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キラキラネーム魔王の俺、魔王になってみた。  作者: 耀悟


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鍋、ヘルメットを手に入れる

王都の武器屋。


ゴプリンは鋼鉄のプリンカップ。


殴打は魔法のバット。


五利武はよく飛ぶゴルフクラブ。


昆布は光る靴。


父さんはメンタルアタックネクタイ。


母さんは子供用巨人のしゃもじ。


魔王軍は次々と個性的な装備を手に入れていた。


そして次に装備を探すのは――鍋だった。


鍋は迷わず店の奥へ歩いて行く。


そこには、大きく書かれた札があった。


『調理戦闘用品コーナー』


魔王が思わず立ち止まる。


「武器屋なのに調理戦闘用品って何?」


店員が笑顔で答えた。


「料理人の冒険者は意外と多いんですよ。」


「本当に何でもあるな。」


鍋の目は輝いていた。


「これは楽しそうですね。」


棚には色々な調理道具が並んでいる。


攻撃用フライパン。


攻撃用中華鍋。


攻撃用片手鍋。


攻撃用両手鍋。


攻撃用やかん。


魔王が首をかしげる。


「やかんも攻撃用なの?」


店員が説明する。


「お湯をかけられます。」


「普通のやかんでもできるよ。」


鍋は次々に手に取っていく。


「攻撃用フライパンかな。」


ブン。


「振りやすいですね。」


次は中華鍋。


ブンッ。


「これは返しやすそうです。」


さらに片手鍋。


「煮込みながら殴れますね。」


魔王が笑った。


「戦いながら料理する気?」


鍋は真顔だった。


「効率は良さそうです。」


「効率を求める方向がおかしいよ。」


そこへ母さんがやって来た。


「鍋さん、料理しながら戦うの?」


「そのつもりでした。」


「でも、ご飯がこぼれそうね。」


「確かに。」


鍋は少し考えた。


その様子を見ていた魔王が言った。


「鍋さん。」


「はい。」


「鍋って武器なのかな。」


「料理道具ですね。」


「だよね。」


魔王は腕を組んだ。


「でも、鍋さんがいないと料理する人いなくなるから、防具が良いんじゃないかな。」


鍋はハッとした。


「……なるほど。」


「料理担当は大事だから。」


鍋は自分の腕を見た。


「私は防御に回った方が良いですね。」


「そうそう。」


「腕を怪我したら料理出来ないですからね。」


母さんも大きくうなずいた。


「そうよ!包丁を持つ手は大事だもの。」


鍋は決意した。


「防具を探します。」


一同は防具コーナーへ移動した。


そこにも妙な商品が並んでいた。


料理人用耐熱よろい。


油はね防止マント。


切れない手袋。


泣かない玉ねぎゴーグル。


魔王が吹き出した。


「武器屋なのに完全にキッチン用品売り場になってる。」


店員は胸を張る。


「冒険者の生活を支える店です。」


「便利すぎる。」


鍋は一つ一つ見て回る。


「これは重いですね。」


「これは腕が動かしにくい。」


「これは料理中に熱そう。」


真剣に選んでいる。


すると――。


「あっ!」


鍋が声を上げた。


「ありました!」


魔王たちが振り向く。


鍋は棚の前で何かを頭に載せていた。


「……。」


魔王は一瞬言葉を失った。


「鍋さん。」


「はい。」


「何で鍋被ってるんですか?」


鍋は頭を軽く叩いた。


コンコン。


「ヘルメットになる鍋を見つけました。」


「ヘルメットになる鍋?」


店員が説明する。


「正式名称は『ヘル鍋』です。」


魔王が聞き返した。


「ヘルメットだからヘル鍋?」


「その通りです。」


鍋は鏡の前へ立った。


頭にぴったり収まっている。


しかも耳の横には小さな穴。


後ろにはあご紐まで付いていた。


「すごくフィットします。」


鍋は左右に頭を振る。


全然ずれない。


「おお。」


勇気が感心した。


「本当にヘルメットですね。」


昆布が近づく。


「耐久性はどうですか?」


店員は胸を張る。


「落石にも強いです。」


「料理にも使えますか?」


鍋が聞いた。


「もちろんです。」


魔王が驚いた。


「料理もできるの?」


「戦闘中に火があれば、そのまま鍋として使えます。」


鍋の目が輝いた。


「完璧ですね。」


母さんが笑う。


「頭を守れて、ご飯も作れるなんて、一石二鳥ね。」


父さんも赤いネクタイを締め直しながら言う。


「メンタルも上がりそうだな。」


「そこは関係ないと思います。」


昆布が冷静に突っ込んだ。


ゴプリンが近づく。


鋼鉄のプリンカップ越しに鍋を見る。


「……鍋。」


鍋もうなずく。


「鍋です。」


魔王が二人を見比べた。


「ゴプリンは頭がプリンカップ。」


「鍋さんは頭が鍋。」


勇気が笑う。


「頭装備コンビですね。」


ゴプリンが鍋を見ながら一言。


「……料理。」


鍋も笑顔で返した。


「帰ったら美味しい物を作りますね。」


ゴプリンは満足そうにうなずいた。


「……プリン。」


「プリンも作ります。」


ゴプリンの目が輝いた。


店員が最後にあご紐を締めた。


「これで完成です。」


鍋はもう一度鏡を見る。


コンコン。


頭を叩いて音を確かめる。


「いい音ですね。」


魔王が笑った。


「鍋さんらしい装備だね。」


「ありがとうございます。」


魔王は会計を済ませた。


「それにしましょう。」


鍋は深く頭を下げた。


「大事に使います。」


こうして鍋は、新しい装備――


『ヘル鍋』


を手に入れた。


料理ができる。


頭も守れる。


しかも冒険中はそのままヘルメット。


まさに鍋さんにぴったりの装備だった。


魔王軍の装備はますます個性的になっていく。


そして武器屋でまだ装備を選んでいないのは――


勇気、便意、そして魔王。


魔王は店内を見回した。


「さて、次は誰の番かな。」


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