9話 それに触れる機会を得て①
その日の夕食の席。
夕食はいつも家で、と決まっている。
20人は座れるかという程の大きな長テーブル。しかし席についているのは自分と両親の3人だけ。
自分が知らない、かつてのこの場所にはこの大きさにも意味があったのだろう。しかし今となっては、空間密度の寂しさの増長にしかなっていない。
静寂の中、目立つ食器音。
非常に上質な、いつもと変わらない、食べ慣れた味。
皮肉にも、その完璧さが最後の後押しとなって、決意が固まる。
夕食を食べ終えたのを見て、話を切り出す。
「父上、相談したい話が。」
しばしの緊張の時間ののち、上座に座る父上、ビルクレーク・ロンドラーレが言う。
「…なんだ?」
「下層にて兵団を作るという話、ご存じです?」
「既に各所で話題に上がっている。知らない者の方が少ないだろう。」
「その件に私が少し関わった、と話した事も覚えてます?」
「…相談事というのは、それに関係する話か?」
重圧感。それに負けないよう、語調を変えずに言う。
「その兵団を育成する段階として、指導者になる人を、政府が募ってます。」
そこまでの時点で察しがついたのだろう、より鋭くなった父上の目線に、言葉が一旦止まる。
「一応聞こう。それがどうした?」
「その話に、私も乗ろうかと。」
がたり、と椅子の音を立てて父上が立ち上がり、しかし思考の間をおいて、部屋から去り際に一言残す。
「軽い状況で話す事でもないだろう、後で部屋に来なさい。」




