↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/162

魔王 VS 水虫

キックボクシング初戦。


俺は勝った。


しかも――


ローキック一発。


強敵のハイキックをかわし。


俺のローキックが炸裂。


相手は倒れ。


試合終了。


俺は。


またしても。


有名になった。


テレビでは。


何度も。


何度も。


その映像が流された。


『魔王選手、驚異のローキック!』


『ハイキックをかわして一撃!』


『元ボクシング世界王者・魔王、キックボクシングでも初戦突破!』


俺は。


テレビを見ながら。


「……」


ため息をついた。


「また有名になった」


母さんが。


お茶を飲みながら言った。


「いいじゃない」


「よくないよ」


「有名になったら仕事も増えるでしょ」


「……」


嫌な予感がした。


そして。


その予感は。


翌日。


現実になった。


---


またCM?


ジムから帰ると。


母さんが言った。


「魔王」


「何?」


「またCMの話が来てるわよ」


「……」


俺は。


靴を脱ぐ手を止めた。


「また?」


「また」


「今度は何?」


母さんは。


封筒を渡してきた。


俺は。


ゆっくり開ける。


「……」


商品名を見る。


「…………」


俺は。


固まった。


「母さん」


「何?」


「これ」


「うん」


「読んでいい?」


「書いてあるじゃない」


俺は。


一文字ずつ読んだ。


「水虫……」


「うん」


「大魔王……」


「うん」


「…………」


俺は。


顔を上げた。


「なんで?」


母さんが。


笑う。


「足のCMだからじゃない?」


「そういうことじゃない!」


俺は。


頭を抱えた。


「また大魔王じゃん!」


---


悪口ではないのか


俺は。


商品資料を読む。


商品。


『水虫大魔王』


効能。


水虫対策。


使用方法。


……。


俺は。


資料を閉じた。


「……」


「これ」


「うん」


「もはや悪口じゃないのか?」


母さん。


「商品名でしょ」


「分かってるけど!」


俺は。


前回のCMを思い出す。


『便通大魔王』


そして。


今回。


『水虫大魔王』


俺は。


両手で顔を覆った。


「俺の名前を使った商品が」


「どんどん変な方向へ行ってない?」


母さんが。


笑いながら言う。


「人気者なんだから仕方ないわよ」


「人気者っていうか」


俺は。


資料を見る。


「便利な名前として使われてない?」


---


空耳登場


その夜。


ベッド。


俺は。


天井を見ながら。


「空耳さん」


――何だ。


「またCMが来た」


――ほう。


「水虫大魔王」


――……。


「どう思う?」


――知名度が大事だ。


「……」


俺は。


しばらく黙った。


「それだけ?」


――それだけだ。


「俺の心配は?」


――知名度が上がる。


「いや」


――有名になる。


「いやいや」


――仕事が増える。


「そこじゃない!」


――いいことではないか。


俺は。


布団の上で。


頭を抱える。


「俺の名前を何だと思ってるんだよ」


――魔王だ。


「本名だよ!」


――そうだった。


「そうだったじゃないよ!」


---


魔王、CM撮影へ


そして。


撮影当日。


スタジオ。


スタッフが。


元気よく叫ぶ。


「魔王さん、よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします」


俺は。


台本を見る。


「……」


今回の設定。


俺が。


悪の水虫軍団と戦う。


そして。


必殺技。


ローキック。


「……」


俺は。


監督を見る。


「本当にこれやるんですか?」


「もちろんです!」


「俺が?」


「魔王さんが!」


「……」


俺は。


もう慣れてきた。


「分かりました」


---


魔王VS水虫


セット。


巨大な足の模型。


その上に。


小さな水虫怪人。


「……」


俺は。


それを見る。


「これ」


監督。


「はい」


「水虫?」


「水虫です」


「怪人にする必要あります?」


「CMですから!」


「……」


俺は。


諦めた。


カメラ。


スタート。


監督。


「アクション!」


水虫怪人が。


「フハハハハ!」


笑う。


俺。


「……」


水虫怪人。


「この足は俺のものだ!」


俺は。


ゆっくり。


構える。


そして。


ローキック。


「バンッ!」


水虫怪人。


「ぐわあああ!」


吹っ飛ぶ。


監督。


「カット!」


「どうです?」


監督。


「最高です!」


俺。


「……」


スタッフが。


拍手。


「迫力あります!」


「本物のローキックみたい!」


「本物です」


俺は。


小さく答えた。


「本物のローキックです」


---


問題の決め台詞


次のシーン。


監督が。


俺を見る。


「魔王さん」


「はい」


「ここで商品を持ってください」


「はい」


俺は。


商品を持つ。


水虫大魔王


「……」


監督。


「笑顔でお願いします!」


俺。


「……」


ニコッ。


「もっと!」


ニコニコ。


「爽やかに!」


ニコニコニコ。


俺は。


世界チャンピオンの威厳を全部捨てた。


そして。


台詞。


「水虫を――」


一呼吸。


「魔王のローキックでやっつけろ!」


ポーズ。


「水虫大魔王!」


「カット!」


スタジオ。


拍手。


「最高!」


「完璧!」


「魔王さん、いいですね!」


俺は。


商品を持ったまま。


「……」


心の中で。


――俺は一体、何になったんだ。


---


放送開始


数週間後。


CM放送開始。


テレビ。


『水虫を魔王のローキックでやっつけろ!』


俺。


「……」


テレビを消す。


次の番組。


また。


『水虫大魔王!』


「……」


俺は。


テレビを消した。


スマホを見る。


動画広告。


『水虫大魔王!』


「…………」


スマホを伏せる。


外へ出る。


駅。


巨大広告。


そこには。


俺。


ローキックのポーズ。


そして。


大きく。


水虫大魔王


「…………」


俺は。


帽子を深くかぶった。


メガネ。


マスク。


完璧な変装。


しかし。


通行人。


「魔王じゃない?」


「え?」


「あのローキックの!」


「水虫大魔王の人!」


「……」


俺は。


その場から。


静かに離れた。


---


ジムでも


翌日。


ジム。


俺が入る。


「おはようございます」


トレーナー。


「おはようございます」


少し間。


「……水虫大魔王」


「やめてください」


「いや」


トレーナーが笑う。


「テレビ見ました」


「忘れてください」


「ローキックで水虫を倒してましたね」


「忘れて!」


「すごいキックでした」


「格闘技の話にしてください」


「水虫に対しては?」


「そこから離れて!」


ジム中。


笑い声。


俺は。


顔を赤くした。


---


そして練習


俺は。


サンドバッグの前に立った。


「……」


ローキック。


「バンッ!」


トレーナー。


「水虫!」


「違います!」


「バンッ!」


「水虫大魔王!」


「やめろ!」


「バンッ!」


「水虫をやっつけろ!」


「格闘技の練習なんだから!」


俺は。


笑いながら。


ローキックを蹴り続ける。


「バン!」


「バン!」


「バン!」


サンドバッグが。


大きく揺れる。


トレーナーが。


「でも」


「はい?」


「本当にローキック強くなりましたね」


俺は。


少し真剣な顔になる。


「……ありがとうございます」


「最初はローキックだけ好きだったのに」


「はい」


「今じゃ立派な武器です」


俺は。


サンドバッグを見る。


「……」


そうだ。


最初は。


ただ。


顔を殴りたくなかった。


お腹も。


できれば殴りたくなかった。


だから。


ローキックが好きだった。


でも。


今は違う。


ローキックは。


俺自身が磨いてきた。


俺の武器。


そして。


空耳が与えてくれた力でもある。


「……」


俺は。


もう一度。


構えた。


「行きます」


「どうぞ」


「バンッ!」


サンドバッグが。


大きく揺れる。


俺は。


少し笑った。


---


夜のベッド


その夜。


俺は。


ベッドに入った。


「空耳さん」


――何だ。


「俺さ」


――うむ。


「今日もCMのこと言われた」


――知名度が上がっている証拠だ。


「水虫大魔王って呼ばれた」


――有名になったな。


「嬉しくない」


――なぜだ?


「俺は格闘家なんだぞ」


――そうだな。


「水虫を倒す人じゃない」


――でも。


「何?」


――ローキックは本当に強い。


「……」


俺は。


少し笑った。


「まあ」


「それはそうだけど」


――だから。


「うん」


――胸を張れ。


「……」


俺は。


天井を見た。


「でも」


――何だ。


「次のCMは」


――うむ。


「もう少し格闘技っぽいやつがいい」


――分かった。


「本当に?」


――知名度が大事だ。


「またそれかよ!」


俺は。


布団をかぶった。


そして。


布団の中から。


小さな声で言った。


「……頼むから」


「次は普通の商品にしてくれ」


――それは私には決められない。


「誰が決めてるんだよ」


――世の中だ。


「世の中、怖いな……」


こうして。


世界チャンピオン。


総合格闘技ファイター。


キックボクサー。


そして。


CM俳優。


さらに。


便通大魔王と水虫大魔王の男。


魔王の肩書きは。


また一つ。


増えた。


しかし。


本人が本当に目指しているものは。


相変わらず。


ただ一つ。


「普通のサラリーマンになりたい」


だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。