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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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151/165

父さん、旅立ちの村へ飛ぶ

湿地帯。


濃い霧の中で、魔王軍と国王一行は巨大なカエルモンスターと対峙していた。


ただし――。


現在、一番大変な状況にいるのは魔王でも国王でもない。


父さんだった。


父さんはカエルモンスターの口の中にいる。


しかも――。


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!


父さん「うわあああああ!」


カエルモンスターが口の中で父さんを転がしている。


父さん「目が回る!」


ゴロゴロゴロゴロ!


父さん「ちょっと止まれ!」


ゴロゴロゴロゴロ!


父さん「話を聞いてくれ!」


カエルモンスターは聞いていない。


というより、カエルモンスターにとっては父さんが食べ物なのか、おもちゃなのか、それともただの転がしやすい物体なのか、まったく分からない。


魔王「父さん!」


母さん「パパ!」


殴打「大丈夫ですか!」


五利武「すごい勢いで回っています!」


便意「俺、見てるだけでトイレに行きたくなる……」


昆布は冷静にカエルモンスターを観察していた。


昆布「……お父さん、まだ意識はあります」


父さん「ある!」


昆布「声も出ています」


父さん「出てる!」


昆布「では、もう少し様子を――」


父さん「もう少しって何だよ!」


魔王「昆布さん、助けよう!」


昆布「はい」


その瞬間。


父さんの声が変わった。


父さん「……フン!」


ゴロゴロゴロゴロ!


そして――。


父さん「フンッ!」


バッ!


父さんが口の中で大の字になった。


両手両足を大きく広げる。


父さん「これでどうだ!」


カエルモンスター「……?」


カエルモンスターの口が――。


止まった。


父さんが大の字になったことで、口の中いっぱいに父さんの身体が広がったのだ。


カエルモンスターは、


閉じようとする。


パクッ。


父さん「……」


カエルモンスター「……」


閉じない。


もう一度。


パクッ。


閉じない。


カエルモンスター「……?」


魔王「口が閉じない!」


昆布「お父さんが物理的に口を塞いでいます」


父さん「どうだ!」


魔王「父さん、すごい!」


父さん「今だ!」


父さんは口の中から叫んだ。


父さん「俺の事は気にせず、攻撃しろ!」


魔王「えっ!?」


父さん「早く!」


その時。


首元のメンタルアタックネクタイが――。


ビシッ!


メンタルアタックネクタイ「そうだ! どんどん攻撃しろ!」


魔王「ネクタイまで!」


メンタルアタックネクタイ「遠慮するな!」


殴打「分かりました!」


便意が杖を構えた。


便意「……ファイアー」


ボッ!


殴打の魔法のバットが、一瞬で炎に包まれた。


殴打「来た!」


殴打はバットを高く持ち上げる。


殴打「大根切り!」


ブォォォォン!


バットが勢いよく振り下ろされた。


その瞬間。


バットから炎が飛び出した。


ゴオオオオオオオッ!


炎が一直線にカエルモンスターへ向かっていく。


魔王「いけ!」


五利武「当たります!」


そして――。


ゴプリンが前に出た。


ゴプリン「……」


両手を動かす。


印を結ぶ。


ゴプリン「プリン体」


ズン!


カエルモンスターの両膝が――。


ガクッ。


カクッ。


ガクガクガクガク!


魔王「効いた!」


昆布「カエルモンスターの膝が震えています!」


ゴプリン「……プリン体」


魔王「二回言わなくていいよ」


しかし――。


炎の行き先には父さんがいた。


ゴオオオオオオ!


魔王「あっ!」


炎が父さんに直撃した。


ボワッ!


父さん「熱い!」


魔王「父さん!」


父さん「熱いぞ!」


メンタルアタックネクタイ「熱いくらいで怯むな!」


父さん「いや、熱いものは熱い!」


魔王「そこは普通なんだね!」


炎が父さんの身体の周りに広がる。


父さんの不思議なスーツが炎を受ける。


父さん「熱い!」


魔王「大丈夫!?」


父さん「大丈夫だ!」


メンタルアタックネクタイ「大丈夫だ!」


父さん「熱いけどな!」


カエルモンスターは、しばらく膝をガクガクさせていた。


しかし――。


やがて膝の震えが止まった。


そして、


グッ。


口を閉じ始める。


父さん「ん?」


パクン!


父さん「うわっ!」


再び父さんがカエルモンスターの口の中へ。


魔王「父さん!」


父さん「またか!」


カエルモンスターは父さんを口に入れたまま、ゆっくりと立ち上がる。


そして――。


くるっ。


ゆっくりと、


向こうを向いた。


昆布「……」


魔王「……」


昆布「モンスターが逃げるつもりです」


魔王「ええっ!」


母さん「魔王!」


魔王「うん!」


母さん「父さんを助けて!」


魔王「もちろん!」


魔王は一歩踏み込んだ。


ザッ!


そして――。


前ステップ。


タッ!


一気に距離を詰める。


魔王「待て!」


カエルモンスターは気にせず歩こうとする。


魔王は後ろから回り込んだ。


そして――。


魔王「ローキック!」


バシィッ!


カエルモンスターの後ろ脚へローキック。


すると――。


カエルモンスターの口の中から声がした。


父さん「お前……」


魔王「?」


父さん「ロー……好きだな」


魔王「ツッコんでる場合じゃないよ!」


父さん「いや、今気づいたんだよ!」


魔王「今じゃない!」


父さん「毎回ローだろ!」


魔王「父さんを助けるためなんだから仕方ないよ!」


父さん「そうか!」


魔王「納得した!」


その時。


五利武がゴルフクラブを構えた。


五利武「俺も行きます!」


昆布「五利武さん!」


五利武「任せてください!」


五利武がゴルフクラブを振りかぶる。


五利武「いきます!」


ブンッ!


次の瞬間。


五利武の身体が――。


飛んだ。


シュゴオオオオオオ!


魔王「飛んだ!」


昆布「クラブが飛んでいます!」


五利武「俺も飛んでいます!」


ゴルフクラブと五利武が一緒に飛んでいく。


狙うのは――。


カエルモンスターの背後。


いや。


そのさらに後ろ。


五利武「そこだ!」


ボヨン!


五利武「おおっ!」


カエルモンスターのお尻に、五利武が当たった。


魔王「……」


昆布「……」


便意「……」


殴打「……」


母「……」


国王「……」


五利武は地面に着地した。


スタッ。


五利武「まだまだ!」


魔王「まだやるの!?」


五利武はゴルフクラブを握り直した。


そして――。


カエルモンスターのお尻に向かって、


フルスイング。


五利武「うおおおおお!」


ブォォォォォン!


ゴンッ!


ボヨォォォォン!


魔王「お尻にフルスイング!」


昆布「かなり特殊な攻撃方法ですね」


五利武「当てる場所がそこしかありませんでした!」


魔王「それはそうだけど!」


その瞬間――。


カエルモンスターの身体が、


ビクッ!


と跳ねた。


そして――。


カエルモンスター「ゲコッ!」


大きく口を開けた。


魔王「今だ!」


父さん「うわあああああ!」


シュパァァァァァ!


父さんが口から飛び出した。


ものすごい勢いだった。


魔王「父さん!」


しかし――。


止まらない。


父さんは空中を飛んでいく。


シュゴオオオオオオオ!


父さん「うわあああああ!」


母さん「パパーーー!」


殴打「飛んでいきます!」


便意「すごい!」


昆布「方向は――」


昆布が光る靴を持ち上げる。


ピカッ!


遠くまで照らす。


父さんは――。


どんどん遠ざかっていく。


そして、


湿地帯の向こうへ。


さらに向こうへ。


さらにさらに向こうへ。


やがて――。


見えなくなった。


全員「…………」


魔王「……」


五利武「……」


殴打「……」


便意「……」


母「……」


昆布「……」


国王「……」


ゴプリン「……」


魔王「……父さん?」


返事はない。


母さん「パパ……」


魔王「……」


昆布が静かに言った。


昆布「お父さんが、旅立ちの村の方に飛んで行きました」


魔王「えっ?」


昆布「かなり遠くまで飛んでいったので、もう見えません」


五利武「飛距離としては、かなり出ましたね」


魔王「ゴルフじゃないんだから!」


五利武「すみません」


殴打「でも、あの方向なら旅立ちの村の方ですね」


便意「父さん、無事かな……」


母さん「大丈夫よ」


魔王「母さん、分かるの?」


母さん「パパだから」


魔王「理由になってないような……」


母さん「でも、パパは強いから」


メンタルアタックネクタイの声が――。


遠くから、


……聞こえたような気がした。


「俺は……大丈夫だ……」


魔王「今、何か聞こえた?」


昆布「風の音かもしれません」


五利武「僕には聞こえませんでした」


ゴプリン「……お父さん……」


母さん「きっと大丈夫」


その頃――。


カエルモンスターは、魔王軍を一度振り返った。


そして、


「ゲコ……」


と小さく鳴いた。


魔王「……」


カエルモンスターは何かを確認するようにこちらを見て――。


ゆっくりと森の方へ歩き出した。


ズシ……。


ズシ……。


そして霧の中へ消えていった。


魔王「……逃げていったね」


昆布「はい」


殴打「父さんを飛ばして」


五利武「僕のスイングで」


魔王「そこは言わなくていいよ」


五利武「はい」


ゴプリン「……お父さん……飛んだ」


魔王「うん」


ゴプリン「……遠い」


魔王「うん」


ゴプリン「……探す?」


魔王はうなずいた。


魔王「そうだね」


そして魔王軍全員が顔を見合わせる。


魔王「お父さんが、旅立ちの村の方にずっと飛んで行った。探しに行こう」


昆布「そうしましょう」


殴打「行きましょう!」


五利武「父さんを探しましょう!」


便意「俺も行く」


鍋「もちろんです」


勇気「みんなで探しましょう!」


母さん「パパ、待っててね」


ゴプリン「……探す」


国王は馬車から降りた。


国王「わしも探そう」


魔王「国王陛下は安全な場所に――」


国王「いや、ここまで一緒に旅をしてきた仲間じゃ。放っておけん」


魔王「……ありがとうございます」


昆布が地図を広げる。


昆布「問題は、どこまで飛んだかです」


五利武「かなり飛びました」


昆布「そうですね」


魔王「ゴルフクラブで飛ばした本人が言うと説得力があるね」


五利武「はい」


昆布「旅立ちの村まで飛んでいる可能性もあります」


魔王「だったら、まず村へ向かおう」


昆布「はい」


魔王軍と国王一行は、再び旅立ちの村へ向かって歩き始めた。


しかし――。


誰も知らなかった。


父さんが飛んでいった先で、


いったい何が起きているのか。


そして――。


旅立ちの村では、


すでに父さんの到着によって、


とんでもない騒ぎが始まっていることを。


魔王「父さん、無事でいてくれよ……」


その頃。


はるか遠く――。


父さん「うわああああああああ!」


シュゴオオオオオオオオオオ!


まだ飛んでいた。


父さん「俺、いつまで飛ぶんだーーー!」


メンタルアタックネクタイ「飛距離更新中だ!」


父さん「仕事みたいに言うなーーー!」

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