19話 再び見た姿に縋り③
事がひと段落して。
明日に備えるべき、でも中途半端に時間が余った。そんな時だった。
単なる偶然。けど、廊下で見かけた人影は、丁度が過ぎる相手。
事後処理のついでに、個人的な関心から情報が頭に残ったその人。確か名前はニメージュって書類にあった。
「少し、お時間いいですか?」
「…何の用?」
気持ちが先走り、頭の中で話の順列がぐちゃぐちゃになる中で、ひとつずつ言葉として取り出す。
「もしかしてと思って改めて資料を確認させてもらったのですが、この間東の層壁門まで配達に来てた方、ですよね?」
「そうだけど、何でそれを?」
「あの時、そこに居て見てたんですよ、審査員として。
それで少々個人的に気になった事があるのですが、聞いてもよろしいでしょうか?」
「…答えられる事なら。」
ちょっと事務的になりすぎたかも? いや、迷う時間を作るくらいなら、いっそこのままいこう。
「ニメージュさんは4年前の避難民保護の対象となっていて、それはまだ受けていると。その期間もまだ余裕がある。
さほど不自由はしない程には支給を受けている、というのは合ってます?」
「まぁ、贅沢しなきゃ何も問題無いくらいには。」
「その上で更なる稼ぎを求めるという事は、何らかの目的が?」
「なんていうか、自由のため、かな。」
特に深く考えないままの切り口だった。けど、踏み入ってみると気になってきて、けど踏み込むのは良くない気もして。
「…言いづらい話のようですね。」
「まぁ、うん。」
「ともあれ何らかの目標があっての事、ですね、羨ましい話です。」
「でも、何でそんな事を?」
折角の振りだし本題に入りたい。けどその前に、気になってしまったところを解消したい。
「そうですね…それに答える前にひとつ。
ニメージュさんは、シントの『上層』の事をどう思いますか?」
「どう、つっても…なんか壁の向こうのよく知らない場所、ってくらいにしか……。」
「上層からしても、同じなのです。貴族意識が高い家も多く、下層という地は近くでありながら遠い場所で。
私の家『ロンドラーレ家』も、シント黎明期の騎士の家系として、剣術を継ぐ事を重要視され。…本来の後継者のはずの兄が家出をしてから、余計に。
なので、こうして仕事の名目で下層に来るのが、今できる最大限の自由の選択なのです。
その配達の時にいただいたものも貴重な下層を知る機会、ではあったのですが…ここにいるという事は、配達の仕事はおしまい、という事ですよね。」
話してる内に思考の整理がついて、自然とたどり着いた答え。まずはあの外の世界への羨望のきっかけになった、あの味を再び。そう思っていたけど、その繋がりはこの募兵で……。
「確かに仕事としてはやってないけど、個人的になら別に構わないぞ?」
「本当ですか? 戦闘指導員として当面留まるので、今度お願いします!」




