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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第5章 叛逆の賛歌
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第161話(5-4-6)

「ちゃっす、久しぶり」


そう言ってフランと共に連れて来られた少女が呑気に手を挙げ言った。黒髪ボブで、左目にトケイソウのお洒落な眼帯をした少女。こいつが、クリームちゃん。こっ、こいつは、スリーを罠にはめて殺した『絶叫の魔人』じゃないか。こいつが、クリームちゃん。どっ、どこがクリームちゃんなんだ。こっ、殺したい。


「ちょっと、睨まないで。僕たちもう仲間じゃん?」

「・・・・」

「エーデル、ごめんなさい。上手くトゥワイスとモアに取り入って馴染まれてしまったわ。『クリーム』って名前もあのお洒落な眼帯も2人からのプレゼントなの」

「・・・・」

小さい子にすり寄って殺しにくくするなんて相変わらず生き意地が汚い。



「なんか緊張感ねぇから、ここで殺していいか?」

そんな私たちのやり取りを見てナイトストームが少し呆れた口調で言った。


「先輩、エイトと邪魔抜きで勝負できなくていいんすかぁ?」

「ちっ。おい、魔人、さっさと結界作れ」


「はいはい」

『絶叫の魔人』はそう言って何もない空間をわちゃわちゃし始める。


「あっ、先輩。後出しなんすけど、私たちもエイト側で参戦していいッスよね?」

「は??」

「あれ、まさか、最強最悪の『罹人』と恐れられた先輩が自分の教え子とどこの馬の骨とも分からない『魔女』が参戦するだけで困っちゃうわけないッスよね?」

「・・・・・わーーたっよ。まとめて、地獄に送ってやる」

「あざーーーーー流石先輩話が分かる」

「後悔するぞ。エドウィージュ」

「名前で呼んでくれるなんてエモいっすね。後悔はさせませんよ」



「はーーい開きました、開きました。僕の結界、おなじみのお花畑でーす」

『絶叫の魔人』が緊張感のない声で言った。


「よし、行くか」

すると、ナイトストームはそう言って私を抱き上げ『結界』に入った。そして、一瞬だった。一瞬で黒い風に乗り、入り口から150m以上離れた場所に連れて来られた。後から入ってきた3人がとても小さく見える。



「じゃあ、殺すわ」


ナイトストームが私に向かってそう言う直前、遠くの方で『絶叫の魔人』が『魔女』の姿に変わっているのが見えた。ナイトストームが私に手をかけようと片腕を上げたのとほぼ同時に彼女は耳をつんざくような咆哮を空間中に轟かせた。耐えきれず両手で耳を抑える。でも、耳を抑えたのは私だけじゃなかった。ナイトストームも同じように両手で耳を塞ぎ、私を手放したのだ。


私の身体が少しだけ宙に浮いた瞬間、体長3mくらいのコウモリとヒグマが合体したような『魔女』が黒い煙と共に私の目の前に現れ、ギュっと私を抱きしめ私諸共ワープしてナイトストームから一気に遠ざかる。こっ、この『魔女』は、エドウィージュさん!! 凄い、たっ、助かった!そう思った直後2回目のワープから出た私たちを地面から伸びて来た黒い竜巻が襲う。エドウィージュさんは私をかばうように身を翻し私を空中に投げ出し、自分だけ竜巻をモロに喰らって花畑に派手に転げ落ちた。


「エドウィージュさん!!!」

空中に投げ出されたまま私は叫んだ。


「あの人は大丈夫!!あなたはクリームと逃げて!!!」

投げだされた私を上手くキャッチしたフランが言った。



「一本取られた!!思ってたのと違うがしょうがねぇ!このままやるぞ、エイト!」


言われた通り退避しようとすると、空からそんな楽しそうな声が聞こえた。上を見ると、ナイトストームが頭上で両手を広げ左右から3つずつ巨大な竜巻をわたしたち目がけ嗾けているところだった。黒い3つの竜巻が逆巻き同時に私たちに襲いかかる。


「らあっ!!!」

フランは叫び、地面から紫の瘴気を巻き上げなんとかそれを防ぐ。しかし、休む間もなく次々と新しい竜巻が生成され、それらが何度も何度も私たちに向かってくる。フランはその全てを地面から引き揚げた紫の瘴気で弾いていく。黒い竜巻と紫の瘴気がぶつかる度に花火が開いた時のような凄い音が鳴り、綺麗な黒と紫の火花を散らしどんどん花畑を抉っていく。

「絶対に私の後ろから離れないで!」

フランが紫の瘴気を地面からひっきりなしに出しながら叫ぶ。私は大声で返事するが、そもそも私が一歩でも動いたら魔法同士の衝突に巻き込まれ一瞬で肉片になってしまうだろう。この2人の戦いは次元が違う。


「うぇっはっはっはっは」

頭上からナイトストームの楽しそうな笑い声が響き、それに合わせて襲ってくる竜巻の回転速度が上がる。それを受けたフランは巻き上げる紫の瘴気を濃くして応戦する。勢いを増した竜巻と濃くなった紫の瘴気がぶつかり、先ほどよりも更に激しい音と衝撃が来る。痛っ!!!衝撃波と飛び散った火花で身体が左右から殴られているみたいに揺さ振られる。あっ、コレ!!!伏せてないと死ぬやつだ!!!!私は慌てて身体を小さくして頭を押さえ地面に伏せた。


そこからは音だけ聞いた。まるで、戦争でもやってるような絶え間ない爆発音。恐い恐い恐い恐い。死にたくない、死にたくない!!!



それから、しばらくうつ伏せのまま戦争のような轟音を聞いていたが不意にそれが止んだ。恐る恐る顔を上げると、フランが肩で息をして空に浮かんでいるナイトストームを見ていた。ただあちらもまだまだ余裕という感じではなさそうだった。



「やるじゃねぇか、エイト。先にどっちかがエネルギー切れするまでこのままずっと単調な魔法の撃ち合いするってのも芸がねぇし、お互いちょっとギア上げてこうぜ」

ナイトストームはそう言って少し微笑んでから黒い竜巻の方に仰向けに倒れ、自ら竜巻に呑まれて行った。彼女を呑み込んだ竜巻に赤い稲妻のようなものが奔る。もっ、もう見るからにヤバそうだ。



赤い稲妻を帯びた黒い竜巻が真っ直ぐに私たちの方に落ちて来る。


「があああ゛あ゛あ゛」

再びフランは叫び、地面に指を突き刺し今度は緑色の混じった紫の瘴気を抉れた黒い地面から巻き上げる。それでなんとか竜巻の軌道を逸らせたが、かざした右腕が嫌な音と共に千切れ飛び一瞬で竜巻の中に吸い込まれ見えなくなってしまった。


「フラン、腕が!!」

「平気!!それより絶対に私の背中から離れないで!!」

「えっ、えっ、うっ、うん!」

私の返事を待たないうちにフランはもう一度地面に手をかざし、今度は瘴気ではなく2体の巨大な魔女を引き揚げた。全身灰色の顔がライオンで翼の生えた体長10mくらいの二足歩行の怪物。それが2体。その2体が軌道変えられ戻ってくる例の竜巻に向け両側から真っ赤なレーザーを浴びせる。2本のレーザーを受けた竜巻が私たちの目の前で大爆発を起こし、大量の土煙が辺りに拡がった。



やっ、やった???ナイトストームの生死を確認するため土煙が晴れるのをフランの後ろから顔を覗かせ待っていると、どこからかゴゴゴゴゴッと凄い破壊音が響いてきた。「下から来る!!!」

突然フランが私の方に振り向き、私を突き飛ばした。


いきなり突き飛ばされ尻もちをついた私の目と鼻の先に例の赤い稲妻を帯びた竜巻が伸びている。

「あっ、あっ、あああああ、あっ、あっ・・・・」

私は情けない声を漏らした。あとコンマ数秒でもフランが気付くのが遅れていたら、間違いなくこの地面から出て来た竜巻でミンチになっていた。全身が恐怖で震える。でも、立って早く逃げないと・・・・あれ???あれ???腰に力が入らない!?!?マズイマズい竜巻がこっちに!!


もう駄目だと思い目を瞑ったが、バシュンっと云う何かが弾けた音を聞きすぐに目を開けた。フランが出した魔女のうちの1体が竜巻に体当たりして、無理やり竜巻の軌道を変えたのだ。バシュンっと云う音は多分その魔女が竜巻にぶつかり弾けた音、辺りに黒い血と灰色の肉片が拡がっている。たっ、助かっ・・・・・だっ、駄目だ!!また戻って!!!あっ!!私が諦めそうになると、残りの魔女が地響きを鳴らしながら走ってきて、彼もまた竜巻に捨て身の体当たりをして竜巻を少し離れたところまで移動させる。飛び散った彼の灰色の肉片のいくつかと黒い血飛沫が私の顔にかかる。もう嫌だ。もう帰りたい。私は尻もちをついた体制のまま泣きそうになる。いや、もう殆ど泣いている。



「エーデル、もう少しだからもう少しだけ頑張って!」


いつの間にか私の前に立っていたフランが言う。そして、深く息を吸いながら静かに右腕がついていた場所に紫と緑の混じった瘴気をこれでもかというほど集め、禍々しい腕を作り出す。その腕から地獄の底から吹き出したような怨嗟の声が響く。


「これで終わらせる!!!!」

フランは大声でそう宣言し、真正面から、拳で竜巻を迎え撃つ。



そして、赤い稲妻を纏った黒い竜巻と紫と緑の混じった瘴気を纏ったフランの拳が衝突する。衝突した瞬間、『ブュウン』っと今まで聞いたことのないような奇妙な音がして、身体が吹き飛ばされ、何も見えなくなり、何も聞こえなくなった。


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