ボクサーとアルバイト
俺は高校をとっくに卒業していた。
今の俺の生活は。
朝――朝練。
昼――アルバイト。
夕方――ボクシングジム。
夜――帰宅。
そして。
たまに試合。
それが俺の日常だった。
プロボクサーになったからといって。
すぐに大金持ちになれるわけではない。
むしろ。
「……今月もギリギリだな」
給料日前。
財布の中を見る。
「……」
千円札が一枚。
小銭が少々。
俺は財布を閉じた。
「よし」
「何がよしなんだよ」
母さんが後ろから言った。
「いや」
俺は笑った。
「まだ生きていける」
「その考え方やめなさい」
「大丈夫だよ」
「あなた、プロボクサーでしょう?」
「一応」
「だったら、もう少し堂々としてなさい」
「プロボクサーだからって、お金が自動的に入ってくるわけじゃないんだよ」
母さんはため息をついた。
「分かってるわよ」
そして。
「はい、お弁当」
「ありがとう」
「アルバイト頑張ってきなさい」
「うん」
俺は弁当を受け取った。
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魔王のアルバイト
俺が働いているのは。
ごく普通の飲食店だった。
店長は。
俺がプロボクサーだということを知っている。
ただし。
俺の名前については。
最初。
かなり驚かれた。
「魔王くん」
「はい」
「本名?」
「はい」
「……」
「何ですか?」
「いや」
店長は履歴書を見る。
「本当に?」
「本当です」
「冗談じゃなく?」
「冗談じゃないです」
「……」
「何ですか、その顔」
「いや……」
店長は笑った。
「うちの店に魔王がアルバイトに来るとは思わなかった」
「俺もです」
「採用されたら?」
「働きます」
「世界征服は?」
「しません」
「残念だな」
「残念なんですか!?」




