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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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指向性メガホン

王城の謁見の間。


魔王軍は、国王の前に並んでいた。


国王は玉座に座り、魔王軍を見渡している。


先ほどまで穏やかな雰囲気だった謁見の間。


しかし、国王が突然、少し真剣な顔をした。


「実は……」


魔王が顔を上げる。


「はい?」


国王は少し間を置いた。


「王都襲撃は……明日という噂がある」


「明日!?」


魔王軍全員が一斉に驚いた。


「明日ですか!?」


「早くないですか!?」


「もう明日!?」


「準備する時間がないぞ!」


「明日って、明日の朝ですか!?」


「それとも昼ですか!?」


「夜かもしれないぞ!」


一気に謁見の間が騒がしくなった。


魔王も驚いている。


「国王様、それは……かなり急ですね」


国王は頷いた。


「うむ。まだ確かな情報ではない。あくまで噂じゃ」


昆布は黙って考えていた。


腕を組み、少し下を向いている。


「…………」


魔王が昆布を見る。


「昆布さん?」


「はい」


「何か考えてる?」


昆布は顔を上げた。


「準備する時間あるかな……と」


魔王が頷く。


「やっぱりそうだよね」


昆布は王都を守ることを考え始めた。


(王都は広い)


(兵士も多い)


(敵がどこから来るか分からない)


(明日なら、今日のうちに準備をしないといけない)


昆布はさらに考える。


(まず情報)


(次に配置)


(そして連絡手段)


(連絡手段……)


昆布は王城の中を見回した。


すると国王が言った。


「ところで」


昆布が顔を上げる。


「そちらに軍師がいると聞いた」


昆布は一歩前へ出た。


「軍師は私です」


国王は昆布を見る。


「お主か」


「はい」


国王は少し嬉しそうに頷いた。


「ならば、ちょうどよい」


そして国王は立ち上がった。


「では、皆の者」


魔王軍が国王を見る。


「わしについて参れ」


「はい!」


一同は国王について歩き始めた。


玉座の後ろ。


そこには、今まで気付かなかった階段があった。


魔王が驚く。


「ここに階段があったんですね」


国王が言う。


「王城には色々な場所があるのじゃ」


鍋が階段を見上げる。


「結構ありますね」


殴打が言う。


「長いな」


五利武が言う。


「ゴルフ場のクラブハウスより長い」


魔王が振り返る。


「またゴルフ場と比べてる」


五利武は真顔だった。


「習慣だ」


「そうなんだ……」


階段を登る。


コツ、コツ、コツ。


勇気が言う。


「この階段、何のためにあるんでしょう?」


国王が答える。


「王都全体を見るためじゃ」


昆布が反応した。


「王都全体を……」


やがて階段の先に扉が見えた。


国王が扉を開ける。


――ガチャ。


その瞬間。


外から風が吹き込んできた。


「おお……」


魔王軍が声を上げた。


そこには広いベランダのような場所があった。


王城の高い場所。


そこから王都が一望できる。


街並み。


大通り。


住宅。


市場。


城壁。


遠くの門。


王都のほぼ全体が見渡せる。


魔王が思わず言った。


「王都全体が見渡せますね」


国王は満足そうに頷いた。


「そうじゃ」


そしてベランダの端を指差した。


「このベランダは一周出来るからの」


魔王軍が周囲を見る。


確かに、ぐるりと一周できるようになっている。


国王が続けた。


「後ろも横も全部見えるぞ」


昆布は周囲をゆっくり見回した。


「これは……」


昆布の軍師としての目が変わった。


「使えますね」


魔王が言う。


「何が?」


「王都全体を確認できます」


昆布は城壁を見る。


「東側」


次に反対側を見る。


「西側」


さらに横を見る。


「南側」


そして後ろ。


「北側」


昆布は頷いた。


「ここなら、敵の動きを確認できます」


国王も頷く。


「その通りじゃ」


昆布は考える。


「ただ……」


「何じゃ?」


「遠くの兵士に指示を出す方法が必要です」


国王が言った。


「それなら、ちょうどよいものがある」


国王は部下に目配せした。


部下が何かを持ってくる。


細いメガホン。


昆布が見る。


「これは?」


国王が言う。


「指向性メガホンじゃ」


「指向性……」


昆布が手に取る。


国王が説明する。


「これは遠くの兵士に指示を出す時に便利じゃ」


そして昆布に差し出した。


「それをお主に授けよう」


昆布は両手で受け取った。


「それは助かります」


魔王も覗き込む。


「普通のメガホンとは違うの?」


国王が頷く。


「声を向けた方向へ遠くまで届けることができる」


昆布は王都を見る。


「なるほど……」


そして、メガホンを口元へ持っていく。


「テストしてもいいですか?」


国王が頷く。


「もちろんじゃ」


昆布は遠くにいる兵士へ向けて叫んだ。


「兵士の皆さん!」


遠くから、


「はい!」


と返事が返ってきた。


魔王軍が驚く。


「聞こえた!」


「すごい!」


昆布は満足そうに頷いた。


「これなら指示が届きます」


そして少し考える。


「国王様」


「なんじゃ?」


昆布が聞いた。


「もう一つございますか?」


国王が目を丸くした。


「もう一つ?」


昆布は頷く。


「はい」


国王は昆布を見る。


そして、少し呟いた。


「……二つも使うのか?」


昆布は真顔で答えた。


「はい」


「二つも?」


国王は考え込む。


「確かに、それは便利じゃな」


そして部下に言った。


「もう一つ持って参れ」


部下が走っていく。


しばらくすると――


「お待たせしました!」


もう一つの指向性メガホンが運ばれてきた。


国王はそれを受け取る。


そして昆布に渡した。


「ほれ」


「ありがとうございます」


昆布は二つの指向性メガホンを持った。


右手に一つ。


左手に一つ。


魔王が言う。


「昆布さん、二つ持つと結構迫力あるね」


殴打が言った。


「二刀流だな」


五利武が頷く。


「メガホン二刀流」


鍋が言う。


「料理の注文も二方向から聞けそうですね」


魔王が言う。


「鍋さんはどうしても料理から離れないね」


母が笑う。


「昆布さん、すごいわね」


昆布は二つのメガホンを見た。


しかし、そこで昆布は一つを勇気に差し出した。


「勇気さん」


「はい?」


「これを」


勇気が受け取る。


「僕に?」


「はい」


魔王が驚く。


「昆布さん、それを勇気さんに渡すの?」


昆布は頷いた。


「はい」


そして勇気に説明する。


「勇気さんは、ステータスアップの励ます能力を持っています」


勇気が頷く。


「はい」


昆布は王都を指差した。


「これで色んな兵士を励ますことが出来ます」


勇気が指向性メガホンを見る。


「なるほど……」


昆布は続ける。


「私が戦況を見て指示を出します」


そして、


「勇気さんには兵士を励ましてもらいます」


勇気は少し嬉しそうな顔になった。


「分かりました」


昆布が頷く。


「例えば――」


昆布は遠くの兵士を見る。


「兵士が疲れていたら」


勇気がメガホンを持つ。


「頑張ってください!」


声が遠くまで届く。


「頑張って!」


遠くの兵士が振り返る。


「ありがとうございます!」


魔王軍が驚く。


「本当に届いた!」


勇気も驚いている。


「すごいですね、このメガホン」


昆布は頷く。


「そして勇気さんの能力を使えば――」


勇気は少し胸を張る。


「みんなのステータスを上げることができます」


魔王が言う。


「広範囲に使えるなら、かなり頼りになるね」


勇気はメガホンを握り直した。


「では、練習してみます」


そして遠くの兵士に向かって叫ぶ。


「皆さん!」


「はい!」


「明日は王都を守りましょう!」


「はい!」


「皆さんなら大丈夫です!」


「はい!」


「力を合わせて頑張りましょう!」


「おおー!」


王都の兵士たちから声が返ってくる。


その声が王都中に響いた。


魔王は感心した。


「すごい……」


母も笑顔になる。


「勇気さん、頼もしくなったわね」


殴打が言う。


「俺も何か叫ぼうか?」


魔王が振り返る。


「殴打さんは何を叫ぶの?」


殴打は少し考えた。


「今日は絶対ホームランを打とうと思っていました」


「それはヒーローインタビュー」


五利武が言った。


「俺ならナイスショット」


「五利武さんも違う」


鍋が言う。


「私は『お腹が空いたら鍋を食べましょう』」


魔王が振り返る。


「鍋さん、それ料理だから」


ゴプリンがメガホンを見る。


「……プリン」


魔王が言う。


「ゴプリン、それは兵士を励ます言葉じゃないよ」


ゴプリンは少し考えた。


「……頑張って……プリン」


魔王は少し黙った。


「……まあ、いいか」


母が笑う。


国王も笑っている。


そして昆布は笑わずに、王都を見渡していた。


軍師としての顔に戻っている。


「国王様」


「なんじゃ?」


「これなら、明日までにかなり準備できます」


国王は頷いた。


「頼りにしておるぞ」


昆布は頷いた。


「まず、兵士をいくつかの部隊に分けます」


「うむ」


「各部隊に指揮官を置きます」


「うむ」


「王都の門を重点的に守ります」


「うむ」


「そして、敵が別の場所から侵入した場合に備えて予備部隊を置きます」


国王は感心した。


「なるほど」


昆布は続けた。


「さらに、勇気さんには各部隊を巡回するように励ましてもらいます」


勇気が頷く。


「分かりました」


「疲れている兵士には声をかける」


「はい」


「士気が下がった場所は優先する」


「はい」


「必要ならステータスアップもお願いします」


「分かりました」


魔王が言った。


「昆布さん、もう完全に軍師だね」


昆布は頷いた。


「軍師ですから」


魔王は少し笑った。


「そうだった」


その時。


父が静かに王都を見ていた。


不思議なスーツは特に何もしていない。


メンタルアタックネクタイも静かだった。


父が言う。


「俺は?」


昆布が振り返る。


「父さんは防御担当です」


「分かった」


父は頷いた。


ネクタイが小さく、


「仕事だ」


と言った。


父がネクタイを見下ろす。


「今は黙っててくれ」


「はい」


珍しくネクタイが素直に黙った。


魔王が驚く。


「……父さんのネクタイ、言うこと聞いた」


父は少し誇らしそうだった。


「俺のメンタルが強いからな」


魔王は笑った。


「そこは関係あるのかな……」


昆布は二つのメガホン――いや、一つを自分、もう一つを勇気が持っているのを確認する。


そして王都を見渡した。


「これで指揮と励ましの準備はできました」


国王が頷く。


「では、明日の襲撃に備えて――」


昆布が続ける。


「これから王都の各場所を確認します」


「うむ」


昆布はメガホンを握る。


勇気もメガホンを握る。


二人が並んで王都を見下ろす。


魔王軍もその後ろに並んだ。


王都の風が吹く。


明日の襲撃。


果たして敵はどこから来るのか。


どんなモンスターが現れるのか。


そして、魔王軍は王都を守ることができるのか。


昆布が静かに言った。


「まずは……」


全員が昆布を見る。


「王都の地図をください」


国王が頷いた。


「もちろんじゃ」


昆布は真剣な顔をしている。


しかし魔王は思った。


(……明日の襲撃なのに、今から地図を見るんだ)


そして昆布は、さらに言った。


「できれば大きいやつを」


魔王が聞く。


「どれくらい?」


昆布は少し考えた。


「このベランダいっぱいくらい」


魔王が驚く。


「大きすぎない!?」


昆布は真顔だった。


「軍師ですから」

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