まさかの再会!バナナモンスター三匹の新作戦
巨大なカエルモンスターと五利武に父さんを飛ばされた魔王軍と国王一行は、旅立ちの村を目指して、再び歩き始めていた。
父さんの姿は、もうどこにも見えない。
ただし――。
魔王軍の全員が、なんとなく空を見上げながら歩いていた。
魔王「……父さん、まだ飛んでるのかな」
母さん「きっと飛んでるわ」
魔王「まだ?」
母さん「パパだもの」
魔王「父さんだから飛び続けるっていう理屈が分からないよ」
昆布「ただ、かなり遠くまで飛んだのは間違いありません」
五利武「僕のスイングもかなり効きました」
魔王「五利武さん、それはもういいよ」
五利武「はい」
ゴプリン「……お父さん……遠い」
魔王「うん」
ゴプリン「……プリン……食べてるかな」
魔王「そこは心配するところなの?」
ゴプリン「……大事」
魔王「父さんよりプリンを心配してるように聞こえるけど」
ゴプリン「……お父さんも……大事」
魔王「それならよかった」
国王も馬車の中から空を見上げる。
国王「しかし、あの者は大丈夫なのか?」
魔王「父さんなら、たぶん大丈夫です」
国王「なぜじゃ?」
魔王「メンタルが強いので」
国王「……そういう問題なのか?」
魔王「たぶん」
国王「たぶんか」
そんな会話をしながら、一行は湿地帯を進んでいった。
しばらくすると――。
霧が少しずつ薄くなってきた。
足元も泥ではなくなってくる。
そしてついに――。
湿地帯を抜けた。
昆布「街道に出ました」
魔王「よかった」
鍋「歩きやすいですね」
便意「湿地帯は疲れた……」
勇気「もう少しで旅立ちの村ですね」
母「パパも先に村に着いてるかもしれないわね」
魔王「それはありそう」
一行は街道を歩き始めた。
すると――。
魔王「……ん?」
上空から、
パタ……
パタ……
パタ……
という音が聞こえてきた。
魔王が空を見る。
魔王「何か飛んでる」
昆布も見る。
昆布「黄色と白ですね」
五利武「鳥でしょうか?」
殴打「いや、あれは……」
便意「……バナナ?」
魔王「バナナ?」
全員が空を見上げる。
そこには――。
黄色と白の身体。
開いた皮のような部分を羽のようにパタパタさせて飛ぶモンスター。
しかも、
三匹。
魔王「……」
昆布「……」
殴打「……」
五利武「……」
便意「……」
鍋「……」
勇気「……」
ゴプリン「……」
母「……」
国王「……」
三匹のバナナモンスターも、魔王軍を見つけた。
一匹が叫ぶ。
バナナモンスターA「また魔王軍が来たぞ!」
バナナモンスターB「本当だ!」
バナナモンスターC「離れろ!」
三匹が――。
一斉に距離を取った。
パタパタパタパタ!
魔王「……」
昆布「……」
魔王「前に会った時より、ずいぶん慎重になってるね」
昆布「はい」
バナナモンスターA「前回の敗因を分析した!」
バナナモンスターB「魔王の睨み!」
バナナモンスターC「混乱しろ!」
魔王「覚えてるんだ」
バナナモンスターA「覚えているとも!」
魔王「そこまで覚えてるなら、もう戦わなければいいのに」
バナナモンスターB「そうはいかない!」
バナナモンスターC「俺たちは次の魔王になる!」
魔王「まだ言ってるの?」
バナナモンスターA「今回は作戦がある!」
三匹はさらに距離を取った。
バナナモンスターA「お互いに近づきすぎない!」
バナナモンスターB「空中で衝突しない!」
バナナモンスターC「これなら前みたいにはならない!」
魔王「……」
昆布「なるほど」
昆布が三匹を見上げる。
昆布「前回、混乱したバナナモンスター同士が空中で衝突したことを覚えているようです」
魔王「そうだったね」
バナナモンスターA「そうだ!」
バナナモンスターB「だから!」
バナナモンスターC「今回は距離を取る!」
そして三匹は、
さらに左右に広がった。
左に一匹。
中央に一匹。
右に一匹。
まるで空中で三角形を作るように飛んでいる。
バナナモンスターA「そして!」
バナナモンスターB「これだ!」
バナナモンスターC「いくぞ!」
三匹が同時に――。
白い粉を撒き始めた。
サァァァァァ……。
サァァァァァ……。
サァァァァァ……。
白い粉が街道に降り注ぐ。
地面が――。
みるみる白くなっていく。
魔王「また白い粉!」
昆布「まずいです」
魔王「何が?」
昆布「足元です」
魔王「……」
一歩。
魔王が足を動かした。
ツルッ。
魔王「うわっ!」
ドスン!
魔王が倒れた。
便意「魔王様!」
便意も一歩動いた。
ツルッ!
便意「うわああ!」
ドン!
殴打「危ない!」
殴打が助けようとする。
ツルッ!
殴打「うわっ!」
ドン!
五利武「殴打さん!」
五利武が近づく。
ツルッ!
五利武「うわあっ!」
ドサッ!
鍋「皆さん!」
鍋も足を踏み出す。
ツルッ!
鍋「おおおおお!」
ズシン!
勇気「危ない!」
勇気も――。
ツルッ!
勇気「わあっ!」
ゴロン。
ゴプリンは慎重だった。
ゴプリン「……」
一歩。
ツルッ。
ゴプリン「……」
ズルズル……。
ゴプリン「……滑る」
ドテッ。
ゴプリン「……プリン……」
魔王「ゴプリン、大丈夫!?」
ゴプリン「……大丈夫」
魔王「よかった」
母さんも足元を見る。
母「これは危ないわね」
ツルッ。
母「きゃっ!」
魔王「母さん!」
母「大丈夫よ」
スッ。
なんとか尻もちをつく前に手をついた。
国王も馬車から外を見る。
国王「何ということじゃ!」
兵士「陛下、馬車は大丈夫です!」
国王「わしらだけ滑っているではないか!」
実際、
馬車だけは滑っていなかった。
車輪がしっかり地面を捉えている。
その周囲で――。
魔王軍が、
ズルズル。
ツルツル。
ゴロゴロ。
バタバタ。
倒れている。
魔王「……」
昆布「……」
魔王「昆布さん」
昆布「はい」
魔王「立てる?」
昆布「無理です」
魔王「即答だね」
昆布「今、立とうとすると二次被害が出ます」
魔王「確かに」
昆布「それより上空を見てください」
魔王が見上げる。
三匹のバナナモンスターは、一定の距離を保ちながら飛んでいる。
バナナモンスターA「見たか!」
バナナモンスターB「今回は完璧だ!」
バナナモンスターC「誰もぶつからない!」
バナナモンスターA「これなら混乱させられても大丈夫!」
魔王「……なるほど」
昆布「前回より明らかに対策しています」
魔王「じゃあ、やってみよう」
魔王は立ち上がろうとする。
ツルッ。
魔王「うわっ!」
ドン!
魔王「……」
昆布「立たない方がいいです」
魔王「そうだね」
魔王は地面に座ったまま、三匹を見上げる。
そして――。
魔王「魔王の睨み」
キッ!
三匹を見る。
バナナモンスターA「!」
バナナモンスターB「!」
バナナモンスターC「!」
三匹の動きが止まる。
魔王「よし」
そして魔王は続けた。
魔王「混乱しろ」
三匹の表情が変わる。
バナナモンスターA「……あれ?」
バナナモンスターB「……俺、何してたんだ?」
バナナモンスターC「……飛んでる?」
魔王「効いた」
しかし――。
三匹は距離を保ったままだった。
バナナモンスターA「……」
バナナモンスターB「……」
バナナモンスターC「……」
少しの間。
そして、
バナナモンスターA「……右にいるな」
バナナモンスターB「……左にいるな」
バナナモンスターC「……俺は中央か」
魔王「……」
昆布「……」
魔王「混乱してるけど、衝突しないね」
昆布「はい」
バナナモンスターA「お互いの位置は分からない!」
バナナモンスターB「でも距離は取っている!」
バナナモンスターC「だからぶつからない!」
魔王「なんだ、その対策……」
昆布「非常に合理的です」
魔王「認めるんだ」
昆布「前回の弱点を学習しています」
バナナモンスターたちの混乱は、やがて収まっていった。
バナナモンスターA「……戻った」
バナナモンスターB「俺たちは……」
バナナモンスターC「バナナだ!」
魔王「そこは最初から分かってたんだね」
バナナモンスターA「魔王軍め!」
バナナモンスターB「今回は負けないぞ!」
バナナモンスターC「地面はツルツルだ!」
魔王軍は地面に倒れたまま、三匹を見上げている。
魔王「……これは困った」
その時。
便意が杖を持ち上げた。
便意「……ウォーター」
魔王「便意さん?」
便意「ウォーター」
ポッ。
殴打の魔法のバットから――。
チョロ……
チョロチョロ……
水が出てきた。
殴打「……」
魔王「……」
昆布「……」
五利武「……」
便意「……」
昆布がすぐに言った。
昆布「ウォーターはやめましょう」
便意「……はい」
魔王「今の状態で水を足したら……」
昆布「さらに滑る可能性があります」
魔王「だよね」
殴打「バットから水が出ています」
魔王「火じゃなくて水なんだね」
殴打「はい」
便意「俺の杖からは出ないのに……」
魔王「そこ、まだ気にしてるんだ」
便意「気になります」
バナナモンスターたちは空中から地面を見下ろしている。
バナナモンスターA「魔王軍が動けない!」
バナナモンスターB「今がチャンスだ!」
バナナモンスターC「攻撃するぞ!」
魔王「……」
昆布「……」
魔王「でも、あいつらも地面には降りられないよね?」
昆布「はい」
魔王「だったら……」
昆布「まだ、こちらにも方法はあります」
魔王「何か思いついた?」
昆布は白くなった街道を見渡した。
そして、光る靴を手に持ったまま考え込む。
昆布「……」
魔王「昆布さん?」
昆布「この状況なら――」
昆布が静かに顔を上げる。
昆布「バナナモンスターを倒す方法は、攻撃ではないかもしれません」
魔王「……どういうこと?」
昆布「まず、この滑る地面をどうするかです」
便意「……」
殴打「……」
五利武「……」
鍋「……」
ゴプリン「……」
そして上空には――。
距離を取りながら飛び続ける三匹のバナナモンスター。
バナナモンスターA「次の魔王は俺だ!」
バナナモンスターB「いや、俺だ!」
バナナモンスターC「俺だ!」
魔王「……三匹とも次の魔王になりたいんだね」
昆布「そこも問題ですね」
魔王「まずは滑らない方法を考えよう」
昆布「はい」
便意「ウォーター……」
昆布「駄目です」
便意「まだ何もしてないです」
昆布「先に言っておきます」
魔王「昆布さん、慎重だね」
そして――。
白くヌルヌルになった街道の上で、
魔王軍は身動きが取れない。
上空では、
三匹のバナナモンスターが、
一定の距離を保ちながら、
パタパタと飛んでいる。
果たして魔王軍は、この「距離を取るバナナ作戦」をどう突破するのか。
そして――。
旅立ちの村へ向かって飛んでいった父さんは、
今どこにいるのか。




