11話 それに触れる機会を得て③
自室の棚、その高くに置かれている剣を取る。
父上から頂いた、真剣だ。
ロンドラーレ家の者は齢12の時に剣を貰い、ロンドラーレ流剣術の習得を始める。
そこらの量産の剣ではない。ロンドラーレ流剣術に適した素材や造りの、特注の一振り。
銀に似た輝きを放つ金属「イービラス」は、魔力を弾くというその性質が、ロンドラーレ流剣術を使う上で補助となる。
という実戦的な性能もだが、見て目立つのはその鞘のデザイン。シンプルに、だが峰にあたる部分に装飾が施されたその金属鞘は、それ自体が刀身のようにも見える造形。これもまた、意図された設計のもの。
鞘は枷。あえてこの状態のまま使用して剣術を習得し、その状態で十全に扱えるようになれば、抜身の状態で十二全に発揮できる。そんな昔の根性論が、見た目は洗練されて手元にまで伝承されてきている。
今は修練を積む時のほか、剣術を魅せる、あるいは剣術で何かを示す時にもこの状態で使う。実際にその目的で使う事はこれまで無かったが、そう聞いている。そしてその時は、今だろう。
誰にも向けた事の無かった見栄の刃。
実際以上に重く感じるそれを携え、屋敷の中庭。
父上は既にそこに座り、待機していた。
こちらに気付き一瞥、立ち上がり位置に向かう。その手には同じく、鞘の剣を持って。
「分かっているな?」とでも聞こえてきそうな、静かな構え。
こちらも対の位置を取り、問う。
「剣術を認めてくれれば、下層への出向きを許してくれるんですよね?」
「認めるに足りなければ、話にならん。それだけだ。」
言い方は厳しい父上の癖。裏を返せば、認めさせれば話は一歩進む。
気持ちを切り替え、こちらも剣を構える。




