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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第5章 叛逆の賛歌
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第160話(5-4-5)

「よっ、お姫様。奇遇だな。お散歩か?」



教会のある2つ隣の駅でひと気のないところを探そうとウロウロしていると、少しだけ聞き覚えのある声がした。振り向くと、黒いコートを着て紫のサングラスをかけた女性が立っていた。その女性がゆっくりとサングラスを外す。


あ゛っ。


完全にやってしまった。ナイトストームを倒すために私に出来る事はないか、私も一緒に戦う事はできないか、その相談をするため教会から離れたひと気のないところでヨハナさんを呼ぼうと思っていた矢先だ。ヨハナさんが今日私をストーキングしているかどうかの騒ぎじゃない。今、目の前にいるのは、ナイトストーム本人だ。こうなるのが恐ろしくてフランは、『ヴァルプルギスの夜』は、私に外出を禁止したのに。私は、また、余計な事を・・・・・・。


「つーか顔中包帯ぐるぐる巻きで面白い事になってるけど、どした??」

「こっ、これは・・・・、あの、色々と・・・・・」

「あそ。それはそれとしてそんなビクビクすんなって。別に取って食ったりはしねぇよ。俺は感謝してるんだぜ。お前らのお陰で討伐隊の雑魚どもより俺の方が断然上だって証明出来たんだからな。まぁ、剣聖つーーっ新しいライバルが見つかちまったがな。テンプル騎士団最強は伊達じゃねぇ。とはいえ越えるべき目標がある事は嬉しい事だ。本当に感謝してるぜ。だからよ、お礼に今からラーメンでも奢ってやるよ」

「えっ、いや・・・・あのっ・・・・けっ、結構です」


「人生最後の飯に美味いもん食わせてやるって言ってんだよ、遠慮すんなって」

彼女は今までと何も変わらない普通のお喋り口調のまま私にそう告げた。

背筋がキンっとなる。



「あーーでも、でも、勘違いなしでくれよ。お前たちに感謝してるのは本当だからな。俺に第二人生をくれてありがとよ。ただそれとこれとは別件でな。俺は強い奴と戦うのが好きなんだ。お前の相棒のエイトの実力は相当だ。お前を殺せば、きっと本気のエイトとやり合える。あいつと俺どっちが上か確かめたいんだ」

「・・・・・・・」

「あ? んだよ、その目」

「そっ、それなら、どうして、戦えもしない一般の人を殺したんですか!?」

「急に語気荒くしてどうした??あのホテルの事だろ。あんなんただのストレス発散と魔法の感覚を戻すためのウォームアップでそれ以上でも以下でもねぇよ」

「・・・・・・・・・は? ほっ、本当に、本当にそれだけなんですか!?」

「ああそうだよ。お前は『罹人』じゃないから分からないかもしれないけど、『魔法』ってのは使わないとすぐ感覚が鈍っちまうわけ。別に『魔女』相手でもいいけど、理性のない相手を甚振っても虚無だからなぁ」


「・・・・・」


今の話で分かってしまった。こっ、この人は・・・・・・『罹人』であり『人間』だ。でも、この人の本質は理性のない『魔女』と同じただ赴くままに人を襲う怪物。マフィアに父親を殺されマフィアを殺しまわっていた『魔人』のアリアの方がよっぽど『人間』だった。この人をこれ以上好き勝手にさせてはいけない。この怪物を必ず地獄に送り返さなければいけない。私は確信した。


でも、どうしたら。状況は絶望的、考えろ考えろ。考えるんだ。



「全くこんなところでばったりお姫様と出会えるなんて俺は本当に運が良い。さっ、ここらへんに美味い店があるんだ。付いてきな」


私が考えていると彼女はそう声をかけてきた。状況は絶望的だが、考える時間はまだありそうだ。諦めるな、考えろ、考えろ。今、倒せなくても、とりあえず、この場を切り抜ける方法を。フランを怪物にさせるわけには行かない。どうにか逃げないと。でも、どうやって・・・・・下手に動けば、その時点で殺されそうだ。私が殺されるだけで済めばまだいいが、結界の外で暴れられたら確実に一般の人まで巻き込んでしまう。一般の人を巻き込まず、私がこの場を切り抜ける方法・・・・・そんなのあるのか??





「しっ。どうだ、ウマかっただろ」

「こっ、こんな、シチュエーションでなければ、そっ、そう思います」

何も思い付かないまま最後の晩餐になるかもしれない味噌ラーメンを食べ終えてしまった。


「はっはっはっは、正直なお姫様め」

「・・・・・」

「まっ、いいや。じゃあ、あれ描いてくれよ、ワープ呼ぶやつ。俺が魔力込めてやるからよ」

「えっ・・・・・・あのっ、ここ、人通りが、普通に・・・・・」

「だから、何だよ。俺には関係ねぇから。さっさと描け」

「・・・・・・・・・・」

「おい、あんまり困らせないでくれよ」

「・・・・あっ、あのっ、ふっ、フラ・・・エイトと、戦いたいんですよね?」

「おう」

「こっ、ここで、結界の外で戦ったら、必ず邪魔が入りますよ」

「いいんだよ。全部、殺せば」

「ちっ、違うんです。結界の外で戦ったら、外野から攻撃を受けるのは、なっ、ナイトストームさん、あっ、あなた、だけじゃないです、よね。必ずエイトも攻撃される。そっ、そうしたら、しっ、しっ、真剣勝負に、ならないですよね・・・・・?そっ、それで、いいんですか??よっ、横槍を入れられて本来の戦い方が全くできない相手を倒して、そっ、それで満足できるんですか??つっ、強い人と戦いたいんですよね???えっ、エイトは、あっ、あなたと違って、一般の人に攻撃できません。それはきっと私が死んでも同じです・・・・そっ、それを私が嫌がる事を、だっ、誰よりも分かってる筈だから・・・・だっ、だから・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・・なるほど。お姫様、お前は賢い奴だ。その通りだ、横槍が入った戦いで勝っても俺は満足できない。乗った。ワープはひと気のないところで呼んで、戦いは、お前らが子飼いにしてる『魔人』の『結界』の中でやってやる」

「あっ、ありがとうございます!!」

やった、やった、誘導が成功した!!!これでフランは心おきなく戦えるし、一般人の被害を無くせる!!!後は、後は、私が死ななければ!!!死ななければ・・・・・死ななければ・・・・・・。





「おい、お姫様。何普通にふらふら外に出てんだよ。約束が違っ・・・・・げぇえ!!!ナイトストーム!!!」

寂れた公園の多目的トイレの中、エドウィージュさんが黒い煙の中から現れるなり、すごく嫌そうな顔で言った。


「おい、『罹人』としての生き方を教えてやった先輩と久しぶりに再会した第一声が『げぇえ!』とは随分なご挨拶じゃねぇか」

「いたたた、いたたた、やめ、やめ・・・・・・ほっぺ千切れる!!」

「ははははは。トランプとアリスも元気してるか?」

「してる、してる。してるよ。毎日楽しく平和にやってるよ」

「そうか。俺は田舎の遊園地で迷路に迷い込んだ人間を喰ってた悪ガキ3人組だったお前らの方が好きだったけどな」

「『ヴァルプルギスの夜』にいれば安全に『味』がするソウルティアが食えるからな。『味』がしない普通の人間の魂を喰う時代は卒業したんだよ」

「なるほどな。丸くなっちまった訳か」

「お好きに捉えてどうぞ」


「・・・・・」

あっ、あれ??なっ、なんか、凄い邪悪な人がいきなりもう1人現れなかったか??きっ、聞き間違いだろうか???聞いてはいけない話を聞いた気がする。で、でも、今それが真実かどうか追及すると話がややこしくなってしまうから、いっ、一旦忘れよう。今は、私が、どう生き残るか考えないと。うん。



「でっ、先輩。用事はなんすか??」

「ああそれはだな。今からこいつを殺してエイトをキレさせてエイトとタイマンする。だから、エイトと魔人を一匹呼んで来い」

「それはそれは・・・・とはいえ、行儀よく『結界』の中で戦いたいなんて、先輩らしくないっすね。どういう風の吹き回しなんすか??」

「横槍が入って本来の動きが出来なくなったエイトに勝って嬉しいんか?ってこいつが煽ってきた」

「はははは、なーーーる。でも、エイトは一般人の命なn・・・・いや、まあそう・・お姫様の言う通りエイトは一般人には攻撃できないっすからね!!それじゃあ、エイトとクリーム呼んできますわ」

「おう。はよ行け」


「・・・・・」


クリームって誰だ??新しい仲間の『魔人』??? 不安材料が増えてしまった。ヨハナさんとなら連携が取れるし、何か糸口があるかもしれないと思ったが、名前すら初めて聞いた『魔人』とは連携できない。そうなると、フランと、自分の機転に掛けるしかない。死にたくない。死ぬわけには行かない。もうあの悲劇を繰り返させる訳にはいかない。私が窮地を脱すれば、後は、フランがどうにかしてくれる筈。


私は駄目な子で余計な事をして、皆を困らせる。でも、フランは違う。私は諦めない。フランを信じる。


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