5話 外の刺激に触れて①
さほど時間は経たず、審査対象は来た。
人の流れが穏やかな中、その動きはすぐに分かった。
遠く、屋根の上を走る人影。
時折隙間の道に沈んでは、また屋根上に飛び乗ってくる。建物の陰で見えなかった内訳が、大通りを横切る所になって、ここからでも見える。
街灯を足場に派手なパフォーマンスをしながら、しかし地面に降りる時間は最小限に、道を渡り再び屋根の上へ。
目立ちたがりか、なんて思いながら観察を続ける。
けど、対象が目的地である関所まで到着し、振り返ってみて思う。
審査対象が東門地区のどこから来たのかまでは聞いてない。けど、仮に最短としても北東地区を縦断するとなると、かなりの距離があったはず。
見えてた範囲だけでも、相当な距離。それをペースを落とす様子は一切見せず、到着した後もまだ余裕があるように見えた。
それに東門地区の一介の荷運び屋なら、この辺りの地理には詳しくはない筈。だとしたら、あの流れるような一連のアクロバットも、即席で組まれたものだろう。
「……といった観察のもと、その瞬発的な曲芸の組み立ての判断力は、見込みありと判断します。
特に東門地区から走り抜けた持久力は、有数のものかと。」
必要な要素を落とさず、短く纏めて伝える。
それをひたすら紙に書き留めてから、来る返答。
「見解と意見、ありがとうございます。」
「ただ、大きく動きを見せるのは、行動の原理が移動の実利よりもパフォーマンスに重きがあるように見えました。それが戦闘教示の際、変な癖にならないといいですが。」
同じように、追記を書き記してからの返答。
「ありがとうございました。
よろしければ、下の関所に寄っていってください。」
「…まだ何か仕事が?」
「いえ、形式上仕事として注文を出したので、よろしければその品を、と。もちろん今回の報酬とは別枠として。」




