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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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159/212

旅立ちの村の夜明け

夕食を終えるころには、すっかり夜になっていた。


王都から来た兵士たちは、食堂の隅で見張りの交代の順番を確認している。


国王は大きく伸びをした。


「今日は長い一日だったな」


魔王が頷く。


「そうですね。王都からここまで来ましたし、カエルにも襲われましたし、バナナにも襲われましたし……」


父が手を挙げる。


「俺はカエルの口の中にも入った」


魔王。


「それは父さんだけだよ」


父。


「そうだったな」


ネクタイ。


「今日もよく働いたな」


父。


「はい!」


魔王。


「だからなんでネクタイに返事するの」


国王が笑う。


「面白いネクタイだな」


父。


「はい。最近よくしゃべります」


ネクタイ。


「俺は何でも知っている」


魔王。


「急に怖いこと言うなよ」


---


宿屋では、国王のために寝室が用意されていた。


「国王陛下はこちらのお部屋でお休みください」


兵士が案内する。


国王はベッドを見る。


「これはありがたい」


魔王。


「今日はゆっくり休んでください」


国王。


「皆もな」


昆布が頭を下げる。


「ありがとうございます」


国王が部屋に入る。


そして扉が閉まる。


「では、見張りを頼む」


兵士たちはすぐに配置についた。


二人ずつ交代しながら、国王の寝室の前を見張る。


兵士A。


「第一班、見張りにつきます」


兵士B。


「異常ありません」


しばらくして――。


兵士A。


「……」


兵士B。


「……」


兵士A。


「眠くなってきたな」


兵士B。


「国王陛下を守るんだ。寝るなよ」


兵士A。


「分かってる」


そのとき、部屋の中から声がした。


国王。


「……すまん」


兵士A。


「はい!」


国王。


「枕をもう一つ頼めるか?」


兵士A。


「すぐに!」


兵士A。


「仕事だからな」


その会話を少し離れたところで聞いていた父のネクタイが、


「仕事中だぞ」


と呟いた。


父。


「はい!」


魔王。


「もういいって!」


---


一方、そのころ。


魔王軍は勇者の家へ向かっていた。


目的は一つ。


現実世界の家で休むこと。


魔王が家の中にある段ボールを見る。


普通の段ボール。


外から見れば、ただの古びた段ボールである。


しかし、この箱は魔王軍にとって特別な箱だった。


中に入ると、現実世界の家へつながる。


魔王が箱を開ける。


「じゃあ、みんな入ろう」


殴打が先に入る。


「よし」


五利武。


「失礼します」


昆布。


「順番に入りましょう」


便意。


「今日はもう魔法使わなくていいですよね?」


魔王。


「うん」


便意。


「よかった……」


母。


「ゴプリンちゃんもおいで」


ゴプリン。


「……うん」


ゴプリンが箱へ向かう。


しかし――。


カツン。


鋼鉄のプリンカップが箱の入口に当たった。


ゴプリン。


「……」


もう一度。


カツン。


魔王。


「あ」


昆布。


「入りませんね」


ゴプリン。


「……入れない」


五利武。


「頭のカップが引っかかっていますね」


ゴプリン。


「……」


もう一度、少し角度を変える。


カツン。


ゴプリン。


「……」


母。


「ゴプリンちゃん、無理しなくていいわよ」


ゴプリン。


「……でも……」


魔王。


「箱の入口を壊すのも怖いからね」


ゴプリンは少し考えた。


そして、


「……ベッド」


と言った。


魔王。


「そうだね。勇者の家にはベッドがある」


ゴプリン。


「……寝る」


母。


「じゃあ、今日はここで寝ましょう」


ゴプリン。


「……うん」


---


こうして魔王軍は段ボールに入り、現実世界の家へ戻った。


箱を出ると、そこはいつもの家。


魔王の家である。


魔王は靴を脱いだ。


「やっぱり家は落ち着くな」


殴打。


「そうだな」


五利武。


「静かですね」


昆布。


「今日はかなり疲れましたからね」


便意。


「寝ます」


魔王。


「早いな」


便意。


「もう眠いです」


鍋。


「俺も寝ます」


母。


「みんなおやすみ」


魔王。


「おやすみ」


それぞれが部屋へ向かっていく。


父も自分の部屋へ向かう。


しかし、ネクタイがしゃべる。


「明日の仕事は?」


父。


「王都に戻る!」


「上司に報告した?」


「誰に?」


「俺だ」


父。


「……おやすみ」


ネクタイ。


「残業」


父。


「もう寝る!」


---


そして勇者の家。


ゴプリンは、一人ベッドの上にいた。


鋼鉄のプリンカップを頭に装着したまま、布団に入っている。


ゴプリン。


「……ここ……好き」


ベッドが少し沈む。


「……柔らかい」


そのまま目を閉じる。


「……プリン……」


眠った。


静かな夜だった。


---


翌朝。


勇者の家。


ゴプリンが目を覚ました。


「……朝」


ゆっくり起き上がる。


そして部屋から出る。


階段をゆっくり降りる。


ゴプリンは玄関へ向かった。


カチャ。


ドアを開ける。


ちょうどその瞬間――。


玄関の外に、おばあちゃんがいた。


おばあちゃんはゴプリンを見る。


ゴプリンもおばあちゃんを見る。


二人の目が合った。


おばあちゃん。


「おはよう、勇者様」


ゴプリン。


「……おはよう」


おばあちゃんはいつものように、にこっと笑った。


「ご飯できてるわよ、勇者様」


ゴプリン。


「……」


おばあちゃん。


「……」


ゴプリンの頭には巨大な鋼鉄のプリンカップ。


身体は筋肉質。


黒いブーツ。


鋼鉄のカップの隙間から、静かにこちらを見つめる目。


どう見ても――。


勇者というより、


ラスボスだった。


おばあちゃんの表情が変わる。


「……」


ゴプリン。


「……?」


おばあちゃん。


「ご飯できてるわよ勇者様?」


ゴプリン。


「……うん」


おばあちゃん。


「ずいぶんとラスボス感のある勇者ね!」


ゴプリン。


「……ラスボス?」


おばあちゃん。


「そうよ!」


ゴプリン。


「……勇者」


おばあちゃん。


「うん、勇者なんだけどね」


ゴプリン。


「……」


おばあちゃん。


「見た目がね」


ゴプリンは自分の頭を触った。


カン。


鋼鉄のプリンカップが鳴る。


ゴプリン。


「……プリン」


おばあちゃん。


「そこは勇者らしいわね」


---


そのころ。


現実世界の家。


魔王が目を覚ました。


「朝か……」


服を着替える。


そして仲間たちを起こす。


「みんな、起きて」


殴打。


「……延長」


魔王。


「野球の試合じゃないんだから」


五利武。


「朝は苦手です」


魔王。


「ゴルファーなのに?」


五利武。


「ゴルフは朝が早いです」


魔王。


「矛盾してない?」


昆布。


「起きましょう。今日は王都の件もあります」


便意。


「……起きます」


鍋。


「朝飯……」


魔王。


「宿屋で食べよう」


鍋。


「分かりました」


母。


「ゴプリンちゃんも待ってるかしら」


魔王。


「たぶんね」


父。


「俺も行く」


ネクタイ。


「遅刻するぞ」


父。


「何に?」


ネクタイ。


「人生に」


父。


「急に深いな!」


---


魔王軍は再び段ボールへ向かった。


魔王。


「じゃあ、行こう」


殴打。


「おう」


五利武。


「はい」


昆布。


「忘れ物はありません」


便意。


「ファイアー……」


魔王。


「言わなくていい」


便意。


「言いたかっただけです」


母。


「行きましょう」


父。


「よし」


ネクタイ。


「出勤だ」


父。


「はい!」


魔王。


「だから違うって!」


全員が段ボールへ入っていく。


そして――。


勇者の家。


ドアの前。


ゴプリンとおばあちゃんが話していた。


おばあちゃん。


「それにしても、あなたは本当に大きくなったわね」


ゴプリン。


「……大きい」


おばあちゃん。


「昔の勇者たちとは全然違うわ」


ゴプリン。


「……勇者」


おばあちゃん。


「ええ、勇者」


ゴプリン。


「……プリン」


おばあちゃん。


「そこはプリンなのね」


そのとき。


玄関の奥から――。


ガタッ。


おばあちゃん。


「あら?」


ゴプリン。


「……?」


段ボールが開く音がした。


ガサッ。


魔王軍が次々と出てくる。


魔王。


「おはようございます」


殴打。


「おはようございます!」


五利武。


「おはようございます」


昆布。


「おはようございます」


便意。


「おはようございます」


鍋。


「おはようございます」


母。


「おはようございます」


父。


「おはよう」


ネクタイ。


「朝だぞ」


おばあちゃん。


「……」


魔王軍。


「……」


おばあちゃんが全員を見る。


そして――。


「あら」


魔王。


「おばあちゃん、おはよう」


おばあちゃん。


「おはよう」


そして少し考える。


「……でもね」


魔王。


「はい」


おばあちゃん。


「そんなにご飯作ってないわよ!」


魔王軍全員。


「……」


鍋。


「何人分ですか?」


おばあちゃん。


「普通に家族分よ!」


殴打。


「俺は?」


「知らないわよ!」


五利武。


「私も?」


「知らないわよ!」


便意。


「僕も?」


「知らないわよ!」


父。


「俺は?」


おばあちゃん。


「あなたは昨日も食べてたでしょう!」


父。


「そうだった」


ネクタイ。


「食事管理ができていないぞ」


父。


「はい!」


魔王。


「父さんはネクタイに返事するのやめて!」


ゴプリン。


「……ご飯」


おばあちゃん。


「ゴプリンちゃんの分はあるわよ」


ゴプリン。


「……!」


魔王。


「ゴプリンだけ待遇が違う」


おばあちゃん。


「だってこの子、昨日からここにいるんだもの」


ゴプリン。


「……」


少し嬉しそうだった。


---


魔王が仲間たちを見る。


「じゃあ、宿屋に戻ろう」


昆布。


「そうですね。国王陛下も宿屋で休んでいます」


魔王。


「兵士たちも交代で見張ってるからね」


父。


「王都のことも気になるな」


昆布。


「はい。昨夜の報告もあります」


殴打。


「今日こそ何か分かるかな」


便意。


「王都で何が起きているんでしょうね」


五利武。


「気になりますね」


鍋。


「宿屋に着いたら朝食を作りましょうか?」


魔王。


「鍋、もう働くの?」


鍋。


「料理人ですから」


母。


「偉いわね」


鍋。


「ありがとうございます」


ネクタイ。


「本日の業務は?」


鍋。


「朝食作りです」


ネクタイ。


「昇進」


鍋。


「ありがとうございます」


魔王。


「なんで鍋までネクタイに認められてるの?」


父。


「優秀なネクタイだからな」


魔王。


「父さん、完全に洗脳されてるよ」


---


こうして魔王軍は、おばあちゃんに見送られながら宿屋へ向かうことになった。


ゴプリンは玄関で見送っている。


おばあちゃん。


「気をつけてね、勇者様」


ゴプリン。


「……うん」


おばあちゃん。


「またご飯作っておくからね」


ゴプリン。


「……プリンも?」


おばあちゃん。


「もちろん」


ゴプリン。


「……!」


魔王。


「じゃあ、行ってくるね」


おばあちゃん。


「はいはい。みんな気をつけてね」


魔王軍は歩き出した。


父のネクタイが呟く。


「遅れるなよ」


父。


「はい!」


魔王。


「もういい!」


昆布が前を見ながら言った。


「宿屋に着いたら、まず王都の件を整理しましょう」


魔王。


「そうだね」


一行は宿屋へ向かって歩き出した。


昨夜、王都から届いた不穏な報告。


そして、まだ明らかになっていない異変。


それが、この先の旅に大きく関わってくることを――。


この時の魔王軍は、まだ知らなかった。

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