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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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小学校に魔王が降臨

小学校の入学式。


俺は新品のランドセルを背負って、母さんと一緒に学校へ向かった。


母さんは何度も俺の服を確認していた。


「ハンカチ持った?」


「持った」


「ティッシュは?」


「持った」


「名前は?」


「……魔王」


「そこは確認しなくていいわよ」


俺はため息をついた。


「母さんが聞いたんじゃん」


「そうだったわね」


俺の名前は魔王。


保育園では、それなりに有名だった。


しかし。


小学校では。


さらに有名になった。


しかも。


俺自身が予想していなかった方向へ。


---


入学式


一年一組。


担任の先生が出席を取る。


「青木くん」


「はい!」


「佐藤さん」


「はい!」


「田中くん」


「はい!」


そして。


先生が名簿を見て、一瞬止まった。


「……魔王くん」


教室が静かになった。


俺は立ち上がる。


「はい!」


すると。


後ろから小声が聞こえた。


「本当に魔王だ……」


「ラスボスじゃん」


「強そう」


俺は振り返った。


「強くないぞ」


男の子が驚く。


「え?」


「俺、普通だから」


「魔王なのに?」


「名前が魔王なだけ」


「じゃあ何ができるの?」


「逆上がり」


「魔王じゃん!」


「何でだよ!」


教室が笑った。


先生まで笑っていた。


俺は席に座った。


――ああ。


また始まった。


俺の名前を使った漫才が。


---


最初の友達


隣の席になった男の子が話しかけてきた。


「なあ」


「何?」


「魔王って、本名?」


「本名」


「親がつけたの?」


「そう」


「すげえな」


「俺もそう思う」


男の子が笑った。


「俺、健太」


「よろしく」


「よろしく、魔王」


「いきなり呼び捨てかよ」


「いいだろ?」


「まあいいけど」


「じゃあ魔王」


「何だよ」


「宿題やった?」


「まだ」


「魔王なのに?」


「魔王関係ないだろ!」


これが。


俺と健太の最初の会話だった。


そして。


健太は、その日から俺を徹底的にいじるようになった。


---


魔王の給食


給食の時間。


メニューはカレーだった。


健太が俺を見る。


「魔王」


「何?」


「今日、魔王っぽい飯だぞ」


「カレー?」


「うん」


「普通だろ」


「魔王と言ったらカレーだろ」


「そんな設定ない」


「ある」


「ない」


「俺が今作った」


「勝手に設定作るな」


向かいの女子が笑う。


「魔王って辛いの平気?」


「普通」


「じゃあ激辛食べてみて」


「嫌だ」


「魔王なのに?」


「魔王でも嫌なものは嫌なんだよ!」


健太が手を叩いた。


「出た! 庶民派魔王!」


「誰が庶民派だ!」


「カレー大好き魔王!」


「普通の小学生だ!」


先生がこちらを見る。


「魔王くん」


「はい」


「給食中は静かに食べましょうね」


「はい……」


健太が小声で言う。


「魔王、先生に怒られてる」


「お前もだよ」


「俺は勇者だから大丈夫」


「勇者も怒られるわ!」


---


体育の時間


体育では、マラソンをすることになった。


先生が説明する。


「校庭を五周します」


みんなが走り始めた。


俺も走る。


一周。


二周。


三周。


四周。


そして五周。


ゴール。


俺は息を切らしながら立っていた。


健太がやってくる。


「魔王!」


「何……」


「疲れてる?」


「当たり前だろ」


「魔王なのに?」


「魔王だって疲れる!」


「体力ないな」


「お前より速かっただろ!」


健太が黙った。


俺は笑った。


「どうした勇者?」


「……」


「勇者、負けたな」


「くっ……セーブポイントから再挑戦」


「いつセーブしたんだよ。魔王の勝ち」


俺は胸を張った。


すると先生が言った。


「魔王くん、今日は一番でしたね」


「ありがとうございます!」


健太が叫ぶ。


「魔王が調子に乗ってる!」


俺は振り返った。


「今日だけは乗らせろ!」


みんなが笑った。


---


魔王の家


ある日の放課後。


健太が俺の家に遊びに来た。


玄関を開ける。


母さんが出てくる。


「あら、いらっしゃい」


健太が頭を下げる。


「こんにちは!」


母さんが笑う。


「魔王のお友達?」


「はい!」


健太は少し考えた。


そして。


「魔王軍です」


母さんが固まった。


俺はすぐに突っ込んだ。


「勝手に入隊するな!」


健太が笑う。


「給料ください」


「小学生に給料払う魔王がどこにいる!」


母さんが大笑いする。


「ふふふ……面白い子ね」


俺はため息をついた。


「こいつ、学校でもずっとこんなんだよ」


すると。


父さんが奥から出てきた。


「お、友達か?」


「うん」


健太が父さんを見る。


「お父さんですか?」


「そうだ」


健太は父さんの名前を聞いた。


「お名前は?」


「牙城」


健太が目を丸くする。


「……」


父さんが笑う。


「どうした?」


「強そう」


俺は頷いた。


「だろ?」


健太が俺を見る。


「じゃあ、お母さんは?」


母さんが答える。


「魔女です」


健太が固まった。


「……」


俺も黙った。


父さんが笑った。


「どうだ?」


健太が俺を見る。


「魔王」


「何?」


「お前の家、ゲームのラスボス一家じゃん」


「俺もそう思う!」


全員が笑った。


---


授業参観


数週間後。


授業参観があった。


教室の後ろには保護者が並んでいる。


俺は少し緊張していた。


先生が黒板に問題を書く。


「では、この問題を分かる人?」


誰も手を挙げない。


先生が困っている。


俺は手を挙げた。


「はい、魔王くん」


俺は答えた。


「十五です」


「正解!」


母さんが後ろで嬉しそうに笑った。


すると。


健太が手を挙げた。


「先生!」


「はい」


「魔王が賢いです!」


教室が笑った。


俺は振り返った。


「お前、俺を何だと思ってるんだよ!」


「魔王」


「だから名前!」


「賢い魔王」


「余計な一言!」


先生まで笑っていた。


---


遠足


遠足の日。


バスに乗る。


俺と健太は隣の席だった。


健太が言う。


「魔王」


「何?」


「遠足の目的地知ってる?」


「知ってる」


「どこ?」


「動物園」


「違う」


「え?」


健太は真剣な顔をした。


「魔王城。」


「ないわ!俺の家は普通の家だ」


「今日、魔王城を探す」


「そんな遠足じゃない」


「先生に聞いてみよう」


「やめろ」


健太が先生に聞いた。


「先生!」


「何ですか?」


「魔王城はどこですか?」


先生は俺を見る。


俺は頭を抱えた。


「……この子のせいです」


先生が笑った。


「魔王城はありません」


健太が残念そうに言った。


「じゃあ、魔王の家でいいか」


「なんで俺の家なんだよ!」


バスの中が笑いに包まれた。


---


俺の名前


小学校四年生になる頃には。


俺の名前を知らない人はいなくなっていた。


でも。


昔とは少し違った。


「魔王」と呼ばれても。


もう嫌ではなかった。


むしろ。


自分からネタにするようになった。


ある日。


新しく転校してきた子がいた。


先生が紹介する。


「こちらが新しいお友達です」


転校生が俺を見る。


「君の名前は?」


「魔王」


「……え?」


「本名」


「本当に?」


「本当に」


「じゃあ、強い?」


俺は少し考えた。


「足は速い」


健太が横から言う。


「でも給食は普通!」


俺は健太を見る。


「お前は黙ってろ!」


転校生が笑った。


「面白い名前だね」


俺も笑った。


「ありがとう」


それは。


俺が初めて。


自分の名前を「面白い」と言われて。


素直に嬉しいと思えた瞬間だった。


---


そして五年生へ


俺は少しずつ強くなっていった。


身体も大きくなった。


走るのも速くなった。


運動が好きになった。


そして。


何より。


人前で笑えるようになった。


「魔王」という名前を隠さなくなった。


からかわれたら。


自分から笑いに変えた。


それは。


俺にとって大きな変化だった。


だが。


中学生になると。


からかい方は少しずつ変わっていく。


保育園の頃。


「弱い魔王」


と笑われていた俺が。


いつか本当に強くなりたいと思うようになった、その始まりは。


この中学生時代だった。

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