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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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魔じいちゃんの膝サポーター

王都の武器屋。


魔王軍は、ついにほとんどのメンバーの装備を決めていた。


ゴプリン――鋼鉄のプリンカップ。


殴打――魔法のバット。


五利武――よく飛ぶゴルフクラブ。


昆布――光る靴。


父さん――メンタルアタックネクタイ。


母さん――子供用巨人のしゃもじ。


鍋――ヘル鍋。


便意――瞬間移動の杖。


それぞれが、新しい装備を身につけている。


そして最後に残ったのが――


魔王だった。


魔王は店内の中央に立ち、みんなの装備を眺めていた。


ゴプリンは頭に鋼鉄のプリンカップ。


殴打は魔法のバットを肩に担いでいる。


五利武はゴルフクラブを持っている。


昆布は光る靴を履いている。


父さんは赤いネクタイ。


母さんはしゃもじ。


鍋は鍋を頭に被っている。


便意は、見るからに魔術師らしい杖を持っている。


魔王は少し笑った。


「……みんな、すごい装備になったな」


昆布が言った。


「魔王様はまだですね」


「そうなんだよ」


勇気が魔王を見る。


「魔王様は決まりましたか?」


魔王軍の全員が魔王を見る。


「魔王様は決まりましたか?」


「どんな武器ですか?」


「防具ですか?」


「魔法道具ですか?」


「まさか剣ですか?」


「それとも何か変わった物ですか?」


質問が一気に飛んでくる。


魔王は少し困ったように笑った。


「うーん……」


そして、みんなの装備を見る。


「みんなの見ながら、気になってるのは見つけた」


全員の目が輝いた。


「どれですか?」


「教えてください」


「どこにありますか?」


「見せてください」


魔王は店内を見回した。


「確か……こっちにあったような」


歩き始める。


一同もぞろぞろついていく。


魔王は棚を探す。


剣。


鎧。


靴。


手袋。


帽子。


魔法道具。


「違うな……」


さらに奥。


「これでもない」


さらに奥。


父さんが聞く。


「何を探してるんだ?」


「えーっと……」


魔王は思い出そうとしている。


「足につける物だったと思う」


昆布が言った。


「足ですか?」


「うん」


五利武が言う。


「ローキック用ですか?」


「そう」


殴打が納得する。


「魔王様の得意技ですからね」


魔王はうなずいた。


「俺の攻撃は基本的にローキックだから」


便意が言った。


「確かに」


勇気も笑う。


「魔王様、頭を狙わないですからね」


魔王は苦笑した。


「頭に当てるのは可哀想なんだよ」


父さんが言う。


「だから身体を狙うんだな」


「そう」


魔王は棚を見ていく。


すると――


「あ」


魔王の足が止まった。


「これだ」


魔王が棚から一つの商品を取り出した。


それは――


膝サポーターだった。


見た目は普通の膝サポーター。


黒っぽい布製。


しかし、商品タグに妙な文字が書いてある。


魔王が読み上げた。


「……魔じいちゃんの膝サポーター」


魔王軍全員が固まった。


「…………」


魔王も固まる。


「……なんだこれ?」


母さんが近づく。


「膝サポーターね」


「うん」


父さんも見る。


「魔じいちゃん?」


昆布が商品タグを確認する。


「確かに『魔じいちゃんの膝サポーター』と書いてありますね」


勇気が首をかしげる。


「おじいちゃんの膝サポーター?」


便意も不思議そうに見る。


「魔王様は膝が悪いんですか?」


魔王がすぐに答える。


「いや、俺は別に膝が悪いわけじゃないよ」


「じゃあ、なぜこれを?」


「いや……」


魔王はタグをもう一度見る。


「『魔じいちゃん』って書いてある」


「はい」


「誰だ?」


誰も答えられなかった。


ゴプリンまで首をかしげている。


「……魔じいちゃん?」


鍋が言う。


「知りませんね」


五利武も首をかしげる。


「私も知りません」


殴打も言う。


「私もです」


父さんが考える。


「魔王様のおじいちゃん?」


「違うよ」


「じゃあ、誰だ?」


「俺も知らないよ」


魔王軍全員が膝サポーターを見る。


商品名だけが、妙に堂々としている。


そこへ店員がやって来た。


「あぁ、それですか」


魔王が振り返った。


「店員さん、この『魔じいちゃん』って誰ですか?」


店員は少し考えた。


「ああ……」


そして普通に答えた。


「それは、この前『魔じいちゃんの膝サポーター売りたいです』と言ってきた人がいたので、買ったものです」


魔王が固まる。


「……それだけ?」


「はい」


「その人、誰だったんですか?」


「知りません」


「え?」


「魔じいちゃんって誰か分からないので、魔王専用の棚の空いている所に置いてあるだけです」


魔王は言葉を失った。


「……俺の専用棚?」


店員がうなずく。


「はい」


魔王は商品を見る。


「なんで?」


「名前が『魔』から始まっているので」


「それだけ?」


「はい」


昆布が冷静に分析する。


「非常に合理的ですね」


魔王が振り返る。


「昆布さん、どこが?」


「『魔』という文字が入っているので、魔王様の棚に置いた」


「そこだけ見たら合理的だけど!」


魔王は膝サポーターを手に取った。


「でも……」


自分の脚を見る。


「俺の攻撃はローキックだから、足に付ける物が良いと思って」


魔王軍が一斉にうなずいた。


「確かに」


「魔王様のローキックなら良いと思います」


「足を守るのは重要ですね」


昆布も言った。


「魔王様は接近戦では脚を使いますから、装備としては理にかなっています」


魔王は少し考えた。


「名前は変だけど……」


膝サポーターを見る。


「使いやすそうなんだよね」


母さんが言う。


「試着してみたら?」


「そうだね」


魔王はその場で膝サポーターを装着した。


キュッ。


膝にしっかり固定する。


魔王は少し膝を曲げる。


「……お」


もう一度曲げる。


「おお」


さらに屈伸。


「……なんか楽だ」


昆布がすぐに反応する。


「装着感はどうですか?」


「かなりいい」


魔王は歩いてみる。


一歩。


二歩。


三歩。


そして軽く脚を振ってみた。


「……なんだこれ」


魔王の表情が変わった。


「脚が軽い」


五利武が近づく。


「本当ですか?」


「うん」


魔王はもう一度脚を動かす。


「しかも……」


膝を曲げる。


伸ばす。


そして軽く蹴る動作をする。


「脚に力強さを感じる」


全員が驚いた。


「おお!」


「すごい!」


「本当に魔法の装備だったんですね!」


魔王は膝サポーターを見つめた。


「ただの膝サポーターだと思ってた」


店員も少し驚いている。


「私もです」


「店員さんも知らなかったの?」


「はい」


魔王は苦笑した。


「この店、そういうの多いな……」


昆布が商品を確認する。


「能力についての説明は?」


店員がタグの裏を見る。


「ありません」


「説明書は?」


「ありません」


「どう使うかは?」


「膝につけます」


魔王が言った。


「それは分かるよ!」


一同が笑った。


父さんが魔王の脚を見る。


「魔王様、それでローキックしたら強そうだな」


魔王は少し不安そうだった。


「いや、できれば戦いたくないんだけど」


殴打が魔法のバットを持ちながら言う。


「でも、攻撃力が上がるなら便利ですね」


五利武もゴルフクラブを持ってうなずく。


「新しい装備で強くなるのは楽しみですね」


便意も瞬間移動の杖を持っている。


「僕も魔法を練習しないと」


魔王はみんなを見た。


「みんな、それぞれ新しい装備を手に入れたんだな」


昆布が言う。


「これで魔王軍の装備が一通り整いましたね」


ゴプリンが自分の頭を叩く。


カン。


「……守る」


鍋も頭の鍋を触る。


コン。


「私も守れます」


父さんが赤いネクタイを整える。


「俺は攻撃もできる」


母さんがしゃもじを持つ。


「私はご飯をよそえるわ」


魔王が笑う。


「それ、戦闘装備じゃないよね」


母さんは笑った。


「でも便利よ」


「うん」


魔王は自分の膝を軽く叩いた。


「俺はこれでいいかな」


商品タグを見る。


『魔じいちゃんの膝サポーター』


魔王は少し考える。


「名前は……」


全員が見る。


「変だけど」


膝を曲げる。


「俺の脚には合ってるみたいだ」


そして店員に言った。


「これ、ください」


「ありがとうございます」


魔王は代金を払い、膝サポーターを正式に装備した。


こうして――


魔王は、


『魔じいちゃんの膝サポーター』


を手に入れた。


魔王軍の全員が新装備を身につけた。


魔王は一歩前に出る。


便意は瞬間移動の杖。


鍋はヘル鍋。


母さんはしゃもじ。


父さんは赤いネクタイ。


昆布は光る靴。


五利武はゴルフクラブ。


殴打は魔法のバット。


ゴプリンは鋼鉄のプリンカップ。


そして魔王は――


魔じいちゃんの膝サポーター。


魔王はみんなを見る。


「……すごいパーティーになったな」


昆布がうなずく。


「かなり個性的ですね」


父さんが言う。


「俺たちは強くなった」


母さんが笑う。


「帰ったら新しい装備をみんなに見せましょう」


鍋も言う。


「その前に料理しましょう」


ゴプリンが即座に反応する。


「……プリン」


魔王が笑った。


「結局そこなんだね」


ゴプリンはうなずいた。


「……プリン」


そして――


魔王軍は武器屋を出た。


王都の大通りには、たくさんの人が行き交っている。


勇者らしき人。


冒険者。


商人。


魔法使い。


そして、人間に混じって歩く安全なモンスター。


魔王は新しい膝サポーターを確認しながら歩いた。


「……本当に楽だな」


一歩。


また一歩。


脚を動かすたびに、膝が軽い。


そして、脚の奥から不思議な力強さを感じる。


魔王は少しだけ足を止めた。


「この装備……もしかしたら、結構すごい物なのかもな」


昆布が言った。


「今後、能力が判明するかもしれませんね」


便意が瞬間移動の杖を見る。


「僕の杖も、まだ何ができるか全部分かってないです」


殴打が魔法のバットを見る。


「俺のバットもですね」


五利武もゴルフクラブを見る。


「私もです」


魔王はみんなを見た。


「じゃあ、これから少しずつ使いこなしていこう」


勇気が笑った。


「はい!」


魔王軍は王都の大通りを歩いていく。


しかし――


魔王たちはまだ知らなかった。


王都には、勇者だけではなく、さまざまな冒険者やモンスターがいる。


そして商人が言っていた。


「王都なので、たまに事件が起きたりします」


という言葉。


新しい装備を手に入れた魔王軍が王都を歩き始めた、その直後。


遠くの通りから、


「誰か助けてくれー!」


という声が聞こえてきた。


魔王軍が一斉に立ち止まる。


魔王はため息をついた。


「……もう事件?」


昆布が光る靴を一歩踏み出す。


ピカッ。


「どうやら、王都に来て最初の仕事になりそうですね」


魔王は膝サポーターを見た。


「できれば、戦わない事件だといいな……」


父さんが赤いネクタイを締め直す。


「メンタルアタックの出番か?」


魔王が苦笑する。


「まだ使うとは決まってないよ」


ゴプリンが鋼鉄のプリンカップをカンと叩く。


「……プリン」


「ゴプリン、事件よりプリン?」


「……うん」


魔王は笑った。


「まあ、いつも通りだね」


新しい装備を手に入れた魔王軍。


そして王都で最初の事件が、今まさに始まろうとしていた。

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