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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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勇者募集試験はまだ続く

その後も、勇者募集試験は続いた。


 魔王軍のメンバーと、他の勇者候補たちによる試合が何試合か行われた。


 そして――。


 ついに、すべての試合が終了した。


 会場には、試合を終えた受験者たちが戻ってきていた。


 壁際では、疲れて座り込んでいる者もいる。


 足を押さえている者。


 肩を回している者。


 自分の武器を眺めながら、ため息をついている者。


 そして、魔王軍もそれぞれ試合の疲れを見せていた。


 主審が前に出て、大きな声で言った。


「回復が必要な人は回復しておいてください。手伝いが必要な人は試験官に言ってください」


 すると、魔王軍が一斉に母を見る。


 魔王が言った。


「母さん、お願いします」


「はいはい」


 母はいつものように、両手を軽く前に出した。


「みんな、ちょっとじっとしててね」


 淡い光が広がった。


 魔王の身体が軽くなる。


 勇気も元気を取り戻す。


 父も肩を回した。


「おお……楽になったな」


「よかったわね、パパ」


「さすが母さん」


 父が笑う。


 昆布も首を回した。


「体力が戻りました」


 五利武も足を伸ばす。


「これならまだゴルフができそうだ」


「試験中にゴルフしないでください」


 昆布が即座に突っ込んだ。


 五利武は、


「そうだった」


 と真顔で答えた。


 殴打は自分の腕を確認する。


「バットを振れる」


 鍋は頭に被っていたヘル鍋を触る。


「鍋も大丈夫です」


 便意は瞬間移動の杖を眺めている。


「杖も大丈夫です」


 ゴプリンは頭の鋼鉄のプリンカップを両手で押さえていた。


「……プリンも大丈夫」


「そこが一番大事なんですね」


 魔王が笑った。


 主審は全員を見回した。


「では、試験官の指示に従ってください」


 すると試験官が前に出てきた。


「次は隣の会場です」


 受験者たちがざわつく。


「次?」


「まだ試験があるのか?」


「さっきの試合で終わりじゃないのか?」


 魔王軍も顔を見合わせる。


 試験官は続けた。


「皆さん、椅子に座ってください」


「椅子?」


 魔王が首をかしげた。


 昆布が周囲を見る。


「隣の会場に移動するようです」


「なるほど」


 魔王軍はぞろぞろと隣の部屋へ向かった。


 ドアを開ける。


 そこには――。


 机。


 椅子。


 そして前方には大きな黒板。


 さらに、教壇のようなものまで置いてあった。


 魔王軍が部屋に入る。


 魔王が辺りを見回した。


「なんだ。講演会か?」


「講演会?」


 勇気が言った。


「そうじゃないですか? 机と椅子がありますよ」


 昆布も黒板を見る。


「確かに、講演会場にも見えますね」


 父が椅子を引く。


「じゃあ座るか」


 父が椅子に腰を下ろした。


 その瞬間――。


 カクッ。


「……」


 父は寝た。


「え?」


 魔王が父を見る。


「父さん?」


 返事がない。


 完全に寝ている。


「父さん、寝るの早すぎない?」


 すると鍋も椅子に座った。


「ふぅ……」


 カクッ。


「……」


 鍋も寝た。


「鍋さん!?」


 殴打も椅子に座る。


「やっと休める……」


 カクッ。


「……」


 殴打も寝た。


 勇気も椅子に座った。


「ちょっとだけ休――」


 カクッ。


「……」


 勇気まで寝た。


 魔王は四人を見回した。


「なんで座った瞬間に寝るんだよ!」


 母はそんな四人を見ながら、微笑んだ。


「こういう所、眠くなるのよね」


「母さんまで!?」


 母は自分の椅子に座りながら、目をこすった。


「ほら、静かだし」


「まあ……確かに」


 魔王も少しだけ眠くなった。


「いやいや、寝ちゃ駄目だ」


 昆布が言う。


「魔王様、まだ試験内容が分かっていません」


「そうだった」


 五利武も椅子に座りながら、寝ている四人を見た。


「確かに眠くなるな」


「五利武さんまで寝ないでください」


「分かった」


 ゴプリンは椅子に座った。


 ギシッ。


「……」


 しばらくして、


「……プリン」


 ゴプリンも少し眠そうになった。


「ゴプリンまで!?」


 魔王が慌てる。


「この部屋、何か眠くなる仕掛けがあるんじゃないか?」


 便意が周囲を見回す。


「魔法ですかね?」


「そんな魔法あるの?」


「分かりません」


 昆布は冷静に考えた。


「静かな部屋、椅子、机、疲労。眠くなる条件は揃っていますね」


「なるほど」


 魔王は納得しかけた。


 しかし、そのとき――。


 父が寝言を言った。


「……メンタルガード……」


 鍋も寝言を言う。


「……チャーハン……」


 殴打。


「……ホームラン……」


 勇気。


「……頑張るぞ……」


 魔王は四人を見て笑った。


「みんな、夢の中でも仕事してるな」


 母も笑った。


「疲れてたのね」


 やがて、他の受験者たちも続々と椅子に座っていく。


 しかし、こちらは試験が始まることを知っている。


 魔王軍だけが、


「講演会かな?」


 と、まだ思っていた。


 部屋は満席になった。


 魔王は前方を見る。


 黒板。


 教壇。


 机。


 椅子。


「やっぱり講演会にしか見えないな」


 昆布も黒板を見る。


「確かに……」


 父は寝ている。


 鍋も寝ている。


 殴打も寝ている。


 勇気も寝ている。


 母は少し眠そう。


 五利武は起きている。


 便意も起きている。


 ゴプリンは目を半分閉じている。


 そして――。


 前の扉が開いた。


 試験官が入ってきた。


 受験者たちが静かになる。


 試験官は教壇の前に立った。


 魔王軍も姿勢を正す。


 魔王が小声で言った。


「やっぱり講演会だ」


 昆布も小声で、


「前に立ちましたね」


 母は眠そうな目をしながら、


「眠くならないようにしないとね」


 便意は瞬間移動の杖を膝の横に置いた。


 ゴプリンは鋼鉄のプリンカップを押さえながら、


「……眠い」


 魔王が、


「寝ちゃ駄目だよ」


 と小声で言う。


 試験官は受験者全員を見回した。


 そして言った。


「それでは――」


 魔王軍は耳を傾ける。


「筆記試験を始めます」


「…………」


 魔王軍全員が固まった。


 魔王が小さく声を漏らした。


「……え?」


 父は寝たままだった。


 鍋も寝たままだった。


 殴打も寝たままだった。


 勇気も寝たままだった。


 母だけが、


「やっぱり講演会じゃなかったのね」


 と呟いた。


「母さん、分かってたの?」


「今分かったわ」


「遅いよ!」


 昆布が静かに笑った。


「皆さん、筆記試験ですよ」


 父が目を開けた。


「……試験?」


 鍋も目を開ける。


「……料理ですか?」


 殴打も起きる。


「……試合?」


 勇気も起きる。


「……戦うの?」


 魔王は頭を抱えた。


「全部違うよ!」


 試験官が説明を続ける。


「これから問題を配ります。制限時間は六十分です」


 会場がざわついた。


 魔王軍もようやく事態を理解し始めた。


 しかし――。


 ここから始まる筆記試験が、魔王軍にとって実技試験以上の難関になるとは、まだ誰も知らなかった。


 特に――。


 問題を見た瞬間、魔王軍それぞれの個性が答案用紙に爆発することになる。

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