。


健太が俺を見る。


「魔王」


「何?」


「お前、店長な」


「なんで?」


「名前が魔王だから」


「関係ない!」


「店を支配して」


「普通に接客するわ!」


俺はエプロンを着た。


鏡を見る。


「……」


健太が後ろから言う。


「魔王、似合ってる」


「何が?」


「エプロン」


「魔王がエプロンしてるだけだろ」


「世界征服する料理人」


「設定を増やすな」


文化祭当日。


俺は注文を取る。


「いらっしゃいませ!」


健太が厨房から叫ぶ。


「魔王! 注文!」


「今行く!」


「魔王が働いてる!」


「お前も働け!」


「俺、勇者だから」


「文化祭では全員働くんだよ!」


クラス全員が笑った。


---


第七話 進路


高校生活が進むにつれて。


少しずつ。


「将来」という言葉が話題になるようになった。


ある日の昼休み。


健太が聞いてきた。


「魔王」


「何?」


「卒業したら何する?」


「まだ分からない」


「俺も」


「お前は勇者になるんじゃないの?」


健太が笑った。


「それ、まだ言ってる?」


「お前が昔から言ってるだろ」


「子供の頃の冗談だよ」


「そうなの?」


「そう」


俺は笑った。


「じゃあ、俺も魔王やめるかな」


「え?」


「普通の人になる」


健太が笑った。


「無理だろ」


「なんで?」


「名前が魔王だから」


「そこかよ!」


二人で笑った。


---


第八話 いつもの二人


高校生活は。


思っていたより忙しかった。


勉強。


体育祭。


文化祭。


友達。


恋愛。


進路。


毎日いろいろなことが起きた。


でも。


一つだけ変わらないものがあった。


健太が俺を「魔王」と呼ぶこと。


そして。


俺が健太にツッコむこと。


「魔王」


「何?」


「消しゴム貸して」


「自分の使え」


「忘れた」


「昨日も忘れたな」


「魔王なら持ってるだろ」


「魔王関係ない!」


「魔王」


「何だよ!」


「明日テスト」


「知ってる」


「勉強した?」


「した」


「何時間?」


「三時間」


「すげえ」


「お前は?」


「してない」


「おい!」


「勇者だから」


「むしろ勉強しろ!」


教室に笑い声が広がる。


俺も笑った。


高校生になっても。


俺たちは変わらなかった。


少しだけ大人になった。


身体も大きくなった。


考えることも増えた。


でも。


二人で話すと。


小学生の頃と同じだった。


魔王と。


健太。


ただの二人の高校生。


まだ。


未来のことなんて。


何も分からない。


ただ毎日を笑って過ごしていた。


そして。


この平凡な高校生活が。


俺の人生にとって。


どれほど大切な時間だったのか。


その意味を知るのは。


ずっと後のことになる。


今はまだ。


俺たちは何も知らない。


ただ。


明日のテストに怯えながら。


「魔王、消しゴム貸して」


「買え!」


そんなくだらない会話をしていた。

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