21話 再び見た姿に縋り⑤
「おー騎士様、こんなとこで偶然じゃん。」
背後からの声。ニメージュだ。
「…なんなんでしょうか、その呼び方。」
「いや、まぁ、どう呼べばいいか分からないし?
こう呼んでほしいとかあれるんなら、そうするけどさ。」
距離感が随分と…いや、下層ではそういうものなのだろうか。今は下層の習わしに従うべし、相違のある自分の中の常識は封印すべし。
それに兵団内の立場はともかく、この一件に関してはあちらの方が上。慣れない環境だからこそ、慎重に。
「もしかして、この間の運搬の話、今受けていただけます?」
今ここで話しかけてきたということは、早くも当初の目当てに達成の兆し?
「それなんだけどさ、冷静になってみたらなんだけど、こないだのは特例の通行路だったからまぁ余裕だったのもあったからさ。
それが使えない地上徒歩だと、思ったよりかなり時間かかりそうで。合間に軽く行って戻る、って訳には行きそうにないんだよ。」
「そう、ですか。」
「それにさ…ぶっちゃけモチベが中々のらねぇんだ。安請け合いしちゃった後で悪いとは思うんだが、騎士様の事、よく知らねぇし。
命令とあらばやるけどさ、期限を決めてくれりゃ。」
命令だなんてそんな強い言い方をしたつもりはなかった。その違和感と、話す様子を見て、自分にはなかった視点に思い至る。
いち意見を全てとして受け取るつもりはない。けど「上層の者」という立場は、私が思うよりも重いものとして見られている?
「ではその、命令などではなくひとつ頼まれ事をお願いできませんか?」
「…どんなだ?」
微妙な受け取られ方な気はしたが、話を続ける。
「こちらの食事作法のご教授をお願いしたいのですが。」
挟まる長めの間。その上での返答も、尚も言葉に迷いが見えた。
「作法つっても、そんなの無いというか、考えた事も無いというか……。だからあえて答えにするなら、教えれる事は何も無いっていうか。
てか、それくらいなら隊舎食堂でも見に行ったら雰囲気分かるんじゃないか?」
戸惑いが見えるその言葉。
だけど。
「…何故私はそれに気付かなかったのでしょう。」
時間は丁度昼飯時真っただ中。そしてここから隊舎食堂まで少し遠い。
「早速行ってみます! ありがとうございます!」




