旅立ちの村と国王陛下!
王都を出発してから、長い旅を続けてきた国王と魔王護衛隊。
狼の群れ。
巨大な恐竜のようなモンスター。
巨大なカエル。
そしてバナナモンスター。
途中では、地面がヌルヌルになってしまい、一行全員が地面に寝転がって動けなくなるという大事件まで起きた。
しかし、昆布の作戦によってヌルヌルを炎で燃やし、どうにか脱出。
その後、一行は再び街道を進み続け――。
ついに、
旅立ちの村へ到着した。
「着いた……」
魔王が村を見渡す。
「やっと戻ってきたな」
勇気も嬉しそうに村を見る。
「懐かしいですね」
ゴプリンも村を見ながら、
「……村」
と呟いた。
魔王が笑う。
「ゴプリン、この村好きだったよな」
「……好き」
「やっぱり?」
「……プリンも、あるかもしれない」
「そこが理由なの?」
ゴプリンは真剣な顔で頷いた。
「……大事」
「そうですか」
魔王は笑った。
その時だった。
村人たちが次々と集まってきた。
「国王陛下だ!」
「国王陛下が来てくださった!」
「本物だ!」
「ありがたい!」
村人たちは大喜びだった。
国王は馬車から降り、村人たちに手を振った。
「皆の者、元気そうで何よりだ」
「国王陛下!」
「ありがとうございます!」
「わざわざこの村まで!」
村全体が明るい雰囲気に包まれる。
魔王はその様子を見ながら、
「国王陛下が来ると、みんな安心するんだな」
と言った。
昆布も頷く。
「そうですね」
国王は村人たちに軽く手を振ると、村長を探した。
「村長はいるか?」
「はい。こちらです」
村人の一人が案内する。
国王と魔王軍は、村の集会場へ向かった。
集会場には村長が待っていた。
村長は国王を見ると、深々と頭を下げる。
「国王陛下、お越しいただきありがとうございます」
国王も頷く。
「うむ」
そして村長の顔を見る。
「ここの村は問題ないか?」
村長は少し考えた。
「……実は、問題があります」
一瞬で空気が変わった。
魔王も真剣な顔になる。
「何かあったんですか?」
村長は頷く。
「やはり、村の外ではモンスターが暴れています」
「やはりか……」
国王が呟いた。
村長は続ける。
「なかなか農作業も危険で進みません」
「農作業まで……」
勇気が心配そうに言う。
「畑へ行く途中でモンスターに遭遇することもあります」
村長は困った顔をする。
「そのため、畑の手入れが十分にできない場所もあります」
鍋が腕を組む。
「それは困るな」
魔王が鍋を見る。
「鍋さん、やっぱり農作物の心配?」
「当然だ」
鍋は真顔だった。
「野菜がなければ料理ができん」
「そこなんだ」
魔王は苦笑した。
村長はさらに話を続けた。
「それだけではありません」
国王が聞く。
「他にもあるのか?」
「はい」
村長は少し声を落とした。
「村の中には、黒いモンスターとバナナモンスターが村の上を飛んでいたという者までいます」
「……」
魔王軍が静かになる。
魔王は空を見上げた。
「黒いモンスター……」
母が心配そうに言う。
「怖いわね」
「そうですね」
魔王は頷いた。
村長は続ける。
「今までは、そんなことはありませんでした」
「村の上を飛ぶモンスターなど、いなかったのだな?」
国王が聞く。
「はい」
「それが最近になって現れた」
「そうです」
村長は震える声で言った。
「恐ろしいです」
国王は腕を組んだ。
「そうか……」
そして、魔王軍を見る。
「モンスターが凶暴になっておるのだな」
魔王軍は一斉に頷いた。
「はい」
昆布も頷く。
「王都でも同じようなことが起きています」
村長が驚く。
「王都でも?」
国王が頷いた。
「そうだ」
そして村長に向かって言う。
「この村だけではない」
「……」
「王都も一度、モンスターの襲撃にあったのだ」
村長は目を見開いた。
「王都まで狙われているのですか?」
「うむ」
国王は重々しく頷く。
「全ての地域でモンスターが魔王の座を狙っておるらしい」
「それは恐ろしい……」
村長は言葉を失った。
魔王は少し複雑な顔をする。
「……魔王の座って、そんなに人気なんですか?」
勇気が横から言う。
「魔王様は人気があると思いますよ」
「いや、僕が言ってるのはそういう意味じゃなくて」
昆布が冷静に言った。
「魔王の座を狙うモンスターが増えているということは、今後さらに襲撃が増える可能性があります」
「そうだな」
国王が頷く。
「村を守る準備が必要だ」
そこで昆布が村長を見る。
「村長さん」
「はい」
「この村でも、戦えそうな人はいますか?」
村長は少し考えた。
「若者も多くはないですが、います」
「何人かは戦えそうですか?」
「はい。狩りを経験している者もいますし、体力のある者もいます」
昆布は頷いた。
「それなら、戦えそうな人に訓練をさせた方が良いと思います」
村長が驚く。
「訓練ですか?」
「はい」
昆布は落ち着いた声で説明する。
「ただし、いきなりモンスターと戦わせる必要はありません」
「では、何を?」
「まずは逃げる訓練です」
村長が少し驚く。
「逃げる?」
「はい」
昆布は頷く。
「モンスターを見つけたら、距離を取る」
「なるほど」
「一人で戦わない」
「はい」
「仲間に知らせる」
「はい」
「安全な場所へ移動する」
村長は真剣に聞いている。
昆布は続けた。
「その上で、武器の扱い方、防御、周囲の警戒などを訓練します」
魔王も頷いた。
「それなら村の人たちも安心できそうだな」
昆布が言う。
「大切なのは、無理をしないことです」
そして、
「生き残ることを優先します」
国王も満足そうに頷いた。
「その通りだ」
そして国王は村長を見る。
「王都に戻ったら、使えそうな武器や防具を送ろう」
村長は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます、国王陛下」
「この村を守るために必要なものだからな」
殴打が口を開く。
「武器……」
魔王が見る。
「どうしたの?」
「村の人たちにバットを配るのもいいですね」
「いや、全員が野球を始めたら困るから」
殴打は少し考える。
「では、木刀」
五利武が言う。
「ゴルフクラブも」
「五利武さんまで」
昆布が二人を見る。
「モンスター対策の武器を用意しましょう」
「はい」
殴打と五利武は素直に頷いた。
鍋が手を挙げる。
「鍋も?」
「鍋さんは武器じゃなくて料理道具です」
「分かった」
鍋は少し残念そうだった。
「でも大きい鍋なら防御にも使える」
魔王が振り返る。
「……ヘル鍋を見て言ってる?」
鍋は頭にかぶっているヘル鍋を叩いた。
「これか?」
「それ」
「これは俺の大事な鍋だ」
「だから武器にしなくていいよ」
村長は魔王軍のやり取りを見て、少しだけ笑った。
深刻な話の中にも、いつもの魔王軍らしさが戻ってきた。
国王も微笑んだ。
「うむ。皆、頼もしいな」
そして国王が言った。
「それでは、次は――」
国王は村の奥を見た。
「勇者の家に行ってみるか」
「勇者の家……」
魔王が頷く。
「そうですね」
勇気も嬉しそうだ。
「おばあちゃん、元気でしょうか」
母も頷く。
「きっと元気よ」
鍋がすぐに反応する。
「料理もあるかな」
魔王が振り返る。
「鍋さん」
「何だ?」
「勇者の家に行く目的は?」
「料理」
「違うよ」
「では何だ?」
「……勇者の家を訪ねること」
「そうだった」
鍋は頷いた。
「料理はその次だ」
「そこは忘れないんだね」
ゴプリンも、
「……プリン」
と呟いた。
魔王が見る。
「ゴプリンまで?」
「……あるかもしれない」
「プリンが?」
「……うん」
「まだ分からないよ」
ゴプリンは黙った。
しかし鋼鉄のプリンカップの奥では、期待に満ちた目をしている――ような気がした。
国王が笑う。
「では、勇者の家へ向かおう」
村長も頷いた。
「ご案内します」
一行は集会場を出る。
村人たちは国王を見送りながら、嬉しそうに手を振っていた。
「国王陛下、ありがとうございます!」
「武器や防具を送ってくださるそうだ!」
「これで村を守れる!」
魔王は村人たちの声を聞きながら歩く。
そして、昆布に小さな声で言った。
「昆布」
「はい」
「この村も、ちゃんと守らないとな」
昆布は頷いた。
「はい」
「でも、まずは勇者の家だな」
「そうですね」
一行は村の道を進んでいく。
その先には――
かつて魔王軍がこの世界へ初めて足を踏み入れた、
勇者の家がある。
そこには、あの優しいおばあちゃんがいるはずだった。
ただし――。
一行はまだ知らない。
この旅立ちの村の空では、少し前に何者かが飛んでいたことを。
そして、その正体が何なのかも。
魔王はただ前を向いて歩く。
「さて……おばあちゃん、元気かな」
勇気が笑う。
「きっと元気ですよ」
鍋が言う。
「そして飯がある」
「そこはまだ分からないって」
魔王が笑う。
一行はゆっくりと、
勇者の家へ向かって歩いていった。
果たして、勇者の家では何が待っているのか。
そして、旅立ちの村の空を飛んでいたという「黒いモンスター」と「バナナモンスター」の正体は――。
その謎は、まだ誰にも分からない。




